| malicia witness 2階の目線2005 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 05-06シーズン 10月16日 ジェフ千葉 フクダ電子アリーナ 的確なタイミングでドリブルを挑み、中盤の守備を混乱に陥れるストヤノフが、またも中央を切り裂いてくる。左(守備側から見た右サイド)にいるマリオ・ハースにパス。そのとき、逆の右サイドにはフリーの選手が2枚。それを見るのはドゥトラしかいない。 「まずい!フリー!」 「フリーだよ!!2枚いる!!」 「入れさせるな!」 その叫びが、なんらかの伝えになってくれればいい、気が付いてくれれば。だが、当然、その声は届かない。感じることもなく、左サイド(守備側から見た右サイド)に集中したトリコロールの状況をマリオ・ハースは、しっかりと見て、ボールは大外へ。左脚を振り抜くのが見える。 「やられた!」 言葉と、ほぼ同時にネットが揺れるのがわかる。 スタジアムは、大きく揺れ、けっして派手ではなく、どちらかといえば大人しかったフクダ電子アレリーナのムードは、一気に沸騰する。得点タイムが88分であることをスタジアムナビゲーターがアナウンスし、左脚を振り抜いた主がエースの巻であると告げると、選手の名前と背番号が一致ない千葉市民までもが、どっと湧く。まさに、勝利を確信したスタンド。 88分の時間は、スタジアムナビゲーターのアナウンスによって知る。トリコロールのアウエー席からは大型ビジョンが見えない。市原臨海のようにメインスタンドの壁に学校の教室のような丸時計もついていない。いつの間にか88分が経過していたわけだが、そのとき、「まだ88分だったのか」という声が、各所から聞こえる。ロスタイムに突入していると思った仲間も多かった。 「まだまだ!取り返せ!!」 そして1分も経たないうちに、坂田が大きな仕事を成し遂げる。 厳しい勝負と高いクオリティ。 それがジェフ戦。ホームでの激戦は、今期一番の好ゲーム、そして、決着を付けたのは坂田だった。毎度おなじみの、こけら落とし要員として、フクダ電子アリーナでもトリコロールは招かれた。 大分戦を上回るクオリティが披露される。 もちろん、それはジェフのサッカーだ。走って一気にボールを縦に運んでゴールするサッカーと思われがちなジェフだが、今シーズンはワンランクのレベルアップをしている。まずは縦にアタックするが、一気に崩せない場合は最終ラインでのボール回し。それに、ストヤノフや阿部や結城がドリブルで仕掛ける。さらには、佐藤の飛び出し。林が起点となって緩急をつける。今年の停滞しているトリコロールの最終ラインのパス回しとは対照的に、攻めの緊迫感がみなぎるパス回し。少しでもドリブルの切れ込みを許すと、一気に人数をかけて押し込んでくる。 そんな流れの中で右からの鋭いクロスが飛び込んでくる。 ストライカー達は、誰もがスタジアムの第一号ゴールを狙っている。 そんな夢を打ち砕こうかという、中沢の右脚から放たれたロケット砲。コーナーキックに逃げるはずのクリアボールは、ゴールに向かって飛んでいき、ポストに当たって弾け飛ぶ。 「あ〜〜〜〜〜〜。」 「あぶねっ!」 「ビックリぃ。」 「もうちょっとで、第一号ゴールが中沢になるところだったよ。」 5バックの時間が長くなる。 なかなかボールが奪えない。奪ったとしても前線に人数が足りない。パスのコースは巧みに限定される。出せる僅かなコースに流し込めば、待ってましたとばかりにストヤノフが奪い取る。ミスを待つのではなく、奪い取るための守備を挑むジェフの術中にはまる。ポジションは流動的。阿部が最終ラインにいるときもある。 「う〜む、キツいな。」 だから、チャンスにゴール前で巻が倒れたとき、こういう言葉が口から出る。 「鹿島や浦和だったらただじゃおかないけど、ジェフだから、ホントに痛いと信じよう。」 高い位置で奪えばチャンスがある。それはジェフが相手でも同じ。 左サイドで坂田がボールを受けて縦に突破。追って来るのはストヤノフしかいない。坂田とストヤノフの一騎打ちだ。 「行け!坂田!!」 「GO!!」 「勝負だ!」 「振り切れ!!」 攻撃に入ろうとしていて逆を取られたジェフのディフェンス陣は、まったく追いつけない。ゴール前に走り込んでくる2人のトリコロールの影。 「坂田!坂田!!」 「中!中!」 「折り返せ!」 「中フリーだ!!」 ワールドユース得点王とブルガリア代表の一騎打ち。軍配はストヤノフにあがる。 「惜しい!!」 「絶好のチャンスだったのに!」 「中に入れれば2人いたのに。」 どうやら監督からの指示が出たようだ。配置の変更。 奥がボランチに下がる。ボールタッチが少ない奥の攻撃面でのてこ入れもあるが、どちらかというと、攻め込まれたときの中盤の守備の問題が大きいのだろう。これで、ペナルティエリア内への一気の侵入という事態は幾分回避できそうだ。だが、攻めには問題もある。 「上がれ!上がれ!」 「中盤頑張れ!!」 といっても、奥に、これ以上を望むことはできない。両サイドは押し込まれていて、ボールを奪った時点での位置が深すぎる。中央で相手を背負った体勢から大橋に局面打開を望むのは難しい。何度も倒れる。そこでだ、中沢や松田が、中盤の選手を追い抜いて前線へ飛び出していく。 「松田が上がったぞ!」 「行け、勝負しろ!」 「クロス!!」 松田と大島の2枚がゴール前に突入しクロスが入る。立石に止められるが、シュートは枠へ。チャンスはある。 ハーフタイムが終わると、タッチライン際に背番号10が見える。 「山瀬だ!山瀬だ!山瀬だ!!」 後ろの席の石川ちゃんが絶叫している。背もたれがなく狭い通路。ちょうど、その窮屈な加減や椅子の形状は、あのサンシーロに似ている。アウエー席にびっしりと詰まったトリコロールの軍団は1階2階を一体にして山瀬をコールで呼び込む。 「お前らウルトラマンか!」 後半開始早々の攻勢は3分で幕を閉じる。そこからは、またもジェフのポゼッションサッカー。そんな中でも、トリコロールは明らかに最終ラインから前へ送るボールが前半とは違う。逃げのパスは少なく、中盤で奥と山瀬が、きっちりとコントロールできる。 「大丈夫。早めに追いつけばジェフは崩れる。」 「ジェフは優勝狙ってるんだろ。同点になれば無理して勝ちに来るはず。」 すでに優勝争いのアウトサーダーとなったトリコロールは、同点にさえ追いつけば、この試合の主導権を握り権利を十分に持っている。 前を向いて勝負すれば俺たちの時間がやってくる。 山瀬の動きにつられて、ジェフのディフェンスは前半とは、少し動きが違ってくる。右のハユマから入ったクロスに、遅れて入って来た山瀬がヘッド! 「うぉー!」 フリーだったが、ややボールが前でボールは枠をとらえない。それでも、ビッグチャンスに大きな拍手が屋根を反響する。あのタイミングはやませ得意のプレーだ。 水野、マリオ・ハースを投入するが、逆に中盤の攻守の組み立てにひずみが現れる。マリオ・ハースはファールを連発。 「このまま繰り返せば、繰り返しの反則でカードが出るぜ。」 大ブレーキでジェフのペースを乱す。一方、前半からキレを見せていたドゥトラは、すっかりキレキレの蘇りだ。そもそも、個人技で争えば、負けるわけがないのだ。 ジェフは保たなかった。 山瀬は縦に勝負する。ただ、一気に前へ行くのではない。ディフェンダーを背負ってボールを受けても、横にドリブルして巧みに前を向いて突破を狙う。もしくは、その間に縦へ走り込んだ味方へ技術の高いパスを送る。守備陣との駆け引きで、常に先手を取って仕掛ける。囲まれても、勝てる可能性があれば勝負する。そしてクロス。前からの守備ができなくなっているジェフは、こぼれ球のケアができていない。 ゴールネットにボールは突き刺さった。 「撃て!」と叫んで一瞬の後、目の前に見える景色は、ゴールネットに突き刺さり、空中に浮いたままのボール。その次の記憶は、仲間の喜びの顔だった。 「やった!!!!」 飛び跳ねると、周囲から手が伸びてくる。握り合ったり叩き合ったり抱き合ったり。満員のスタンドの一角だけが、青、白、赤で揺れている。大きく揺れている。 「落ちるから!落ちますから!!」 後ろの席から腕を掴まれる。 ゴール前に3枚が飛び込んだ末のゴールだ。 続いて大島からハユマがシュート。 「よし!来たぞ、俺たちの時間だ!!」 「一気に逆転しろ」 美しいゴールは、全てを変えてくれる。 守備陣形は崩れ、ハユマにクレームを付けてカードをもらったストヤノフは冷静さを欠いたプレーを時折見せる。 「いいぞ!どんどん仕掛けろ!!」 坂田のドリブルシュート。大きく枠を外す。 「枠に撃てよ!」 「いや、いいぞ坂田!どんどん撃っていけ!!」 コールの合間に口々に叫ぶ。 すでに右の中指の先は裂けて血が出ている。 残り時間が5分を切って、ジェフが攻勢に出る。我慢しきれずに88分の失点。だが、トリコロールの応援のボルテージは下がらない。いつもはバックスタンドにいるメンバーからも、この位置からだとゴール裏のバンデーラを揺らす仲間達の顔が見える。そんなトリコロールのエリアのすぐ目の前のゴールネットが揺れる。声にはならない。ただ、飛び跳ねて落ちそうになったことだけをかすかに覚えている。そして「もう一点だ!」と叫んだはずだ。 主審のホイッスルで試合は終わり、巻のゴールの大歓声が嘘のように静寂が訪れる。トリコロールの選手達は納得していないだろう。だが、今日の勝者は彼らだ。彼らをたたえなければならない。ジェフの精密で、かつ疲れを知らないディフェンスを打ち破ったのだ。2階席からもコールが始まり、スタジアム全体に響く。こけら落としの試合後は、トリコロールが賞賛される者であるとして、私たちは高らかにフクダ電子アリーナの支配を宣言した。 「なんだぁ、今年はダメなシーズンだけどジェフに2勝かぁ。」 「お、ほんとだ。」 「いや、違うって、今日は引き分けだった。」 「いいじゃねぇか、今日は勝ちってことにしよう。」 今日のポイント ● 中沢がゴールラインから阿部がヘッドした位置まで腕を振って 何事か言っていた1点目失点直後。 ● スローインの差が明確に出た両チーム。 ● とても的確な判定だった主審だが、 判定への不満のブーイングが多かった。 ● 中西の選手紹介へ万雷の拍手。 ● 試合後に「中西をよろしくお願いします。」と ジェフサポーターに言われたので 「来年は巻もください。」と言っておいた。 今日の査定
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