| malicia witness 2階の目線2005 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 05-06シーズン 10月29日 読売 国立競技場 一つ一つ、言葉を選びながら語る榎本達也。試合後のインタビューに彼が選ばれるのは、いつ以来だろう 「今日の榎本はよかったじゃないか。」 そんな言葉を口にしたのは、いつ以来だろう。今年は、これまでも、榎本達也は、止められそうにもないシュートを止めるが、止めるべきシュートを止められなかったり、クロスボールへの対応が危なっかしい(自分の気持ちが止められない)ゴールキーパーだった。だが、今日は、当然止めるべきボールをきっちりと止めた。完封の勝利に、ヒーロー選出は当然だった。 「よくやったぞ!!」 声が飛ぶ。 インタビューを終えたもう一人、中沢が、派手な「欽ちゃんジャンプ」でフィールドを横切り、大きく手を振り首を動かし、勝利の喜びをスタンドとともに味わおうとするパフォーマンスの後を追い、榎本達也は遠慮がちに、大きな身体を小さく縮めるように歩みを進める。それは「俺は、まだ、こんなところに身を置くのは申し訳ない」とキーパーユニフォームに包まれた身体で語っているようだ。それを見た中沢が「お前も来い!」と大きな手振りでトラックの看板外まで呼び込む。そして、大きく手を挙げる。ゴール裏ではお立ち台に上る。榎本達也は遠慮がちだった。深々と頭を下げる。 監督が、背番号1にチャンスを与え続けたくなる気持ちがわかるような気がしてくる。今日のヒーローは、君だ。 申し分のない守り。 それは読売戦での伝統。松田の安定ぶり。中沢は森本のドリブルもワシントンの空中戦も難無く止める。中西は、危ないボールコントロールがあったが、それでも実力を見せつける。連携も良く、決定的なピンチといえば、ワシントンのループと山田のヘッドの一連の攻撃だけ。 「緑の色の服なのに!」 主審も絶妙なポジションで読売のドリブルを遮る。 止まらない攻撃。 だが、それは単調に90分を連続する。両翼の突破は冴え、相馬のいない読売のサイドをズタズタに切り裂く。だが、あまりに単純。こぼれ球を久保が右脚でシュートするが、惜しくもディフェンダーに当たってコーナーキック。完璧なフリーで中沢がヘディングシュート。高木が弾いてクロスバーに跳ね返る。 左に流れたボールにドゥトラが走り込んできてクロス。久保はまったく届かず飛んだだけだが、向こうの上野の足下にドンピシャ、のはずだが宇宙開発。 「まずいなぁ。」 前線の孤立。楔はやっぱり入らない。中央高い位置に起点がないのだ。久保は決定機にストライカーらしい走り込みでシュートを放った。だが、中央での腰の引けた競り合いでの頼りなさは、エースにほど遠い。 「なんか変な形なんだよなぁ、飛び方とか。」 「久保は根性とかと縁遠い選手だからなぁ。」 久保が相手を突き飛ばすショルダーチャージで反則を取られる。だが、そこに拍手。反則でも良い。彼には勇気を持ったプレーが必要だ。 坂田の孤立は変わらない。いつもと違うことといえば、坂田自身のミスやファールで、自らを追い込んでいることか。 「読売って失点が多いから勝てないんだろ。」 「その読売から点が取れないうちって…。」 ボールは足下。それも悪いときの伝統。 「そうだ!ハユマ!!」 ハユマの前方にはスペースがたっぷり。走り出すハユマにパス。勢いを増してゴール前に殺到する選手達、のはずがスピードダウン。 「自分が足下にほしがるのはまだいいけれども、パスはスペースに出してやってくれよ。」 「あれが、足下に来たら、攻撃の勢いが止まっちゃうよ。」 ほんの数十センチのパスの違いかもしれないが、その数十センチを正確にコントロールできるのが上野のはず。 「上野が、もっと自分で前に追い抜かしていってくれないと、局面は打開できないよ。」 「なんで、今日は上野なの?」 「250試合出場だからだよ。」 「なんでマグロン使わないんだよ。中央でもっと仕掛けないと。」 「250試合出場だからだよ。」 山瀬は、得意の「消え」から、何度もゴール前に姿を現す。しかし、腰痛もあり、中央での強いプレーの期待まではできない。上野はいつものボール下げ過ぎ。「あいつのゴールはどっちなんだよ。」と、ぼやきも出る。 「基本的に相手合わせだからさぁ。」 とてつもなく悪いわけではないけれど、相手合わせ。だから緊迫感が無くなる。それなりの余裕を持って試合を進めていく。前節の新潟のスタジアム全体から吹き出してくる緊迫感と必死さが、この直接達決からは感じられない。 攻める、攻める。でも怖さを感じないのは、逃げの攻めだから。 久保のヘッド。鋭い弾道が、ゴールポストをかすめる。
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