malicia witness 2階の目線2006
Jリーグ ヤマザキナビスコカップ 06-07シーズン

4月26日 東京  味の素スタジアム

明らかに鹿島国とは違う、ボールを動かしながらの時間稼ぎを行ない、この日のMVP砂川さんが試合終了を告げるホイッスルを鳴らすと、トリコロールのスタンドは大歓声をあげる。甲府での惨敗から僅かに数日のミッドウイークに駆けつけた私たちは、この目で勝利を確認する。2−1。得点差は僅差。
「こんなので誤摩化されないからな!!。」
岡田監督に張り上げる声。だが、顔は満面の笑みだ。誤摩化されないどころか、このまま騙されて信じ続けたい気持ちだ。

本来であればミッドウィークのアウエーには来ない面々もスタンドにいる。すでに、リーグの望みは風前の灯。となれば、このナビスコカップこそが、落としてはならないタイトルだ。最低でも2位抜けをするならば、ここを勝って、残りの3試合を1勝2敗で抜ければよい。

その期待を裏切るかのようなオートマチズムのない攻撃に、ハーフタイムは失望の声。だが、違う見方もある。
「いやいや、甲府と比べると、ぜんぜん良いぞ。なにしろ、前線からの守備がしっかりできているじゃないか。これならばなんとかなるって。逃げ切れば良いんだから、内容は問わないよ。」
「こういうときは守備が大切だよ。アトランタのときだって、実は城の守備的フォワァードが効いていたし、トルシエだって、アレックスと西澤とかつかって守備をおろそかにしたからやられちゃったんだ。日本サッカーは前線の守備が生命線。」
よくないときは、まずは守りからだ。

守りの要はゴールキーパーなのだが。

「もう、台無しかよ。」
「もう、やめちまえよ!」
クロスで入ったボールの弾道につられて不可思議な動きを見せた1番は、通常であればイージーであるはずのボールを、まんまとゴールに撃ち込まれる。
「此畜生!何が何でも取り返せよ!」
コールに再び熱を深く入れ込む。今日は喉がおかしくなりそうだ。喉痛防止のために、いつもより腹筋の負担を大きくして声を出す。

前半の意味が理解できない抗議から松田の動きが不自然になる。肩で風を切って歩く。審判に注文をつける。この大切な局面で、明らかに闘う相手を間違えている。だが、そんな松田がカウンターからドリブルで持ち込む。
「行け!松田!!」
「行って良いぞ!!」
明らかにドリブルのチャンス。ガスのディファンダー達はずるずると下がる。よく時代劇のクライマックスに見られる光景だ。
「撃て!撃て!」
「撃て!」
「撃って良い!!」
力のこもった叫び。腰を浮かせて、シュートを放つことを願う。

松田はシュートを放つ。だが、それは、スタンドからの叫びとは正反対の、滑らかで柔らかい、ゴールへ向かうボールへ愛情を込めたかのような曲線だ。
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ボールはゴールに向かって飛んでいる。既に土肥の頭を越えている。だが、そこで喜んでいいのかわからない。長い長い時間に感じる。迷いを解き放つのはネットが揺れる様を見たとき。一斉に飛び跳ねて絶叫する。今日のゴールの喜びを、何の気兼ねも無く、できるだけ大きな動きで表現してくれと言わんばかりに広く空いた座席の目一杯を使って、縦に横に動いて拳を握る。
美など必要ない、と思って望んだどん底状態でのカップ戦に、これほどまでに美しいゴールが潜んでいるとは誰も予想できなかった。

元読売にレンタルのハユマ、元川崎の塩川。ガスにとっては気に食わない両サイドが持ち味を発揮し始めるのは、松田のゴールのあとだ。前線は吉田が守備に奮闘し、なんとか攻撃をしている、という状態だったが、美のパワーがトリコロールの能力を蘇らせる。サイドは必ず数的優位。コンビネーションでスペースにボールを流し込み突破を繰り返す。サッカーなんて単純なものだ。いつも一対一での突破を余儀なくされるから突破ができないのだ。数的優位さえできれば、同じ選手でもパフォーマンスは全く違う。

ガスの出来は、かなりよかったのだという。

低迷シーズンのガスサポーターに追い討ちをかけるのはトリコロールではなく砂川さんだった。判定がわかりやすく細かいファールにうるさい、鹿島国が最も嫌うタイプの砂川さんは、比較的サポーターから批判を受けない審判だ。ただし、最近は第4の審判に収まることが多く、トリコロールの試合で主審を勤めるのは久しぶり。2つのファールスローと2つの転倒。試合勘が鈍ったのか安定しない。さらに、ガスのペナルティーエリアないでPKの見逃し。これにはスタンドは騒然となり、ガスのゴール裏は激しくブーイング。明らかに後ろから手をかけてのしかかっている。あのプレーがPKでないのであれば、きっとシミュレーションだ。だが、どちらの選手にもカードが出なければホイッスルも鳴らない。つまりはファールであろうがファールでなかろうが、いずれにしても誤審というわけだ。だが、サッカーに真実などない。事実が残り試合は止まらない。

「行け!ドリブル!」
「持っていけ!!」
こういうときはドリブルだ。ガスはファールで止めにくる。そして、再び砂川さんに抗議するはずだ。すると塩川がドリブル突破で派手に倒れる。
「ハッハッ〜。」
あまりの飛びっぷりに腹を抱えて笑う。見事だ。
さらに、再び塩川がゴールに向かって突破。またしても吹っ飛ぶ。
「面白すぎだ!」
「確かにファールなんだけど飛び過ぎ。」
「っていうか、塩川、飛ばずに頑張ればキーパーと一対一になって決めてヒーローだったぞ。」
「ナイスジャッジだ!」
「いいぞ塩川!!」

試合を終え京王線に乗る。
「今日は勝者だらけの電車だぞ。」
笑顔で仲間達と試合を振り返る。次は前半の山場の広島戦だ。彼らはリーグ未勝利。そして、その次は絶不調の名古屋。ゴールデンウイークは今シーズンのリーグの行く末を決める連戦となる。最低でも勝ち点4を獲らなければ上位に食い込む望みは薄くなる。勝ち点2以下であれば残留争いへの本格参入の危機だ。

松田の美が与えたチームの活力。それを活かせるか、監督、選手、関係者、サポーター、全てが役割を全うして結果を得よう。


今日のポイント

●守備に奮闘する吉田。あとはゴールだ。
●これでも良い出来だったらしいガスは重症。
 ルーカスがゲーム創って誰が点を獲るのだろう。
●美しいのは2点目だけでなく1点目も。ゴールを狙っていたハユマ。
●両サイドで数的優位を作る運動量が流れを決めた。
●ゴールが無かったら暴れん坊のまま終わっていたかもしれない松田。





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