malicia witness 2階の目線2006
Jリーグ ヤマザキナビスコカップ 06-07シーズン

3月29日 アスパ福岡  三ツ沢球技場

縦へ縦へと仕掛ける福岡の選手達。それは、J2を勝ち抜き、大きな戦力補強なしに(10番が誰だか知っていたか?)、このJ1へチャレンジする地方の小クラブの意地、心意気。個人のスキルでは圧倒的な差を持ちながらも、劣勢が続き耐えるトリコロール。けっして意図的ではないオフサイドや、パスミスにも助けられてロスタイムまでを凌ぎ、ナビスコカップの初戦を勝利する。

「勝っただけだったな。」

フィールドとの近さで、日産スタジアム以上の熱気を帯びるはずの三ツ沢球技場であったが、試合後の選手達を迎える声援は、ややおとなしめだ。
噛み噛みで意味のわからない日本語になったインタビュアーのヒーローインタビューがゴール裏で始まり、ヒーロー・マグロンを迎えたスタンドは大きな熱を取り戻す。なんて素晴らしい選手なんだ。
「粘り込んだゴールでしたが・・・・。」
という質問に
「これ、絶対に通訳は訳せないぜ。」
という期待通り、マグロンは
「ラッキー。」
とだけ答え、苦笑も交えてインタビューは終わる。

試合後に控え選手達が走る。出場時間の長くない吉田も、それに混じる。数週のランニングを終え、歩きながらクールダウンする選手達。吉田は水沼と話をしている。バックスタンドの前にやってきたとき、大きな声で吉田に呼びかける。
「吉田!頼むから勝負してくれよ!次はシュートを撃ってくれよ!!」
すると、吉田は脚を止め、こちらを向いて声の主の顔を見て手を上げる。彼自身も悔やんでいるようだ。あの絶好のチャンスを逃したことを。話をしていたはずの水沼は、先に歩を進めてしまっている。

奥に代わって登場する吉田。そのアナウンスが流れると、一瞬の間が凍る。声援も、拍手も、ブーイングも野次も飛ぶこと無く、空白の静寂が、ほんのひと呼吸ではあるが三ツ沢球技場に起きる。ゴール裏からコールが起きるまでの僅かな間ではあったが、サイドで繰り返される不甲斐ないプレーへの不満と、それでも今日の起用はトップ下だから、という微かな期待が、全てのサポーターの行動を止めてしまったのだ。

中央でプレーする吉田。左サイドの攻防の間に、ポジションを右サイドに変える。すると、そこに、サイドを変えるボールが入る。ワンタッチ目は良し。ゴールに向かってドリブル。吉田とゴールの間にはゴールキーパーしかいない。
「よしもらった!」
「撃て!!」

それは、ある意味、試合前に描いた絶好のシナリオ通りだった。

思ったプレーができずに土俵際に追い込まれた吉田はカップ戦での先発落ち。大声援を浴びてプレーするハユマをベンチで見つめ出番を待つ。満を持して登場。そして、ゴール。リーグ戦に戻って、見違えるような吉田の大活躍で・・・。

ところが、そうはいかなかった。

神様の悪戯ではない。ただ一人、ゴールキーパーだけが障害のゴールに向かってシュートを撃つのではなく、うじゃうじゃと人がいる左へ横パスを出したのだ。騒然とするスタンド。大人しいバックスタンド中央にも立ち上がって抗議する者がいる。
「なんで撃たないんだよ!!」
「勝負できないのかよ!」
「お前、どこの柳沢だ!」
声だけでなく、身体全身が怒りに暴れる。
そんな大人達の振る舞いの後ろで、席に座ったままの小学生が、独り言のように言葉を吐き捨てる。
「骨無いなぁ。」

とはいえ、サイドでのプレーよりも窮屈さは無い。前を向いてのプレーも積極的。サイドで「Mr.バックパス」とささやかれるプレーをしているときとは、やはり大違いだ。奥が不調、清水がけが、山瀬は復帰の目処立たず。となれば、トップ下の吉田への期待は大きい。期待に応えるか、裏切るか、それには神様の悪戯は関係ない。吉田一人にかかっている。

後半の劣勢。ボールが収まらず、なんどもカウンターを浴びる。

リーグ戦で見せた小気味よいパス回しは鳴りを潜め、大きく蹴り出すプレーになる。福岡のディフェンスラインは不安定で、そんなプレーでもチャンスはできるが、これが効果的な攻撃なのかどうかはわからない。ただ、坂田が入ると、フォワードというものを実感させられる。
「なんか去年っぽくないか。」
「なんか、見慣れたサッカーがかえってきた感じだよ。」
「なんで、ボールが収まらないんだよ。」
「マグロンがいないから。」「マルケスがいないから。」
会話は、ここで途絶える。

結果だけなら好発進。だが課題も多い。歩きながら、今後の展望を語る。リーグ序盤の連勝の勢いを維持できるかは、今日、出場した選手達が戦力として機能するかにかかっている。かつて、読売から「おっさん自動車」と揶揄されたときよりも高齢のチームが勝ち抜くには、総力を挙げて一つのサッカーをやりきる必要があるのだ。不安と期待が入り交じりながら、私たちは三ツ沢の丘を下った。


今日のポイント

● 外から巻いてサイドネットに当てる方が難しかった坂田のシュート。
● バタバタしたが奮闘で健在ぶりを示した那須。
● 左に流れるマルケスがいないなら左利きを入れてしまえと平野起用。
● 必死だった終盤のキープ。





微妙な試合内容の会話よりもドイツでの旅行日程の会話に夢中。

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