| malicia witness 2階の目線2006 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 06-07シーズン 3月18日 セレッソ大阪 日産スタジアム 「奥はマルケスがゲームを組み立てちゃうからやることなくなっちゃったね。」 「いや、やることないじゃなくって。」 「なんか、奥と吉田がしっくりこないよねぇ。」 連勝で強さがクローズアップされているトリコロール。異国での勝利の次節は、異国帰りの皆の表情が明るい。 「でもさぁ、わかんねぇよ。鹿島が酷すぎたんだよ。」 まだ、ここに油断はない。信じることと過信し気が緩むことは違うのだ。 試合開始早々にゴールを奪われる。だが、慌てる必要はない。途切れることなく続く応援の歌声。リードは一時的にセレッソに与えてあげたもの。その貸しをGKの吉田がしっかりと返す。前半のうちに追いつく。 後半はトリコロールの時間が続く。 ドゥトラが寄せてマグロンがボールを奪う。その前にいるマルケスは走り出し、ドゥトラはインサイドキックの丁寧なパスでスペースへ。マルケスが逆サイドへクロスを送ると、そこには、先ほどまでドゥトラの後ろにいたはずのマグロンがいる。トラップは完璧に足下に収まり振り抜いた脚はゴールにボールを送り込む。 さらには右サイド、そこは縦への動きが少なくていた指定場所だが、スペースに上野が走り出し、オフサイドギリギリのタイミングでボールは上野の前へ。ゴールライン付近まで侵入した上野が弾丸のようなクロスを送るとゴール前に飛び込んでいるのはマルケス。なんと美しい連携なのだろう。 いつものように吉田の時間は終わる。今日の終わりは見苦しく。 「吉田、てめぇ、押せ押せの時間に、なんでちんたら歩いてるんだよ!」 不満なプレーはある。例えば勝負せずにゆったりとした山なりのクロスを逆サイドに送ってチャンスを失ったときは失望した。そのときに飛んだ野次は、まだ愛のある叫びだ。だが、このちんたら歩きには愛を失う。 登場するハユマはボールを持つだけで声が飛ぶ。 「行け!」 「勝負!!」 そこには勝負に挑む男がいる。 「あ〜サイドって、こうやって前後に動くんだよね。」 「目の前を縦に走るヤツがいなかったから新鮮だね。」 これでこそ両サイドを活かした闘いだ。吉田にないものは、闘争する心と行動。テクニックの問題ではないのだ。残された試合は1試合しかない。浦和戦で、今の吉田が通訳と相対することは大きなリスクでしかない。最後のチャンスは古巣大分でのアウエー戦。 セレッソの攻撃は鋭さを持つ。 「気をつけないと!」 「攻めは鹿島よりも全然早いんだから。」 コーナーキックの流れからカウンターをくらいピンチになる。さらにマグロンが怪我でアウト。中沢がスパイクされる。 「まずいぞ。しっかりいかないと。」 クロスが入る。西澤のポストが収まる。シュートを撃たせない。だがペナルティエリア内の攻防は、いつでも紙一重だ。1点差では落ち着かない。 残り時間15分。怪我のマグロンを下げるかどうするか。 「マグロンはカードをもらってるから下げるべきだよ。ここは河合だろ。」 「久保が持つかだよねぇ。」 「でも、基本的に久保は何もしていないし。」 時間は、まだ15分ある。ドゥトラからのクロスは吉田の手をかすめる。抜けてきたボールに河合がライダーキック。押し込んだ。 「ゴー〜ル!!」 スタジアムナビゲーターが叫ぶ。 「よしっ!!」 「河合だ!!!」 しかし取り消し。歓喜のスタンドはざわめきに。 「やり直せ!!」 「ここが大切だ!」 「もう一回奪い取れ!」 一気呵成に突き放したい。しかし、セレッソは、ここで徳重を投入。 「ウ〜ン、嫌なのが入ってきた。」 「ここでミスター電装かぁ。」 徳重には苦い思い出がある。 何度も経験した甘い罠。その香りが漂い始める。 緩んでしまったようだ。スタンドの雰囲気は勝ちが決まったようなムードだ。まだ残り時間は長い。追加点は決まってはいない。それでも、フィ−ルド上では脚が止まる。 「前から行け!」 「誰か一人行け!」 「下がり過ぎ!」 「引くな!」 第一節のようにバイタルエリアでスペースを与え、ミドルシュートを撃たせる。 「下がるなよ!」 「油断するな!」 直後、ペナルティエリアにセレッソはフリーが2人。悲鳴が上がる。 「やられた!」 「あ〜!」 頭を抱える。 しかし、榎本と一対一の西澤が放ったシュートはクロスバーを越える。 「助かった。」 「油断するなって言ってんだろ!」 「下がってんじゃねぇぞ!」 さらに浴びるシュート。 「な〜んで、こんなにバタバタしてんだよ。」 「マグロンが抜けたからじゃないか?」 「そ〜か。納得。」 「ヤバいね。1点差じゃ。」 試合は動く。この試合に休みはない。ほんの僅かな劣勢が続く時間が一瞬にして立場を逆にする、その瞬間を河合が捉える。ここしかないタイミングと速さの角度を付けたスルーパス。縦105m×横68mのフィールドのココしかない絶妙のコースを斜めにボールは進む。 「凄い!」 その弾道だけで腰が浮く。美しきラストパス。いや、左脚で、得意の位置にボールをおいて間髪入れずに抜群の決定力を持った左脚がゴールネットにボールを撃ち込む、その姿は幻。目の前にいる絶対エースは、思わぬ方向に弾んだボールを器用に右脚で整えて、「シュートの自信がない右脚側にボールが跳ねてしまったので、マルケス様お願いします。」という気持ちを隠すためにか、これまた器用な右脚のインサイドキックで逆サイドのマルケスへ。久保のシュートを警戒して引き寄せられたセレッソのディファンダー達。マルケスを見ている者はいなかった。 そう、言い換えれば、こういうことだ。 久保は僕らを裏切り、でも僕らは久保を信じ。きっと裏切ることと信じることは、ずっとこのまま交互に2007年1月1日まで続く。今日、このとき、久保を最も信じていたのはセレッソのディフェンダー達。そして久保の裏切りを信じていた者、マルケス。久保のシュートを信じなかったマルケスは密集するペナルティエリアの中で孤独を得た。 「よしっ、今日もカタカナばっかりが並んだぞ!」 「すべてカタカナの「マ」から始まる名前ばっかだ。」 3−1。2点差がつく。 「これで安心だね。」 「雨も上がってきたようだし。」 「よかった、よかった。」 残り時間僅かになっての追加点。 自陣からドゥトラがドリブル。すると中央で疾走する大きなしなやかな影。 「久保だ!久保!」 「久保!久保!久保に出せ!!!」 「全力疾走だって!久保がマジだって!!」 ドゥトラからのグランダーのクロスは惜しくも距離が長過ぎる。 「惜しい。せっかく久保がマジだったのに。」 「なんで久保は急に走り出したんだ。」 「今日唯一のフルパワーでのプレーだったじゃないか。」 「雨がやんだからじゃないか。」 「意外と、それが理由かもね。」 ロスタイム4分。雨は小降りになり、本来であれば不要となるトリコロールのパラソルが花開く。コーヒールンバがなり手拍子を合わせる。さらにマルケスからドゥトラの突破。低くて早いクロスが入る。 「決めろ!」 「うっ。」 「あれっ。」 「外すなよ!」 ニアサイドでのヘディングはドンピシャのタイミングに見えたが、弾丸のようなシュートはポストをかすめてパラソル花開くゴール裏方向に飛び去って行く。 「あ、清水だぞ。」 「えっ、アブね〜。アブね〜よ。」 「ヤバいヤバい。」 「こんなとこで清水の貴重な年間2点のうちの1点を使ったら大変なことだよ。」 「3−1を4−1にするなんて、清水のゴールではもったいなさ過ぎる。」 気持ちのよい夜。 「今日は色々、吉田デーだったな。」 なんて会話したが、やっぱり勝ち点3とマグロンに乾杯した。 今日のポイント ●好調の上野あってのマグロン。 ●久保の見せ場は副審との睨み合いだけだった。 ●西澤との競り合いは迫力。勝利した栗原の実力。 ●精彩を欠いた奥。復活の糸口はあるのか。 ●動かない右。今のままだと上野とマグロン次第。 ●10番がミスすると声を揃えて「ビンゴー!」。 今日の査定
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