| malicia witness 2階の目線2005 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 05-06シーズン 7月13日 ジェフ千葉 日産スタジアム 放ったシュートは22本。そのほとんどは枠をとらえ歓声を巻き起こす。いきなり始まったシュート合戦は90分+3分の坂田の右足でドラマチックな幕切れ。大きな、大きな勝ち点3を手に入れる。 「ついに始まったぞ!!」 これこそが、トリコロールの、岡田マリノスの真骨頂だ。追撃開始だ。 技術・戦術ともに申し分なし。 序盤から積極的だ。左から大橋にサイドを変えて折り返しを上野がニアでヘッド。ジェフも深い位置から走り込んだポペスクが際どいシュート。次は逆に、カウンターから上野がシュート。押し上げ十分、迫力満々。 「撃て!」 「惜しい!」 歓声だけではない。 「すごい!」 「マジかよ!!」 「ちょっと待てよ!どうなってるんだよ!!」 目をこすっても、頬をつねっても、数えれば4人いる。ジェフのディフェンス登録は2名。2バックはありえないから、当然、最終ラインは3バック気味か4バック気味と、誰もが予想した。テレビで見ても、それはわからない。だが、日本人のシステム論議をあざ笑うかのように、そこには4人いた。トリコロールの4バックに張り付くように、4人のフォワードがいるのだ。 「4トップかよ!」 しかし、前がかりで守備の枚数が少ないのではない。しっかりと守備のプレッシャーはかけてくる。 「揃ってるぞ!」 「入れさせるな!!」 それでも、気がつけば、前線には4人。ペナルティエリアには十分な攻撃の枚数が揃っている。 「どうやれば、あんなに人数をかけられるんだ!!??」 しかも、試合後の記者会見で、オシム監督は「この試合は選手の運動量が少なく」と言っていたというから、恐るべしだ。 平日にも関わらずスタンドは熱い。 山瀬がマリオ・ハースにプレシャーをかける。たまらず、大きく櫛野にまでボールを下げる。ゴール裏からはブーイング。2階からは大きな拍手。2つの異なる手法ながら、その両方がスタジアムの空気を震わせ、トリコロールの守備を賞賛していることがわかる。ブーイングは、ただの悪意ではなく美しい守備の芸術への喝采である証明。Jリーグ史に、その名を残すであろう知将と日本人監督ナンバーワンの戦いは、ゴール前だけでなく、フィールドの隅々にまで高いクオリティ感で満ちている。 大橋から低いクロス。大橋のクロスの弾道の美しさはJリーグでも屈指だ。そこに、地面すれすれで那須が頭から突っ込む。那須と上野が、ここまで動けば、試合の主導権が握れる。 「今の誰?」 「那須!那須だよ!!」 ところが、その直後に那須が接触。 「ヤバいぞ!!」 「伸ばしたんじゃないか?」 「いや、これはヤバいぞ。」 「ここで、那須を交代させると、上野はフル出場しなきゃならないよ。上野もつかな。」 「いやぁ、これは大ピンチだ。」 かなり痛そうだ。 幸い、那須は打撲だったようで軽症。ボールタッチの多い上野とともに中央は制圧。対するジェフは素早いサイドチェンジで対抗する。持ったらすぐにサイドを変える。これには溜息が漏れる。 ジェフの4人のトップは2人になるときもある。2−4−4になったり3−3−4になったり、さらには3−5−2になったりと流動的だ。4人の両サイドもタッチライン際まで開いたり、中央に絞ったり、ポジションは微妙に動く。しかも、恐るべきことに気がつく。 「なんか、山岸ってドゥトラにマンマークじゃないか?」 「ずっと付いてるな。」 「プレッシャーかけるために流れで、こうなっているのか、意識して付いてるのかはわからないけど。」 「4バックのサイドバックにマンマーク付けるなんて、初めて見た。」 「こりゃぁ、面白いけど厳しい試合だなぁ。」 ボールは止まらない。 上野と那須が起点になり、囲まれても大島が楔に入る。ただ後ろに戻すのではなく、まずは前を向いて突破を試みる。そこに大橋やハユマが絡む。ドゥトラも上がってくるし、上野が飛び出しても来る。非常に積極的な試合だ。 そんな試合の中で聞こえる「ビバ!ビバ!」の声。めでたいなぁ、と思ったら「千葉!」だった。 山瀬のシュート。そして、得たコーナーキック。中沢が競り合う。激しくぶつかる。ゴールはならなかった。 「もう一回!」 「おっ、倒れてるぞ。」 「ジェフは3人倒れてるぞ。」 「中沢が3人やったぞ!」 さらに、次のセットプレーでも 「また中沢がやったぞ!」 那須がペナルティエリアのスペースにスルーパス。足下ではなくスペースへの積極的なパスが多い、この試合の決定打。山瀬が飛び込み、ゴールライン際まで侵入して回転する。そのハイスピードの回転が強力な磁場を生み出し、ジェフの選手達5名が引き寄せられる。その磁場からはボールだけがマイナスに飛び放たれ、グランダーで折り返される。遠くドフリーで君臨する上野は、精密にコントロールし、しかも弾丸の勢い。弧を描いて櫛野の手の届かないコースに美しく決める。 美がいっぱいに詰まった宝石箱は水曜夜の贈り物。 平日のジェフ戦にしては18000人の観客は上出来。その誰もが試合に酔う。これぞフットボール。両チームが、小賢しいファールをしない。だから、試合が中断しない。特に、前節に2度も「掴んだ」としてファールの判定を受けたハユマは、意地でもノーファールで突破の勝負を仕掛けてやろうという意気込みが見える。相手に掴まれても、肩をぶつけて抜き去る。そうなればファールをとられたくないので、相手も瞬間で握った手を離す。素晴らしいチャレンジだ。スピードとテクニックで粉砕するのだ。 そして、この試合を更に光らせたのは穴沢主審だ。いっときは、カード乱発型として悪評がたっていたが、この日の美の立役者でもある。厳しくファールはとるが、フェアなぶつかり合いは笛を吹かない。選手同士のフェアな信頼感と審判の支援があって一体で好ゲーム作られるのだ。後半にあったハユマのファールは警告が出されるかに見えた。だが、穴沢主審はハユマを呼び何事か注意、いや指示をした。それを受けて、ハユマは走ってファールを受けた選手のところへ向かい軽く声をかけ手を差し出し握手。スタンドは拍手喝采。 正面から実力をぶつけあって激突する良い試合じゃないか。 中沢が6人をやったこともありロスタイムは4分。 すでに、途中出場の林に同点弾を叩き込まれて引き分けが迫る。長いボールが多くなり焦りが出る。 「攻めろ!!」 「どうしても勝つんだ!!!」 「行け!」 「撃て!!」 自陣でのリスタートは素早く縦へ。ハーフウエーライン付近でボールを受けた山瀬は囲まれながらもドリブルで進む。前にいる坂田は左へ流れてフリー。パスが出る。止める。撃つ。ネットが揺れる。 飛び跳ねた。誰かの頭を叩いた。仲間が飛んできた。肩を組んで拳を突き上げた。目は血走り大きな天井が見えた。勝てる!これで勝てる!絶叫の中で首位へ向けて魂が走る。これが、トリコロールのサッカーなんだ。 新横浜のオープンカフェでビールを飲む。あまりに気分が良いので、予定外の行動だ。 「ねぇ、名古屋方面の新幹線って止まってる?」 「いや、動いてるよ。」 「ってことは、鹿島が3−0で負けてもお天道さんは驚かなかったってことだ。」 「ってことは・・・。」 「まだまだ鹿島は負けるってことさ。」 「ナゴヤダイスキ!」 すっかり上機嫌で帰ることにする。会計のために伝票を見ると、さっき食べたご飯ものの記載がない。 「なんか、良い試合で勝ったのに、さらに誤審PKで勝ったみたいだな。」 「ご飯ものは2つとも書いてないよ。」 「誤審PK2つで勝ったみたいだ。」 「なんて良い一日なんだぁ!!!!」 今日のポイント ●最後まで運動量が落ちなかった勝利の立役者は上野。 ●新ルールだった副審。 ●失点のときは中沢が前に上がっていたにもかかわらず、 クロスの起点にプレッシャーが甘かった。 ●山瀬の回転はルーレットのようなギャンブルではなく 「美しきトリコロールパラソル」の回転。 今日の査定
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