| malicia witness 2階の目線2005 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 05-06シーズン 11月26日 セレッソ大阪 日産スタジアム ホーム最終戦。 募金を手伝う人、スタジアム周辺のイベントを楽しむ人。いつになく出足が遅い。集まってみれば、鹿島との国際試合を終えた安堵感か、天皇杯まで時間があるせいか、ややリラックスし過ぎの雰囲気でもある。 Jリーグ開幕当初からの応援仲間のMくんにお子さんが生まれた。M君はJリーグ開幕当時は大学生だった。初めて言葉を交わしたのはJリーグ開幕前の日産ギャラリーウィスポートでのイベント。確か、あのイベントは来場記念品としてアジア・カップウイナーズ・カップ連覇優勝記念のテレフォンカードがもらえたはず。あのテレフォンカードは、どこへ行ってしまったのだろう。 「ねぇM君、子供の名前、決まったの?」 「いや、まだですよ。」 「こういうのどうかな。今日、得点した選手の名前をつけるのって。」 「ドゥトラが得点したらどうするんだよ!!」 「それよりも、ブルーノ・クアドロスが得点したら大変なことになっちゃうよ!!!」 「じゃぁ翼君にしたら?」 「それって、思いっきり過ぎる。」 「じゃぁ岬君でどうだ。」 「それって名字だよ!!!!!」 バックスタンドに火をつけるキッカケがある。 この日の場合は、まずは選手入場時のディスプレイ。トリコロールに色分けされたゴール裏を目にすれば、気持ちが入らないわけが無い。先ほどまでの緩い気分が吹っ飛ぶ。バックスタンド1階はいつになく声援や罵声が多い。コアゾーンがゴール裏中央部へ移動したのにも関わらず、そんな距離など飛び越えて、ホーム最終戦の勝利を願って熱気をフィールドに解き放っている。2階はといえば、常連の通路前、マリーシアのコアメンバーが多い通路上もさることながら、それよりも上段が非常に熱い。その位置には、ゴール裏と同じようにユニフォームに身を包んだサポーター達が陣取っている。大きな声のパワーはスタンドの上の方から降り注ぐ。 そして、手拍子を一挙にボリュームアップするキッカケがある。 それがマグロンのなにげないボールさばき。なにげないのが洒落ていて、それでいて動きがコンパクトだからスピーディー。スピード感溢れる攻撃にアクセントをつける。その瞬間から手拍子は格段のボリュームアップで響き始める。 ゲームの主導権を握る。 「セレッソらしくしろ!!」 「慣れないことするんじゃねぇぞ!!」 試合開始前から野次られていたセレッソサポーター達。いつもの倍は来ているだろう。声の量ならば倍以上だ。だが、その存在が忘れ去られるほどに、このホーム、日産スタジアムはトリコロールが制圧している。西沢が試合開始早々のビッグチャンスをゴールしていれば、こんなことにはならなかったのかもしれない。だが、優勝へのプレッシャーのせいか、西沢は絶好のチャンスにトラップミスをし、哲也との一対一になるはずの場面を松田との一対一にしてしまった。 大きなサイドチェンジやバックラインのボール回しなどにセレッソらしさは垣間見えるが、まさに「慣れないこと」に固くなっている様子。 「でも、やっぱりセレッソはちゃんとしたサッカーしてるね。」 「だからいい試合になってる。」 トリコロールも勝利への執念を見せる。コーナーキックの競り合いで倒れた河合は、ボールが来る前に、再び立ち上がってジャンプしヘディングでシュートしてみせる。グラウは何度もゴールを強襲する。 「ファンタジスタはどこに行った?」 「ファンタジスタだよ。」 「もっと、なんかやれよ。」 「普通にやってるじゃん。」 「なんかすげぇことやれよ。」 ファンタジスタと呼ばれているのは、久々の出場の大橋。 「普通にやってるのに、そんなこと言うって、みんな期待してるんじゃん。」 そう、大橋が上手いことはみんな知っている。だから、物足りなくてしかたない。 ところが、大島を起点としてスペースに走り込んだグラウが身体を巻き込むようにして逆サイドにグラウンダーで送り込んだパス、そのボールに飛び込めなかった大橋。突き刺すような厳しい声がバックスタンドのあちらこちらから一斉に振りおろされる。 「なに諦めてるんだ!」 「突っ込めよ!!」 「脚出さなきゃ、何も起きないぞ!」 大橋の弱点はフィジカルコンタクトが弱いこと、ではない。この試合で、みなよくわかった。といっても次節は出場停止になってしまったので、リーグ最終節で、それが改善される姿を見ることはできない。 大橋の弱点は「言い訳する心」にある。それはマリノスクラブ会報でのインタビューを読んだ人はお分かりだろう。インタビュアーの誘導があったとはいえ、あまりに言い訳じみたコメントが多すぎる。そして、今日のプレーで言えば、脚を出せば良い場面、全力で追ってみれば良い場面、五分五分のボールに競り合いをするべき場面、そういう場面を避けるように、大橋は走るスピードをことごとく緩めてしまったり、止まってしまったりしている、その繰り返しなのだ。つまり、「自分はフィジカルコンタクトが弱い」ということを意識するだけでなく、それを理由にフィジカルコンタクトを回避してしまっている。だから、スタンドから厳しい声が飛ぶのだ。それでいて、大橋自らがボールを奪いに獲りに行っている時は、何度かはボールが奪えていたりする。そして、自分は足下でもらって決定的なパスを出すのが得意だからスペースへは動き出さないという考え。これも同様だ。そんな「言い訳する心」さえ変化があれば、テクニックは十分なはず。だが、今年のリーグ戦では、もう、その答えを私たちは見ることはできない。 試合前のディスプレイ以外に、もう一つ、今日のゴール裏サポーター達のトピックスがあったのを忘れてはならない。あれはファインプレーだ。怪我でゲームが止まって再開をするシーン。セレッソの選手がボールをトリコロールに返すのだが、そのとき、ボールをフェアにゴールキーパーに戻さずに深い位置のタッチに蹴りだした。その瞬間に起きたブーイングは憎悪の念が黒く渦巻いた心の叫び。セレッソの選手達は、自分たちのフェアでないボールの返し方を自覚したのか、トリコロールのスローインのときに前へ出て来なかった。ホーム最終戦で、誰に指示されることも無く一人一人の意図が示された瞬間。それにセレッソは負けた。 「あ〜」 「げ〜」 「む〜」 なんとも表現しがたい。BS−iでは解説の金田さん(日産OB)が「お〜い!!!」と絶叫した。なんでもないクロスを河合が脚を上げながら脚でないところにボールを当て、イージーボールを森島の前に置いてしまった。 「やり直し、やり直し!!!」 予想外のミスで失点する。ミスというか、珍事だ。河合がやるはずのないような出来事なのだ。森島にプレゼントするようなボールだった。 反撃を開始するわけではない。 ずっとトリコロールの時間なのだ。グラウのシュートは吉田に阻まれる。 「しまった、あいつ当たってる。」 「こりゃぁ苦労するぞ。」 上野はボールを下げること無く的確に繋いでくる。ハユマは、今期一番のバリエーションに富んだドリブルとクロスの種類で勝負する。それでもゴールが割れない。 さらには審判までもが味方する。あれはファールではないだろう。しかも抗議のブルーノ・クアドロスはカード。大切な次節は出場停止になってしまう。 「あれは可哀想だ。」 「でも、いいぞ、ここでやっちまってくれ!!」 「頼むぞマグロン!!」 「絶対にマグロンが決めろ!!」 期待通りの弾道だったが吉田が方向を変えてしまう。ボールは外に弾き出される。 「ちっきしょう。これも止められるのか。」 「これは、まずいぞ。」 「まずいよ、なかなか点が獲れない。」 「それに前節が前節だろ、それであの失点じゃ、他のサポーターに何言われるかわからないぞ。」 「そんなに優勝させたくないのかとか言われかねない。」 「しかも、やっちまったのが河合だろ。浦和のファンとかが、そんなに浦和に優勝させたくないのか、とか、わけの解らないことを言い出すぞ。」 「そんなの面倒だ。何が何でも1点を獲らなきゃダメだ。」 「山瀬投入した方が良いんじゃないか。」 「もし、それで山瀬がキーパーと一対一とか外したら・・・。」 「浦和の」 「やばいな。」 「とにかく、どんなことしてもいいから点を獲るんだ。このまま終わるわけにはいかないぞ。」 「なんとしても河合を救え。」 そもそも、この試合は勝つべき試合なのだ。さらに、理由が加わった。拍手の熱は衰えない。ホーム最終戦を、このまま0−1で終えるなど許されない。 刻々と時間は過ぎて行く。90分が迫る。那須をセンターバックに投入して松田が前線に上がる。哲也がかろうじて弾いたシュートは、コロコロと転がりゴールポストをかすめ肝を冷やす。だが、後半の途中からスタジアムに入ったメンバーの一人によれば、この試合は0−1で終わるようには、到底思えなかったのだそうだ。どう見てもトリコロールが得点する、そう見えたのだそうだ。 圧倒し続けている90分は終わる。ロスタイム表示は4分。 「4分あるぞ!!」 「まだまだチャンスはあるんだ!!」 「とにかくシュートを撃て!!」 右から入ったボールがゴール前でこぼれる。 「撃て!!!!」 「あっ!」 「撃て!!!!!」 「あっ!!」 「撃て!!!!!!」 「撃てぇ〜〜〜〜!!!!!」 「入った!!!!!!!!!!!!!」 「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」 繰り返された絶叫、繰り返されたシュート。跳ね返され、跳ね返され、ほんの少しずつ前へ進み、最後に松田が蹴り込み、その瞬間からスタンドは大きく波打ち多くのものが壊れた。跳ねている人、倒れている人、抱き合っている人。絶叫し握りこぶしを作り、手のひらを仲間と合わせ、興奮に声を枯らし。だが、急に思い出す。 「ロスタイムは4分だ!!」 「まだ獲れるぞ!!」 「攻めろ!!」 「とどめをさせ!」 絶叫は、そのままコールとなり選手達を後押しする。しかしタイムアップ。 「よくやった!!」 「良い試合だった!!」 勝てなかった。だが、これぞトリコロールが、昨年までの2年間にやってきた、底力のあるサッカーだった。国立競技場で柳相鉄がゴールネットに突き刺した、あの引き分けが、岡田マリノスの象徴たる試合だった。やっと、今期、忘れていた試合を取り戻した。ホーム最終節まで長い時間をかけてしまったのだが、まだ天皇杯がある。 まだ試合が残っていることを理由にセレモニーでの挨拶を拒否した岡田監督に代わって、中沢が「まだ天皇杯がありますが」という前置きをつけて挨拶する。 「天皇杯獲れよ!!!」 「元旦は国立だぞ!!」 「今度こそ獲るぞ!!」 「天皇杯だぞ!!!!」 場内を一周する選手達に声を飛ばす。届かない声かもしれないが、言わなければ気が済まない。やっと取り戻した最後まで諦めないサッカーは、天皇杯に間に合ったのだ、と信じたいのだ。 セレッソサポーター達は残っていた。携帯で確かめた他会場の結果を、大型ビジョンで、もう一度確かめたいのか。セレッソは首位だ。引き分けで、ついにトップに立った。前節にトリコロールに倒された鹿島国は引き分けで勝ち点差は同じ。 「お〜いセレッソ、来週は頑張れよ!!俺たちは俺たちで勝手にやってるから!!」 「しかし、Jリーグの優勝を左右するのが2年連続で河合のプレーになるとは、誰も予想しなかっただろうなぁ。」 今日のポイント ● 終始押している試合では上野の良さが光る。 ●シュート2本以外は何もしていないに等しいセレッソ。 ●日に日に怪物ぶりを発揮するマグロン。 ●これぞトリコロール、これぞセレッソ。 ●試合後のメンバー全員紹介で思い出した原の存在。 今日の査定
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