malicia witness 2階の目線2005 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
J1リーグ 05-06シーズン 11月20日 サンフレッチェ広島 日産スタジアム 速報Jリーグで映像が無かった」前節を終え、今節は中位の広島戦。大混戦の優勝争いと残留争いに挟まれて、見事なまでの「消化試合」と世間は見る。スタジアムの中でも、気を抜けば、まったりとしたムードに陥るだろう。だが、私たちはJリーグに感謝しなければならない。 たった一つの横断幕が、私たちの緊迫感のレベルを上げる。 「心一つに勝ってカシマへ」そう書かれた文字はフィ−ルドではなく、整列入場する私たちの頭上にあった。スタンドに入る前から、すでに3日後のアウエーの闘いは始まった。このタイミングに、何が何でも全力で叩き潰さなければならない鹿島国との国際試合を組んでくれたJリーグに感謝する。身が引き締まる想いを抱き、スタジアムへ入場する。 広島は自信が無いようだ。 なぜなら、広島ゴール裏の横断幕が、そう私たちに知らせてくれている。 「広島は自信が無いらしいぞ!さっさと叩き潰せ!!」 しかし、グランダーのフリーキックは日産スタジアムを凍り付かせる。松田は十分なポジションをとっていたが、その前にいた河合がファールしてしまったもったいないフリーキックからの失点。 自信が無いのはむしろ久保。 広島は先制して自信満々に攻める。素早いパス回しは、今シーズンの前半を思い出したかのよう。逆に、久保は天皇杯でのゴール後のプレーが嘘のように大人しい。 「やっぱり跳ばないのか。」 競り合うことを避ける。ジャンプをしない。だが、たった一つのポジション取りで、試合は決まる。 「良いボール!!」 ハユマから放たれたアーリークロスはゴールキーパーが決して飛び出すことができない位置に向かって跳んでいく。そこにはディフェンダーが2人向かう。そこへ走り込んできた久保が跳ぶ。長い滞空時間と跳ね返すバネ。放たれたヘディングシュートはゴールに向かって跳んでいく。 「うっうぉ!!!」 腹の底から飛び出す驚きの言葉さえも跳ねているようだった。だれもが、久々に見る久保本来の人間離れしたフォームに驚き、その驚きを喜びに換える。 「やった!!!!」 「うぉ〜〜〜〜!」 「すげぇ!!!」 これこそが久保ゴール。一挙にスタンドのボルテージが上がる。 次は久保からのスルーパスでグラウがゴール。 跳ねる跳ねる、飛び跳ねる。皆が久保のように跳ねて喜ぶ。あっという間に逆転。 自信を取り戻したのも、結局は久保。 ハイボールに競り合う。自らボールを要求してディフェンスラインの裏に走り込む。 「出せ!!」 「久保!!」 その動きにスタンドが反応する。たとえ、パスが届かなくても、久保が目指すゴールに向けてボールが送り込まれることへの拍手。 「心一つ」。 久保の突進を倒す。場所はペナルティエリアの境界線。ホイッスルが鳴る。少しの間を置いて、岡田主審がPKを宣告したことを確認する。微妙な場所だ。 「ホントかなぁ。」 「まぁいい。決めとけ!」 「しっかり蹴れば決まる。」 グラウはしっかりと蹴る。決まった。 「いえぇーす!!」 「よぉ〜し!!」 隣の仲間達と手のひらを合わせる。 これほどの笑顔のハーフタイムは久々だ。 「なんか強いチームみたいじゃないか。」 忘れ去っていた王者の力を思い出す。力強くクリエイティブなサッカー。美しくゴールを奪い取るサッカー。サイドからクロスを点で合わせるサッカー。いずれもトリコロールのサッカーだったはずだが、それは、見失った思い出の影のようになっていた。いま、はっきりと蘇ってきた。 後半も圧倒。広島のチャンスは、ほとんどない。久保とグラウがボールを要求し、消えていた山瀬がスット姿を現す。そして、真の主役はマグロン。 「うまっ!」 「上手い!!」 「すげっ!!」 「そっちかよ!!」 何度、驚きの声を挙げたかわからない。フィールドの22人の中で抜群のテクニックと存在感でゲームをコントロールする。時には力強く、時には柔らかく。 「こりゃぁ別格だぜ。」 「今まで、なんで使わなかったんだよって感じだ。」 中央の怖さがサイドの攻撃を、より活かしてくれる。全てが好転する。 「今日は鹿島戦の前に広島戦って、感謝だよなぁ。汚いファールないし、しかも久保は元チームメイトだから、ぜんぜん厳しいフィジカルコンタクトしてないもの。何でもやらせてくれる感じだから、ちょうどリック・フレアーの試合みたいな感じだよ。」 「あぁ跳ばない。」 「競らない。」 「やっぱり。」 自信満々でプレーしていた久保が、終盤になると試合開始時の動きに戻っていく。ただし、自信を喪失したのではない。さぼり始めたのだ。 「そろそろ代えないとダメだなぁ。」 選手交代に冴えが戻った岡田監督は、久保と上野と山瀬を下げる。出すべき力を出し、温存すべきを温存し、不運な1失点のみで広島を封じきっての勝利。 プレーにも余裕が出る。グラウが直立不動から、これぞ日本!といわんばかりのお辞儀ヘッドでゴールを狙う。これほどまで相手を小馬鹿にしたヘディングは見たことが無い。両サイドのドリブルも縦に横に幅が広い。ただ、ひとり大島だけが、今期珍しいゲーム展開になじめずにいた。 「リーグは週末のホームで勝ったの2勝目だ。」 「よし、良いプレシーズンマッチだった。」 「結局、真ん中で勝負するヤツがいれば、勝てるんだよ。」 「捨てるとできるポゼッションサッカー。」 できなかった理由は、案外、簡単なことだったかもしれない。 「じゃぁ、水曜日!」 「じゃぁ〜ね。」 「次、外国で!!」 みな、笑顔で帰路についた。 「心一つに勝ってカシマへ」。 今日のポイント ● 何度か判定が割れた主審と副審。 ●最近では名物となりつつあるハユマの安易なカード。 ●元気が無かった佐藤寿人。 ●小村VS久保は以前と逆のチームで。 ●久保ゴールが無ければ2節連続で映像なしだった速報Jリーグ。 今日の査定
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