malicia witness 2階の目線2006
J1リーグ 06-07シーズン

4月29日 サンフレッチェ広島  日産スタジアム

ミッドウイークに行なわれた味の素スタジアムのナビスコカップ。電光掲示板が示すトリコロールの先発メンバーは、このように書かれていた。
「大島」
「吉田」
縦に読めば、それは「大吉」だった。

久保には一発があるらしい。だが無理をしないのも久保。サイドに流れるのも久保。がっちり守る広島の密集守備を避け、安全プレーで打開を図る。それは上手く行かない。久保は、その象徴的なプレーに終始した。無理を誰もしなければ難しい局面は起きない。だが、何も起きない。久保のプレーに象徴されるが、いわゆるトリコロールならではの持ち味「相手合わせ」だ。


無理も無い面もある。河合に攻撃のアクセントになれと言うのは無理な要求。役割が違う。コンディションの悪いマグロンに、動けと言うのも無理な要求。だから両サイドは孤立。サイドのアタッカーに、ただ人数の多い広島守備陣に一人で突っ込んで行けと言うのも困難な注文だ。狩野が全盛期の奥ほどの力を見せる、というのは無理な期待。選手達も、何をどうすればいいのか分からない様子。そんなことはおかまいなしに、2階席は、いつも以上の手拍子で応援する。きっと、雨で、1階席後部や2階席前部の家族客やカップル達が2階に移動してきたせいだ。いつもよりも明るい雰囲気で手拍子にも手慣れた感じがある。観戦経験の少ない人たちは、今日は、きっとゴール裏2階にいるのだろう。屋根に音声が反響する。そんなムードが続きながらも、前半の望みは、吉田の2つのシュートくらいだ。

決まったカタチを持つ男。

残り時間は5分。
「ここを締めていけよ!」
「締めていけよ!」
「締めていけよって言ってんじゃんかよぉ!!」
それは悲しい叫び。下田からのボールをトラップで処理し、一気にドリブルでゴールに向かう。得意の体勢から放ったシュートはゴールの中に転がり込む。あっという間に、見事に先制される。当然のこと、オフサイドを主張し、手を上げることは、単に追いかける走りの速度を遅くするだけの効果しかない。
「あ〜、やられた。」
「あれしか広島は無いのに。」
とはいっても、それは偶然に偶然が重なった出来事のように見えた。それほど美しいカウンターだったのだ。ところが、その直後にも、まったく同じプレーが出現する。同じ角度からはなったシュートを、今度は哲也が弾き出す。つまりは、あのゴールは、自分の得意のカタチを自ら創り出したということなのだ。恐るべし佐藤寿人。

いつものように悪い前半を終え、後半に入る。

立ち上がりにつまずくと、あとは何も変わらない。ただ淡々と時を刻む。プレーで大きな拍手が生まれたのは、やっと、やっとハユマが縦にドリブルの緩急で突破をかけたとき。
「そう!それでいいんだよ!」

監督は、選手に「開き直り」を示したのだという。

久保、大島、マイクを3枚並べ放り込みの指示。それは70分台の出来事。後半の時間が進むについれてテンションが下がりつつあった手拍子は再び音量を上げる。あまりに不器用な攻撃だ。後ろからの放り込み。
「放り込むならサイドからだろ!」
口にしてみるものの、そのようなことは無理だ。中盤から後ろには選手が足りない。吉田がなんとか繋ぎ役をする。ハユマや山瀬弟がサイドからクロスを入れるためには、単独のドリブルで広島の守備陣をかわす必要があるのだ。しかし奪われれば大ピンチになるのは目に見えている。となれば、リスクを回避して後ろからでも高いボールを入れるしか方法はない。
「入れろ!」
「競れ!」
コールや歌の合間に出る声を短い。年間160試合観戦をする久保田さんというサッカーファンは、かつて、こう言った。
「サッカー観戦に必要な言葉は『行け!』と『バカ!』の2つだけだ。」
この状況は、それに近い。

頼みは久保とマイク。競り合いに力を感じられない久保は囮でしかない。

マイクのダイビングヘッドを掴む盛田。フォワードから転身したヘディングに優れた力を持つディフェンダーが、やってはならない反則を犯す。元関東大学サッカーリーグの大物は規格外の若者を止めることができない。
「ファールだ!!」
叫びを上げて岡田主審を見ると、すでにイエローカードが天に掲げられている。そして、再び広い視線でフィールドを眺めれば、松田がペナルティスポットに向かって歩を進めいてる。力強いフォームだ。拍手は、そのまま手拍子に繋がり、ゴールネットを揺らすことで誰もが両手を空に掲げ歓声とともに手拍子は終わる。

さぁ同点だ。しかし、ピンチはある。佐藤寿人がボールを持つと、逆サイドにウェズレイが走り込んで来るのが見える。
「ウェズレ!ウェズレイ!」
「フリーだ!」
「逆サイド!!!!」
クロスはドンピシャに見えたが、シュートはフィットせず難を逃れる。

しかし、その佐藤寿人を下げる広島。

「こんな弱虫チームと引き分けるな!」
「勝て!!」
勝てない広島は、明らかに引き分け狙い。中盤はまったく捨ててゴール前を固める。状況判断のよい松田のドリブルがスタンドを沸かせ、何度もクロスを入れる。

ハユマが右サイドでボールを受ける。そのとき、吉田はハユマよりも後ろにいた。

クロスが入り前線のマイクがヘッドで右へ。ゴール前をボールが横切る最も守りにくい状況を創り出す。そこに走り込んで来るのは吉田。ディファンダーの脚が出る。下田が飛び込んでくる。だが、そのようなことは目に入らないのか、勇気が上回るのか、吉田は頭でボールをゴールに押し込む。
久々に生まれたロスタイムの逆転。

ナビスコでの好ゲームのあとに、いつもリーグで失望する。その繰り返し。広島には勝った。ロスタイムで勝った。良い兆しだ。だが、内容は最低だ。なぜ、リーグになると内容が悪いのか。それは、単に、「ナビスコでのよかったことを継続しない」だけのこと。
私たちは、今日確認できた吉田やマイク、そして松田の意気込みと、ミッドウイークに兆しを見せた「中央やサイドで起点を創って、後ろの選手が追い抜きをかけて突破していく躍動感溢れるサッカー」、この2つを信じて12月までを過ごしていく。それは、やる気になればマルケス不在でもできるはず。これは闘いだ。
それは、その先、ずっと先、来シーズンまでも続く、長い長い闘いなのだ。


今日のポイント

●これぞディファンダーの攻撃参加。見事な状況判断の松田のドリブル。
●時間を稼ぎながら相手ゴールを脅かす山瀬弟。
●飛び出しの好判断が光った哲也。
●消極的すぎた塩川。


今日の査定

石井和裕

信念を曲げて「開き直り」が必要だったのは選手ではなく監督。その「開き直り」を気持ちだけでなく、文字取りの開き直り采配で示されるとは恐れ入った。大きな選手を70分台に3人並べて、何の工夫もなく後ろから縦へ放り込む。これが戦術と言えるのならば90分間続けるが良い。ハーフタイムに檄を飛ばしたことが新聞記事になっている。その激を前提に記事を組み立てれば、監督の熱い想いが勝利を呼び込んだことになる。だが、後半立ち上がりに劇的な変化をプレーから読み取った人など、あのスタジアムに存在したのか。「開き直り」。いつも本音を語らない記者会見での何気ない一言は、メンバーが揃わない今、選手を動かす指揮ができない指揮官の限界を露呈した。勝ちは勝ち。だが、この采配には価値はない。勝ったのだけれど、どうしてもすっきりしないんだよ。

吉田の勇気と積極性
1000
脅威のマイク
600
代表に戻してあげたいと思える松田の状況判断
500
接触プレーで強さを見せつけた松田
400
得意のカタチを持つFWの怖さを見せた佐藤寿人
300
前への強さがあった哲也
200
どうしても認められない岡田采配
-2000
1000

今野隆之

内容は悪い。采配については何も言いたくない。それでも、誰もが躊躇するPKを蹴った松田は偉かった。半ばヤケ気味の交替に応えたマイクと、あの局面で頭から飛び込んだ吉田は美しかった。選手の勝利。だから選手を応援し続ける。

ロングボール一発で寿人にやられた
-200
キーパーは哲也の方向で
300
松田を代表に入れろ
1000
頭を極めろ、殊勲のマイク
1000
もう封印だなんて言いません、ありがとう吉田
1000
ニックネームどおり「塩じい」だった塩川の出来
-200
レギュラー奪回を目指せ那須
500
ああ久々の祝勝会
priceless
3400

stan

久々のリーグでの勝利。相手のエースにやられるのは今年の仕様。今は勝ち点3さえ取れれば言う事はない。

屋根があるのは良い
100
勝ててないのが頷ける広島
200
相手に合わせちゃった前半
-200
その相手に縦1本でやられるとは
-300
放り込む気満々の選手交代
-500
広島戦でまたPKをくれた岡田主審
100
サポーターの心を鷲掴みの松田
500
佐藤寿人を下げてくれた
100
残った甲斐があったマイク
300
吉田、魂のゴール
1000
堪えきれない広島
300
勝ち点3
2000
3600






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