| malicia witness 2階の目線2006 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 06-07シーズン 4月23日 ヴァンフォーレ甲府 小瀬陸上競技場 勇猛果敢にチャレンジする両サイド、日本代表の怪物からゴールを守る勇気、セレソンメンバーを追いつめる集中力、そして、劇的なゴール。満員のスタンドはサッカーの素晴らしさを実感し、愛する地元クラブを賞賛する。試合終了のホイッスルとともにバックスタンドもメインスタンドも一斉に総立ちになりスタンディングオベーションは続く。甲府、素晴らしきJ1の闘い。これぞプロフェッションナル。これぞフットボール。 ただし、それは第三者としてJリーグを見ればの話だ。 トリコロールのサポーターにとって、これは屈辱だ。負けたことが理由ではない。望みも魅力も無いままに同じことを繰り返し、ついには甲府にまで来て「マリノスは強かったね」という印象を与えること無く完敗したことが、屈辱でしかない。座り込んで頭を抱え、涙は止まらない。いつもは冷静に試合後を評価する者がキレて叫び、椅子を叩き、いつもは辛辣に罵声を浴びせる者が無言で席を立って先に帰る。選手にブーイングを浴びせる者、選手の問題ではないと黙る者、心理は複雑だ。ただし、敗れるべくして敗れたことは誰もが共通の認識だ。それが、選手、監督にも共通のものとなっていればいいのだが。 スタジアム横から発車する新宿行きの直行バスを眺める。乗っているのは打ちのめされたトリコロールのサポーターばかりだ。 「俺、あのバスに乗ってみんなで黙って帰れる自信がないな。」 予想外の4バックは機能しない。典型的な4バックの失敗のようだ。両サイドが押し込まれ中盤のサイドに大きなスペースができる。そこへ甲府のアタッカー達が飛び込んでくる。無名選手が多い中で知る人ぞ知る存在の宇留野や、小気味よいプレーが印象的な藤田がサイドを突破しクロスを入れてくる。 最近、見た記憶がある。 トップ下の平野は、すぐに大島の近くにまで上がっていってしまう。しかもボールを見ないで一目散だ。だから、中盤ではボールの出しどころがなくなる。トップ下がトップ下の位置でボールを受けられず、両サイドは押し込まれたまま。奥もマグロンもコンディションは良くないために運動量が多くない。しかも、前線からの守備のプレッシャーがかけられないために、ボールを奪う位置は高くない。だから、奥からはロングボールが多くなるし、後ろに下げる機会も多くなる。これほど後ろにパスをしても、文句の言いようが無い展開なのは、明らかに今回のシステムと選手起用が原因なのだ。これでパスに文句をつけていたら応援にならない。 選手が代われば、全く違うサッカーになる。 目の前にいる甲府やジェフとは真反対のサッカー。ひ弱で規律の無いチーム。時折チャンスを作るが、全体的には、まったくの甲府ペース。スタンドのボルテージは上がっていく。 中沢のミスで大ピンチに陥る。なぜか松田はオフサイドを主張して脚を止めて見送りかける。慌ててバレーを追いかける。そして副審への抗議。 「馬鹿やろう!脚止めてるんじゃない!!」 「副審に文句言う前に中盤の確認しろ!!」 「抗議している暇なんか無いだろ!」 そんな声は届かず、執拗な抗議を終えても副審に向かって何事かを言った松田にはカードが出る。 慢心と迷いの前半を終える。 「今期最悪の前半だったな。」 「こんなこといつまでやっても点獲れないぞ。」 失点こそ無かったものの、流れるような攻撃は無く、パスは足下を繋ぐばかり。勝ち星の無い連戦の中でも、もっとも失望した45分では何も得ることができず、後半を迎える。 後半に入っても状況はなかなか変わらない。選手が代わるわけでもない。 「これじゃぁ、引き分け御の字の試合じゃないか。」 ひたむきにゴールを目指す甲府のサッカーを体験する。中盤では短く小気味よく繋いで、チャンスを作るとスペースにボールを流してスピードアップする。単純だが美しい、技術の差を埋めてしまう戦術的な決まり事。だからといって自由度が無いわけではなく、随所に選手の個性が散りばめられている。甲府のサッカーを初めて見たトリコロールのサポーターも、甲府の選手達の個性を感じ取っているはずだ。 流れが変わるまで長い時間が必要だった。 やっと甲府の脚が止まり始める。そこに投入される上野。それまで足下を繋ぐだけだったトリコロールの攻めに変化が出る。スペースへ流れるボール。スピードアップする攻撃。ついにゴールを脅かす時間がやってくる。 「行け!!」 「そこだ!!!」 「チャンスだ!この時間に勝負だ!!」 満員のスタンドにも「これはヤバい」というムードが漂い始める。しかし、そのムードも一つの出来事で途絶えてしまう。 ドゥトラは最初からおかしかった。 甲府のサイド攻撃がよかったのは事実だ。だが、試合開始早々から、あまりに簡単にドゥトラは抜かれ過ぎていた。上手いはずの奥がトラップミスを連発するなどでドゥトラの不調は目立たなかったが、前半から脚のもつれでドリブルを止めてしまったり、とても90分間のプレーができる雰囲気は無かった。そうでなくても70分前後から、めっきりと動きが落ちるベテランプレーヤーを、この激しい甲府の動きに90分間も付合わせるのは難しい。いつもよりも負担が大きかったその分、疲れだけでは収まらなかった。この日、最も有効なスペースへの飛び出しを見せ、それが皮肉にも自らの限界を超える。そのまま前に倒れて動かなくなる。誰もが「いつかは・・・」と予想していたドゥトラの怪我による離脱だが、指揮官の采配によって全治6週間という予想を上回る重い症状をもたらす。 ボクシングではノックアウト寸前にまで追い込まれた選手がゴングに救われ、1分間のインターバルで蘇生し、次のラウンドでは逆襲に転じることがよくある。まさにドゥトラの怪我は甲府に幸運のゴングを鳴らしたのだ。勝てる流れは、また引き戻され、再び甲府が攻勢に転じる。フットボールは勝負へのバランスを簡単に変える。それでも狩野がゲームに参加してくると、またしてもトリコロールが攻勢に。繰り返されるコーナーキック。この時間帯は、さすがの甲府も下がってゴール前を固める。 「決めろ!!」 「絶対に決めろ!」 コールの合間に叫ぶ言葉は勢いだけ。どんなに酷い試合であっても、今のトリコロールには勝ち点3さえあれば次への飛躍に繋がるように思える。だから、ただゴールだけを願った。 集中力という言葉は曖昧だ。 だが、勝利への執念という言葉は、もっともっと伝わりやすい。何が何でも勝つんだというプレーにぶつける強い気持ちが勝利を呼び込む、そう信じられる。90分を経過しロスタイムに入る。あと一押しで勝ち点3か勝ち点1か、岐路に立つ。その時は、松田は全能の神のごとく審判に抗議をしていた。その後、左からゴール前に入れられたアーリークロスはバレーのゴールを呼ぶ。守ったのは哲也と中沢。甲府の選手達はフリーで3人が飛び込んでいる。明らかに、勝利への執念は甲府が上回ったのだ。 平野がトップ下で機能しないのはわかっていたことだ。松田を放っておけば、このようなことになるのも当たり前のことだ。逆に何に怯えて4バックにしたのかはわからない。本来はドゥトラのバックアップで獲得した平野は、ドゥトラが怪我をしたときにはベンチに下がり不在だった。それら、全てをふまえて言えることは、この敗戦は、この試合の中だけで生まれたことではない、ということだ。全ては昨年からの積み重ねの過程で生まれてきた結果の一つでしかない。 喜びに沸く甲府のスタンド。いつまでも総立ちで劇的な勝利に酔いしれ選手達を賞賛する。だが、彼らは一つ勘違いをしている。彼らが勝ったのは「J1の強豪」横浜F・マリノスではない。 今日のポイント ●なにもありません。 今日の査定
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