malicia witness 2階の目線2005
J1リーグ 05-06シーズン

5月1日 東京ヴェルディ  味の素スタジアム

左に流れて坂田がクロスを素早く入れる。走り込んでペナルティエリア内に進入している上野はシュートを放つ。序盤は押し込んだ。だが、時間が進むにつれて動きを失う。セルフジャッジで勝ち点を失い、疲れを癒すことのできない過密なスケジュールの中で、宿敵・読売との一戦。
「メンバー見ると、大量失点するようには思えないよな。」
「ほとんどが、元代表だよ。」
今年の読売の強さはスタジアムで知っている。

「出ないぞ!」
「止まる!」
コーナー付近に転がったボールは勢いを失いタッチを割るようには見えなかった。ドゥトラは、ゆったりとしたモーションで追う。「できれば、タッチを割ってほしい」そんな走りに見える。ボールはタッチを割らない。時間をかけて追いついたボールを蹴ろうとするが、あれだけの時間を与えれば読売の選手が間を詰めている。クリアできず、ボールはコーナーキックに。
「あ〜。」
ため息と落胆の声がスタジアムを包む。その声は、一度は静まったものの、もっと深く大きく膨張していく。ワシントンがゴールしたからだ。

河合はしっかりとマークしていたが、身体を預け、河合のボディバランスを崩し、そのくせ自分は身体の軸がぶれることなくシュートをボレーで叩き込んだ。
ため息のあと、言葉を失う。
「いやぁ、巧すぎる。」
「あれは、どうしようもない。」
「凄い身体能力だ。」

持ちこたえたのだ。そう考えよう。

失点直後にはゴール前、ペナルティエリアのすぐ外でのファール。コーナーキックがゴールの前を横切って、ファーサイドの至近距離から放った平本のシュートはポストに当たる。さらには、お馴染みのオフサイド崩れで平本が完全にフリーで抜け出しヘディングでシュート。これはエノテツが止める。
「手を挙げるんだったら、ボールと遠い位置の選手が挙げないと!」
「ボールの近くの選手が手を挙げてる間に抜かれてちゃしょうがないだろ!」

序盤の攻勢を終えて失点、しばらくの劣勢。やっと巡ってきたチャンスの連続。放つシュートは緑の壁に跳ね返される。
「ちっとは枠に飛ばせよ!!」
「いや、前節に比べれば、シュートを撃ってるだけで、全然マシだ。」
「やりたいことはわかる。」
「やりたいことは分かりやすいくらいやってるよ。」
「絶対にディフェンスラインの裏のサイドに長いボールを入れろって指示が出ているはず。」
「でも、フォワードが走り込んでいないんだよ。」

もうセルフジャッジはたくさんだ。

攻めに出ればペースが掴める。やっと狙ったオフサイドも取れるようになる。
「そうだよ、手なんて挙げなくて良いんだよ。」
「副審は手が挙がったのを見てオフサイドを判定するわけじゃないんだから。」
「ちゃんとやってれば、普通はオフサイド取ってくれるって。」

激しい試合だ。伝統の一戦だけあって、緩むところがない。特に相馬は素晴らしいプレーぶりに、憎き読売の選手であることを忘れてしまうほどだ。ショルダーチャージをしながら、トリコロールのディフェンスを無力化しながらタッチ際を抜き去っていく走りは、強さに美しさを兼ね備えている。ハユマは押し込まれる時間が長い。
「なんで、こいつが代表に入っていないんだよ。」
「不思議だ。」
「けど、それがジーコジャパン。」

前節までの「サイドにお任せ」は改善されていない。上野が効果的な攻撃を組み立てることもなく、とにかくボールを奪ってからゴール前までの経過時間が長すぎる。さぁカウンターだ。大橋がサイドでドリブルを仕掛け、イッキにゴールへ。
「中央が足りない!」
「誰もいない!!」
「なんで、ダラダラダラダラダラダラ、ちんたら歩いてるんだよ!!!」
これほど判りやすい「押し上げが足りない」という例はない。教科書通りの悪い攻守の切り替えだ。

「絶対に、岡ちゃんに怒られたぞ。」
「そうとう厳しく言われただろ。」
後半が始まると、前半とは違うチームのような人数をかけた攻撃が展開される。我々のゴールに向かって、灰色の地味なユニフォームが、やっと躍動し始める。高い位置でボールを奪う。上野もコーナー付近にまで上がってくる。サイドに早めにボールを送り、読売の守備陣形が整う前に縦に挑戦する。単独攻撃ではなく、大橋や上野が、追い抜くように縦に疾走したり、一度は戻して、すぐに横に展開したり、攻撃に変化が出てくる。坂田は守備で貢献。

ジョンファンの登場に湧きゴールに沸き返る。

コーナーキックはジョンファンの登場でボルテージが大幅にアップ。なぜかマークが乱れた読売は、数名のトリコロールをフリーにし、その中でゴールを決める役目は那須。誰が決めても良いくらい、このコーナーキックはトリコロールのものだった。

一人一人が役目を全うしているとは思えない。

左サイドでドゥトラの隣にジョンファンがいる。ドゥトラがドリブルするのかと思いきや、ボールを持っていくのはジョンファン。中央には人数が足りない。松田の攻撃参加は効果的だが、このような早い時間はリスキーすぎないだろうか。自分たちのサッカーができているとは思えない。
「ジョンファン、中だ!中に行け!!」
「ここ!負けるな!!」
「勝負だ!逃げるな!!」
決して王者のサッカーができているわけではない。それでも、誰もが熱狂し、声援を送り続けているのは、縦への推進力と勝負への執念がフィールドに漲っているからだ。格好悪くても1点をもぎ取ってくれるかもしれない。そんな期待が音響効果の高い味の素スタジアムに、めいっぱいの手拍子を響かせる。上野から長いスルーパスをシュートに結びつけた大島のプレーは決めなければならないプレー。だが、次への期待の声援が次々に飛び跳ねて出てくる。
「次だ!次!」
「その調子で行け!」
「読売には絶対に負けるな!!」

遂に10番が帰ってくる。10番らしい10番が。

拍手は攻勢に出るムードも相まって最高潮。登場する、わずかに敵として数試合しか見たことがない僕らの10番を背負う選手に逆転の期待を浴びせる。私たちは彼を知らない。あの、数テンポおくれてゴール前に突如姿を現し決定的な仕事を簡単にやってのけるプレースタイルは、チームのコンビネーション練習の賜物だとばかり思っていた。練習に復帰したのも、ついこの間。まして試合は初めて。だが、3度も、山瀬が山瀬らしく、そして10番らしい2列目からの飛び出しをやってみせる。慣れない。私たちは知らないのだ。彼が飛び出すタイミングを。だから、ペナルティエリアには、期待と驚きがいっぱいになる。

何度もチャンスを創り、腰を浮かせ、天を仰ぎ、椅子を蹴る。激しい動きは、このリーグ戦に一筋の光を当てる。苦しくても、この攻撃を繰り返しできれば、きっと勝ち点はついてくる。多少の怪我人がいても、多少の主力温存を行っても、このクラブのポテンシャルは他のクラブよりも遙かに高いのだ。
勝てないことは、たしかに満足とまではいかない結果。だが、ゴール裏に険しい表情は目立たない。むしろ、良くやったと、ねぎらいの拍手を感じさせる。そして、この引き分けを意味ある引き分けにするのは、清水、広島への連勝なのだ。


今日のポイント

●ハイボールにも「哲でよかった」と声が出たエノテツの手堅いプレー。
●軽く捌こうとするのは不調のバロメータ。疲れているドゥトラ。
●なぜ中央でプレーしないのか判らないジョンファン。

●後半開始直後のアクシデントで動きが落ちたワシントン。



今日の査定

石井和裕
ハーフタイム「ビフォー&アフター」。
大島の前を向く中央でのプレー
200
映像としては覚えていないけどゴールしたのは那須
500
誰もがアクティブでボールが良く動いた後半の流れ
300
凄すぎるワシントン
300
代表の左右はハユマと相馬にしてほしいと思った
500
山瀬の登場
600
合  計
2400

stan
山瀬と奥の同時期用を早く見たい。連敗を止め勝ち点を拾えたのは好印象。
-100
ワシントンの本物ぶり
500
よく対応していた3バック
300
隼磨vs相馬
200
前半の読売
300
後半のマリノス
500
那須のヘッド
300
山瀬兄初出場
300
高山主審
100
メイン側副審
-300
アウェイを感じさせない読売ゴール裏
-100
アウェイを感じさせないマリノスゴール裏
300
伝統の一戦は読売が負けないとらしくない
-100
合  計
2200



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