malicia witness 2階の目線2005
J1リーグ 05-06シーズン

9月10日 ヴィッセル神戸  神戸ユニバ

神戸ユニバは、とてもクラシカルな雰囲気を醸し出している。高台を削って作られた運動公園にある陸上競技場。フィールドは地面を掘り下げて作られている。横長のベンチシート、少ないトイレ、灰色の表情は、昔ながらスタジアム。ところで、東京国立競技場は東京オリンピックのメインスタジアムとして有名だ。1960年代に作られた国立競技場と比べても、このユニバは、とても古くさい印象を全身から発散している。なぜなら、このスタジアムが作られたのは1985年のユニバーシアード神戸大会のため。つまり国立競技場よりは、新しいわけだが、じつは国立競技場は1990年の世界陸上のために大改修がされていて、まったく新しい近代スタジアムに変身をしているのだ。初めて、このスタジアムに足を踏み込むと、このヴィッセル神戸が長い歴史とともに神戸の街と市民とともに歩んできているかのような錯覚に陥る。しかし、それは、まったくの錯覚であって、実際は、この日のスタンドも街も、ヴィッセル神戸を冷たく突き放しているかのうようだった。

地下鉄の駅を降り、徒歩5分のスタジアムへ向かう。チームカラーやユニフォームに身を包んだサポーターとは、ほとんど遭遇しない。むしろ、この時間に道を歩く人々だけに限定すれば、トリコロールの方が多いくらいだ。

試合開始1時間前を切って、急にスタンドが埋まり始めるが、期待や不安が入り交じったスタンドの雰囲気とはほど遠く、なにか地方都市ののんびりとしたイベントのようなムード。これが最下位のクラブなのか、それとも神戸気質なのか、それとも、あまり関心がないのだろうか。

急に緊迫をしたのはトリコロールのゴール裏だった。

ぼてぼての左サイドからのあたり損ねのクロスをコーナーキックにしてしまう。少しイレギュラーバウンドをしたようだが、腰高に簡単な扱いをしようとしてボールはゴールラインを割る。
「てめぇいきなりかよ!」
「まぁまぁ、まだ始まったばかりだから。」
と、言葉を交わしている間に、ゴールを守るためのコールが始まる。神戸まできて不甲斐ない試合を見せつけられるわけにはいかない。駆けつけたコアサポーター達、そして、ゴール裏一帯に広く散らばった多くのサポーター達は、守るべきゴールの後ろから支援するのだ。コーナーキックはニアへ。出遅れて競れない。ヘディングシュートがクロスバーに直撃する。ここで、ボールが、あとわずか下のコースに飛んでいたら、神戸ユニバの雰囲気は変わり、トリコロールは窮地に追い込まれていただろう。だが、私たちは、自ら招いた最大のピンチを他人の力で回避する。

攻防は中央と左サイドのみで行われる。

左に坂田が流れチャンスを何回か作る。上野、大橋も参加し、ドゥトラと坂田の突破。逆に、神戸は右ウイングの朴へのロングボールで突破を狙う。
「朴へのボールは徹底しているな。」
それ以外に、効果的な攻撃の印象がない。

「えっ!?」
なぜか飛び出した徳重。攻め続けた左サイドの絶妙なコンビネーションでドゥトラがひと呼吸遅れてラインの裏へ走り込む。反対側のゴール裏から見ても間に合わないだろうというタイミングで徳重は飛び出してくるのだが、ドゥトラは小細工せずにあっさりと前へドリブル。置き去りにされて地に横たわる徳重。ゴール!
「やった!」
予想外の早い時間の先制に飛び跳ねる。
「グラウだ!グラウ!」
「何かやってる、メインに向かってやってるぞ。」
「無駄だ!そっちは伊藤ハムだぞ!」

すでに神戸の人々はヴィッセルを見捨てているのだろうか。

意気消沈のスタジアムにはトリコロールの歌声が響く。ヴィッセルのコアサポーター達は、日産スタジアムにやってくる通常のアウエーサポーター程度の人数だ。しかし、トリコロールのサポーターであれば誰もが知っているように、スタジアムの応援の熱気を創るのはコアサポーターだけではない。スタジアム全体の願いや叫びが一人一人の行動に現れたときに、とてつもない大きなパワーを生み出すのだ。しかし、このスタジアムには、それがない。

応援歌は遠く反対側のゴール裏から聞こえてくる。手拍子も、おそらく空気を小さく振動させて伝わってくる距離は同じだ。ここまでに到達する間に、音は大きく劣化している。アウエー特有の圧迫感は皆無だ。バックスタンドは揺れている。だが、揺れているのは手拍子ではなく、関西特有の湿気から逃れるための団扇の揺らぎなのだ。このスタジアムは熱気や殺気ではなく、揺らぎが空気を支配している。

「伊藤ハム・アルトバイエルンDAY」と銘打たれた試合前にはたくさんの伊藤ハムグループの企業名が紹介された。この試合に団体で招待をされている企業の名前だ。ご丁寧に、最後には「伊藤ハムグループ」という紹介まであった。
「個別に名前出せないほど小ちゃい会社まで呼んでるのかよ!」
埋まったバックスタンド、メインスタンドの両サイドは、気味が悪いくらいに静かだ。

右の奥と大橋の中盤守備。何度かピンチを招く。

しっかりした守備からの逆襲を狙うトリコロール。久々のサイドで奥は守備に苦戦するはずだ。ここは覚悟が必要。耐えるしかない。そう決心する序盤の闘い。が、決心とは裏腹に、ボールがそこに来ることはめったに無くなっていくのだが。

ボールを呼ぶときは、次に何をするかを決め込んでいる大橋。相手を背負って、スパーンとダイレクトでサイドにはたく。一点目も大橋の好判のスルーがポイントになっている。ミスさえしなければ何でもできるムードなのだ。ただし、決められた戦術のもとで慎重に戦っている。

誰がグラウ獲得に反対したのだ。

中央をドリブルで仕掛けるグラウ。左に流れている坂田にパス。坂田が右脚で決める。あれ?あんなとこから入れちゃうのかよ。ゴールネットは左45度からのシュートの定番「右サイドネット」を揺らすことなく、中央付近から波打つ。よく撃った。最近は躊躇して、あまり撃たないのに。一点目ほどの喜びが生まれない。
「なんで入っちゃうんだよ。」
「徳重やばすぎだろ。」
「でも良いぞ坂田!どんどん撃っていけ!」
しかし、次は、いつものようにシュートに至らずに切り返しを止められる。

シュートが枠に飛ばない神戸。

膠着するとグラウが前線からチェック。奪って、ファールを誘い込むドリブル。ホイッスルが鳴り、しっかりと神戸の攻めの流れを断つ。まったく怖さのない攻め、というよりも、何かにおびえてボールを扱っている。
「酷いなぁ神戸。」
誰もが自然に口にする。

バックラインでボールが回らないトリコロール。

やることが決まっている。時間をかけずにボールは前へ。しかもスペースへ。だからだろうか、昨年までの坂田の動きが戻ってくる。フィールドの横の広さを目一杯に使っての大きなウエーブの動き。ときたま、奥もサイドから中央へ走り込んでくる。ボールが来るから、信じて走れる。坂田は昨年の動きが戻ってきた。あまりに簡単な単純な試合だ。怯える者と信じる者、そのコントラストが明確に現れる。

古いスタジアムにはトイレが少ない。スタンドの裏側は地形の傾斜を利用した坂道になっている。その坂をたくさんの人々が下がっていく。おそらくトイレがあるのだろう、と、その流れに合流する。坂を下ると、入場時に通ったゲート。
「ありがとうございました。」
係員が声をかけている。ハーフタイムに、かなりの人々が家路についた。
「今から帰れば、阪神戦の中継に間に合うんじゃないの?」
「それにしても酷いな、神戸は。」
「降格争うチームは降格を争うなりの理由があるんだな。」
「特に徳重は酷すぎるよ。」
「どっちもダメダメがいるから気をつけないとな。」

後半、開始。いきなり最終ラインから超ロングシュートを撃つが、蹴り損ないで、大きくボールは右へ切れていく。危険だ。最終ラインの選手までもが徳重を馬鹿にして遊んでいる。
「なめるな!しっかりやれ!!」
こういうプレーが続くと危険だ。兆候が出るのが早すぎる。これも、トリコロールが、この順位にいる理由なのだ。

グラウが前へ立つだけでキックはタッチへ。徳重は、創れない神戸のリズムを、ずたずたに切り裂く。トリコロールも無理はしないので神戸がボールをキープする時間は長くなる。簡単なプレッシャーをかければ良いだけだ。中盤のルーズなこう着状態。中沢やグラウがミスでボールを失う。だが、それを数倍でお返しする神戸のミス。
「奥の後ろが狙い所なのになぁ。なんで攻めてこないのかなぁ。」
左サイドからのピンチもピンチらしく感じなかったのは、中央の人数とポジションが今ひとつ物足りないから。中央で競り合いをきちんとすれば問題なく跳ね返せる予感がある。

神戸は攻めが単調で動きがなく、選手交代をカンフル剤にしようとする。
「誰か出てくる!」
「ちっちゃいぞ。」
「北野だ。」
神戸の「ちっちゃな異人館」北野が現れる。人材難らしい。ポスターのモデルは平瀬だった。その平瀬ですら怪我で欠場。対するトリコロールは山瀬登場。人材を持て余している。登場の山瀬は、いきなりペナルティエリアで「美しきトリコロールパラソル」の回転。しかしシュートには至らない。

65分を過ぎても試合の流れは変わらない。
「神戸って最下位だってわかってるのかな?」
「まだ気がついていないんじゃないか?」
「選手は新聞読んでるのかよ。」
時計の針とともに動くのは神戸の攻めのバランスでも焦る心でもなく、切れ目なく帰っていく観客席の通路の動きだけだった。
「ゴール裏も両サイドはいなくなっちゃったねぇ。」
「招待券だとはいえ、静かすぎる。残留がかかっていることはわかっているのかなぁ。」
「まさか、知らないとか。」
「どう見てもバックスタンドの客は気がついていないだろ。」
神戸の不注意のオフサイド。びっくりのシュートミス。拙攻は続く。

大ピンチは榎本から。抜けてきた浮き球。ディフェンダーに任せてゴール前を固めれば良いイージーなボールだ。
「なんか出てきたぞ!」
「来るな!」
この目立ちすぎる黄色い不可思議な行動が目に入る。ディフェンダーは北野と競り合いながら下がれと大きく腕を振って榎本に指示をしながらポジションを獲る。北野はシュートを空振り。普通のレベルのフォワードが相手であれば、頭上を越されてあえなく失点という場面だった。なんと運がいい。
「新入社員が、僕にやらせてください!ってよけいなところに首を突っ込んできて裏目に出るってパターンだ。」
「お前、それで何しようとしたんだよ。って感じだ。」
「いくら神戸が相手でも、これがあるから油断はしちゃいけないよ。」
そういえば、榎本のキックは、ことごとく奥へ。なぜだろう。
残り5分。神戸はトリコロールのお株を奪う最終ラインでのボール回し。

疲れた坂田は追うこともできず、ボールを持つ選手にプレッシャーはかからないのだが、プレッシャーのかかった受け手から逃げるように、ボールは横へ回るだけなのだ。何の危機感も感じられない無駄なボールの動き。敵がやって初めて、この負けているときのボール回しがいかにつまらないものなのかがわかる。しかし、ロスタイムに、もう一度のピンチ。榎本のパンチングミスからシュートを浴び…ずに、ぼてぼてのボールが枠の外へ。助かる。
「きっとさぁ、この状況に遠藤は気が付いてると思うんだけどさぁ。」
「だよなぁ。」
「でも遠藤、消えちゃってるんだよねぇ。」
「上野が見てるんだよ。」
忘れ去られていた。
「おい、神戸、余裕あり過ぎ!!!」

北野の良さが一瞬見えたシュートが一本。それだけで後半は終わった。なんて余裕の勝利なのだ。わずかに前半開始早々の2本のシュートが2本ともゴールネットを揺らして勝ち点3を獲得したのだ。
「神戸って、直接対決だってわかってたのかなぁ。」
「これに勝てば、残留争いに引きづり込めるって気が付いていなかったんじゃないのか?」
無料で配布される8ページのマッチデープログラムには、こう書いてあった。
「強豪相手といえども連敗は許されない。」


今日のポイント

●松田の約束事通りのすばらしいオーバーラップ1回。
●くりくり対決/栗原対栗原。
●ミスが多かった中沢は代表疲れか。
●悔しさのかけらもなかった帰りの地下鉄のムード。
●攻守に活躍で柱になったグラウ。


今日の査定

石井和裕
予定通りの勝ち点3。笑顔で帰ったけれど、試合の話題は盛り上がらなかったぞ。すべて神戸が悪い。
すばらしき松田、中沢、栗原の世界
500
グラウまでのつなぎが魅力的だった1点目
700
なんだか入ったけど撃ったのが偉い坂田の2点目
500
守備にも奔走したグラウ
600
意外だったユニバのムード
200
なかなか食えるそばめしの味
600
徳重って鍛え直さなきゃダメだろ
100
しっとりと神戸の夜の楽しみ
8000
勝ち点3
600
一試合遅かった納得の選手交代
100
11900

NOTSU

久々の完封試合。西日本アウェーでは強い(4勝1敗)。

2トップの2発のみで2点
3000
よく走るグラウ
1000
でも味方のゴール前でファールしなくても
-200
プレッシャーの無いときの上野              
200
敵になっても消えてくれた遠藤
200
あまり機能しなかった右の奥
-200
いきなりポロリ
-500
その1番よりひどいGKがいるとは思わなかった
-500
客にも見放された危機感のない神戸
-1000
2000

ゆっか

とりあえず…勝った。よかった。グラウのネタが目の前でみたかった。神戸に助けられた勝ちといっても過言ではないでしょうから、早く余裕の勝ちが観たいです。

7月2日以来の勝ち点3
1000
グラウは味方になるといい奴だ    
1000
FW2人が点とった
2000
っていうかシュートそれだけかよ             
-2000
黄色い奴のしょっぱなのポロリ
-500
黄色い奴の飛び出し具合
-500
ある意味凄いGK対決
-300

後ろで「上野が見てんだよ」って言うまで存在を忘れていた遠藤

36
奥の後ろのスペースを狙わない神戸
200
上野と大橋の技に興奮した自分
400
宴会の盛り上がりネタになりこそねた試合内容
100
3036

stan

ミッションは勝ち点3。省エネで完遂出来たのは神戸の雑なサッカーのお陰。だが今は贅沢は言えない。早く安心出来る勝ち点を積み上げて下さい。

蒸し暑い
200
達也いきなり
-100
奥が居ると違う
300
なんだかんだ点に絡む大橋           
200
スタミナが無い大橋
-200
グラウ2試合連続ゴール
500
また向こう側でパフォーマンス
-100
ドゥトラ良かった
300
でもイエロー
-100
坂田頑張った
300
掛川が居ないと大変そう
-200
持たせても大丈夫な緩い神戸
200
でも持たせ過ぎ
-300
跳ね返し続けたDF
300
中澤お疲れ
-100
遠藤北野
200
観客数水減らし
-200
終了間際コーヒールンバ
300
勝ち点3
1000
完封
500
松村主審
100
次節那須累積
-200
2500








掘り下げ式なので、スタンドが低く見えるユニバ。なぜかホーム側は横断幕のレギュレーションが厳しくアウー側は緩い。


入場者プレゼントのタオルとティッシュ。サポーターが視力に厳しい野次を飛ばすことを知って、視力回復手術のクリニックがスポンサーに付いている。


試合前の練習。ゴールの後ろに歩いているのは観客。こんな時間にトラックウォークをさせている。危険だが、選手に集中力を持って枠を外さないようなシュート練習をさせる作戦かもしれない。


電車男系の得点表示。


久々の勝ち点3にパラソルが回る。


ビン缶類の持ち込みは禁止です。キャギャルポスター風に顔の横にラベルを置いてみた。


さんま、太刀魚、明石のたこ、するめいか、自分で焼いて食べる。それに釜で焼いたご飯が最高。試合内容はつまみに不要。


ペンギンが8羽もいるバーへ移動。三宮の夜は楽しいし値段が安くていいね。遠征組はホテルへ帰るが、関西組は終電を逃してネットカフェへという皮肉。




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