malicia witness 2階の目線2005 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
J1リーグ 05-06シーズン 11月23日 鹿島国 鹿島国立競技場 カシマスタジアムは、非常に怖いスタジアムだ。油断できない。誤解しやすいのだが、油断できない理由はアウエーの雰囲気ではない。もう、反対側の赤い衣装の人たちの踊りや歌は、形式的で伝統を引き継ぐ民謡のようになっている。指示されるがままに黙々と歌い続ける彼らには、このスタジアムの怖さはわからないだろう。 トリコロールのサポーター達は感情の起伏を素直に表す。 嬉しければ飛び跳ね、悲しければ一瞬落ち込み、素晴らしいプレーには拍手をする。力が抜けるようなプレーには、隣の仲間に迷惑をかけて寄りかかってしまうこともある。前半に何度もあった決定的なシュートの場面では身を乗り出し跳ねて悔しがり、次の好プレーを期待してコールする。 前半を終え、各地の途中経過がアナウンスされる。セレッソがリードしている報を聞き、落胆の溜息が漏れるスタジアムだが、そのため息は一瞬でかき消される。なぜなら、トリコロールのエリアからは大歓声と拍手が送られたからだ。なんということだ。誰からとも無く、一瞬の間合いすらあけること無く拍手が起きるほど、此処には鹿島国嫌いが集まっているのだ。 このスタジアムは危険だ。ちょうど、そのとき、脛に痛みを感じる。段差の上にはみ出した前の列の椅子の背もたれは絶妙の高さで凶器と化す。どのシュートの時だったのか、脚を打ち付けていたようだ。脛当てをして万全の備えのつもりだったが、脛当ての上、膝の下あたりが赤く腫れている。危険だ。 外国のことはよくわからない。 優勝争いのさなかで、攻めに出て来るはずの鹿島はゆったりとした攻め、もしくはカウンターに終始した。足下にボールをおさめながら、どっこいしょっとパスを回す。リカルジーニョは動かないし増田は行方不明。両サイドも上がらずじまい。 鹿島国にとって不幸だったのは、この日のルールがJリーグルールではなく、ほぼ国際ルールに沿って反則裁定をしていたことだろう。試合開始早々の数回のファールで、それを把握した。 「この基準で吹いてくれるなら、鹿島はイライラするだろう。」 その通り、10分と持たずに、上川さんに抗議をする鹿島国の選手達。 「深井が中央に来ない限りは点を獲られる心配は無いんじゃないか。」 全くその通り、なんら積極的なチャレンジはなく、外でボールを回すばかり。そして、あまりに遅いボールが無くなったタイミングで深井が飛んだ!!!! マラドーナばりに身体を仰け反らせ、両手を前に、やや握りこぶしで、かなり高い飛型点が挙げられる。前園の後継者は、間違えなく、この男だ。だが、タイミングが、あまりに遅すぎたために、上川さんは目を離していた。もし見ていたらファールをとったのか、それともシミュレーションだったのか。とにかく、何の意味も無く深井は立ち上がって自陣に帰り始める。 「深井ぃ〜面白かったぞ〜〜!!!」 「巻とは随分差を付けられたものだなぁ!」 パスミスが多く鹿島のボールは再三再四タッチを割る。マイボールになる歓声を上げる気にもならない。 「え〜っ!!!!?」 と、思わず声が出る。 後半も、そのままということはないだろう。 「鹿島は勝ちに来るんだから、どこかで来るぜ。」 すると、後半会早々から、前半には皆無だった縦への鋭い突破が出てくる。 「来たぞ!」 「ここは耐えろ!」 すると逆襲から奥が逆サイドのマグロンへスルーパス。角度が無いところから、簡単に美しい弧を描いたボールはネットを揺らす。 「まじ〜〜〜〜!」 「やっつたあああ!!」 「すっげってええええ!」 危険なスタジアムでありながら、この嬉しさと美しさの感動は止めることができない。横の、前の後ろの仲間達と手のひらを合わせ喜びを分かち合う。 「すげぇなぁマグロン。」 「やっぱ別格だ。」 「で、鹿島って攻めにきて3分で失点かよ。3分しか保たないのかよ。」 「しょうがねぇな。」 「さぁ、しっかり叩いちまえ!!」 時間は進むが鹿島の攻めに大きな変化は無い。むしろマグロンの別世界のテクニックが冴え渡り目立つ。鹿島のパスミスはあっけなくタッチを割る。だが、マグロンのパスミスは深いため息を沸き立たせる。 「そんなの上手すぎてパスが出てくるってわからないよ!!」 「上手すぎ。」 「怪物だよ。」 とにかく、相手と競り合うファーストコンタクトの巧みさで、相手はバランスを崩してしまう。これは攻めでも守りでも一緒だ。そして、密かに、最近、坂田もそれをまねしている。 「こりゃぁ鹿島はトップ下をなんとかしないと、どうにもならないんじゃないの?」 「深井も外に行ったまんまだし。」 「リカルジーニョとフェルナンドの両方を中盤の底に入れておく必要あるのかなぁ。でもトニーニョ・セレーゾって、ここは一枚にしないんだろうな。」 「おっ、誰代えるの?」 「増田?」 「いたのか。」 「忘れてた。」 鹿島の攻撃は、ずっと遅いまま。冷静に対処する松田と中沢を恐れているようだ。攻撃することが怖いかのようだ。ついに、トニーニョ・セレーゾは、もう一枚のカードを切ってくる。 「コーロギが出てきたよ。」 「あれ?本山がサイドバック?」 「え〜、そりゃないんじゃないの。」 「本山なんて守備できないし、それに選手のプライドを傷付けるだけの采配なんてダメだと思うよ。こっりゃぁ、この交代は大きいんじゃないか。」 ますます安心感の溢れるゲーム展開となる。ひやりとしたのは左サイドを突破されたシーンの1つのみ。野沢がペナルティエリア内で倒れると、同時に笑いが出る。 「いやぁ〜すげえや。」 「見事な倒れっぷり。」 「普通はシミュレーションでも一瞬はヒヤットするもんだけど、なんにも無いもんな。」 「あんなわかりやすい倒れ方、どうやったらできるんだ。」 焦りが見えてくる鹿島国。だが、サッカーは冴えないまま。右サイドバックの本山は上がることもできず、守備もできず。逆サイドではトリコロールのドリブルにファールを連発する。 「いやぁ、こりゃぁ鹿島らしいファールだ。」 「鹿島っぽくていいぞ!!」 目の前で立て続けに起きる汚いファールに大喜び。これを見るだけでも、外国まで来た甲斐がある。そして、見事なゴール前でのミスを見逃さなかった大島が弾丸シュート。 「え?入ったの?入ったの?」 「中?」 「入った!!!」 「すげぇよ!入ってるよ!!!」 「おっ、帰った!帰った!!」 「帰ったよ!!」 「さようなら、おつかれさまでした。」 メインスタンドのファン達が一斉に席を立って帰り始める。この不甲斐なさでは仕方ない。残り時間は僅か。そこで倒れる鹿島の選手。 「お前、時間使ってんじゃねぇよ。」 「みっともないぞ。」 「そんなとこで倒れていると、また、みんな帰っちゃうぞ!」 「あっ、帰った!帰った!」 「帰った!!帰った!!!」 ぞろぞろとスタンドから外へ出て行く鹿島の国民達。 「そりゃ、こんなの見てたら帰りたくなるよなぁ。」 上川さんのホイッスルが試合終了を告げる。遅すぎたくらいだ。勝負はとっくについていた。 コンコースで鹿島メルダを歌い、仲間達と固い握手。 「鹿島は、ほんとうにメルダだな。」 「ダメだなぁ鹿島。あれで、よく、こんな順位にいるな。」 上機嫌でスタジアム外に出ると、中年の鹿島国民に声をかけられる。 「土曜日、頑張ってください。」 何のことだかわからなかった。が、一瞬の間をおいて、それがセレッソ戦のことだと理解する。 「土曜日?そんなの負けに決まってんだろ。」 「いや。勝てますよ。勝ってくださいよ。」 「な〜に言ってんだよ。リーグなんて関係ないよ。天皇杯だよ天皇杯。土曜日は主力はみんな温存だよ。」 「そうそう、見事に負けるから見てなよ。」 「そう言わずに・・・。」 「いや、マジで負けるぜ。0−4くらいで。」 「温存、温存。」 中年の鹿島国民はあきれて立ち去ってしまった。 嫌いな鹿島国は徹底的に叩きのめす。ああは言っていたものの、土曜日、スタジアムに入れば、今度はセレッソが優勝戦線から脱落することを楽しみに、トリコロールへの精一杯の応援をするだろう。今期の国際試合は終わった。天皇杯に向けてのプレシーズンマッチ2連戦。ともに勝つ。元旦まで、負けるわけにはいかない。 今日のポイント ● 見事だった上川さん。 ●バーレンばりのゴールキーパー妨害。 ●メインにもびっしりだったトリコロールの横断幕。 ●好調を取り戻しかけたが怪我をしてしまった久保。 ●ベンチにいた鈴木。 今日の査定
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