malicia witness 2階の目線2005 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
J1リーグ 05-06シーズン 4月16日 ガンバ大阪 日産スタジアム ガンバの攻撃陣には魅力がある。「大黒を中心に」という布陣の書き方は正しくない。なぜなら、前線の3人は流動的にポジヨンを激しくチェンジし、さらには二川や遠藤が上がってくる。サイドにも、代わる代わる1名が開き、対戦相手のマークは混乱する。前半のトリコロールは大混乱だ。 特にフェルナンジーニョとアラウージョは、意識的に中澤の前でクサビを受けて、逃げるようにドリブルをしているのではと思わせる。中澤は追って行かざるを得ない。中澤の穴を那須やドゥトラが埋める。中盤とディフェンスの間隔が空く。上野一人ではカバーできないし、上野も二川が流れたサイドへおびき出されていたりする。するとフリーの遠藤からは狙い澄ましたパスがでてくる。橋本も顔を出す。 それでも序盤は互角。お互いにチャンスを創る。 しかも、フリーの實好が、ダイレクトでクリアーしようとして、ポップフライを打ち上げてタッチに出してしまう。その瞬間は「イェーイ!」でも「オゥー!」でも「オーレ!」でも「ナイス!」でも「ラッキー!」でもなく、「え〜〜〜〜っ!?」という疑問の歓声が同時にあがった。 失点は、展開を一挙に困難なものにする。 大黒、フェルナンジーニョ、アラウージョの3人に手を焼き、やや劣勢のうちに不運が訪れる。松田とシジクレイがニアで競り合って上がったボールが、復帰戦の上野の後ろに上がる。いかにも、ゲーム慣れしていない緩慢な動きで上野はジャンプのタイミングを逃し、ヘッドでゴールを奪われる。 「よりによって實好かよ!」 ガンバの中盤のプレッシャーがきつくなる。シジクレイを恐れて、大橋はサイドに逃げ、ジョンファンは中盤の底にまで下がってくる。 「攻め手がないよ。」 「こりゃぁ、どこから手を着ければいいのかわからないな。」 「セットプレーくらいしか、点が獲れる可能性を感じないぞ。」 「点が獲れないよりも、いつもう一点獲られるかの方が心配だ。」 ガンバは高い位置でボールを奪って、正確なボールを前線に送り込む。キープ力のある3人は時間を使いながらも素早く展開と説明したい絶妙のコンビネーションでゴール前に迫ってくる。 日野って誰なんだ? 試合前の選手紹介で、宮本不在よりも話題になったのは日野だった。 「誰なんだ?」 「松代直樹は?」 「日産に対抗して日野なのか?」 最初のハイボールをシッカリとキャッチする様を見て 「なんだ、普通のキーパーじゃねぇか。」 と、落胆の声が出る。 ところが、前半も残り時間僅かになって、とんでもないことが起きる。「ドキッ女だらけの水泳大会」並のポロリにジョンファンがゴール。スタンドは大喜び。笑い顔で飛び跳ねる。前半終了直前の大ピンチも奥谷主審のホイッスルで中断し45分を終える。 「いやぁツイてる。」 「俺達は、何もしないで試合を振り出しに戻したぞ。」 「この運ならば、まだ後半は期待できるかも。」 後半が始まるとサイド攻撃で先手を取る。ハユマから坂田へのクロス。だが、徐々にムードは前半と同様にガンバペース。トリコロールの攻めは重い動きで膠着状態。 ガンバの大黒の良いところは「ボールを触らなければワールドクラス」と言われたほにゃらさわに匹敵する動き出しの良さとシュートへの執念を兼ね備えていることだ。シュートの数が多い分だけ、ガンバの攻撃に可能性を感じる。そこで、ケガ上がりの坂田と上野を下げて大島と奥を投入する。 いきなりの大島が創るチャンス。可能性が出た。 大島がヘッドを中央でキッチリ落として、ハユマがクロス。ドゥトラがボレー。奥がしっかりボランチの位置でキープして狙い澄ましたパスをハユマの前のスペースへ。攻撃のテンポがよく、そして変化が出てくる。 今度は個人技だ。 トリコロールの試合は、たいていは個人技で相手を上回る。だが、アラウージョの個人技に失点。対抗したわけではないが、松田が自陣ペナルティエリア内でルーレットを行って、またしてもアラウージョにシュートを許す。 「なんでだよ!」 またしても、混乱するトリコロール。こんなときに得点すべきはエースのジョンファン。しかし、前半からの度重なるセルフジャッジで冷静さを失っている。ついには、主審の目を盗んでガンバディフェンダーの腹部に肘打ち。 「だめだ、ガンバと闘っていない。別のところに向かって行っちゃってるよ。」 「あいつ、韓国人なのに、なんで簡単に諦めちゃうんだよ。」 厳しい。実に厳しい。大黒、フェルナンジーニョ、アラウージョがゴールと勘違いしている間に攻め込むが攻めきれない。脚が止まって、攻めるどころか失点しないのが精一杯。中澤は振りきられる。 今シーズンの日産スタジアムはテンションが高い。二階席の自由席もバックスタンド側は最上段まで埋まり、手拍子は、あのステージ優勝を決めた神戸戦に匹敵する大音響になることも度々だ。その手拍子も大声援も消える静寂の一筋。それは、熊林のロングボールをオフサイドギリギリに松田が抜け出してボールをトラップしたからだ。副審の旗を確認するよりも早く松田はシュートし、こぼれたボールを大島が押し込む。副審を見る。 「オフサイドじゃない!」 「やった!!」 「追いついたぞぉ!!!」 縦に飛び跳ねて喜ぶが、その時間は短く 「もう一点獲れ!」 「逆転しろ!!」 という大声援に変わる。 ロスタイムに入る。一気呵成にガンバが攻めてきてくれれば攻めやすいが、ガンバは慎重だ。押し込まれて時間は進む。再びワンランク上のハイテンションで後押しするスタンド。大島がボールを戻し、勢い良く走り込んだハユマが撃つ。めいっぱい身体を伸ばして松田が折り返すと、ゴールライン際のハユマにピシャリとボールが帰ってくる。シュート。ネットが揺れる。これが、あっと言う間の出来事。そして、ハユマにボールが戻ったとき、みんなの心が一斉に揺れ動いた。 (終盤に追いついたこの勢いでオフサイドフラッグを上げるのをためらってくれ。) (最後の最後で誤審してくれ。) (見逃してくれ。) (いいじゃねぇか、ゴールにしろ。) 「あ〜やっぱり。」 数センチではない完全なオフサイドはルール通りに適用された。 前半同様にガンバのチャンスは奥谷主審の笛に摘まれ試合は終了。辛くも勝ち点を獲得した。この引き分けが大きな収穫だったかどうかは、次の2試合の結果で判断される。 「じゃぁチャンピオンズリーグで。」 引き分けを拾ったのか、勝てないリーグ序盤なのか、胸のモヤモヤを抱いたまま、私たちは新横浜をあとにした。 今日のポイント ●松田、中澤との連携は完璧だったエノテツ。 ●普通にジャッジすると不思議がられる不幸な奥谷さん。 ●脇役としては素晴らしい活躍をする大橋。主役にまではもう少し。 ●前半を見る限りでは引き分けばかりなのが不思議なガンバ。 ●ガンバの松下vs日産の松田。 今日の査定
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