malicia witness 2階の目線2006
Jリーグ ヤマザキナビスコカップ 06-07シーズン

9月20日 鹿島国  日産スタジアム

終盤に見せた執念は、人の心を動かしたかもしれない。だが、それは、見せる必要のない執念だった。カップ戦においては、勝ち負け以外は、次に繋がるものはない。そして、勝ち負けの結果からの逆算で、その試合内容は評価される。そして、リーグチャンピオンであろうと、カップウィナーであろうと、タイトルを獲るにはクラブの総合力が必要とされる。

今の私達には、それにふさわしい力がない。

前半の上野のミドルシュートが決まり、ホームゲームらしい闘い方が繰り広げられる。久保不在、坂田不在で、前線にぎこちなさを感じさせるながらも、水沼監督の意図するサッカーは、選手達に浸透しつつある。さらには、水沼監督の力が、日本サッカー界にとって、どれほどの影響力を持つものか、それが、前半のいくつかのシーンで明らかになる。

「もう止めるのかよ!」
「早っ!!」
驚きの声が飛ぶ。

「とりあえず後半戦があるわけだから、鹿島はフェアじゃないと言って若手が多い相手に精神的プレッシャーを掛けておくのは当たり前。水沼はいい仕事してるって。」
とmixiの日記に「監督の仕事」というタイトルで書き記したサポーターがいる。「なるほど」と思わせる、短くて深い文章だ。
この水沼監督の仕事に敏感に反応したのは主審だった。接触プレーで選手が倒れて立ち上がらないと、すぐにプレーを止める。問題のなさそうなプレーでも止めるのだ。
「これさぁ、鹿島はやりにくいよ、きっと。下手なファールすれば、どんな判定されるかわからないし、時間稼ぎで倒れようものなら、すぐに担架で運び出されちゃうだろ。」
「いやぁ効いてるんだなぁ、水沼。」
「あの記者会見は、凄いなぁ。」
「やっぱ、今でも、サッカー界では木村・水沼は別格なんだよ。」
小さなファールもできず、若手が多く駆け引きに乏しい鹿島は、持ち前の厳しい中盤守備ができず、トリコロールの速攻を許す。逆に、トリコロールの守備も中盤で鹿島のパスの出所を押さえることができず、老かいな司令塔が鹿島にいれば、前半の展開は大きく違っていたはずだ。

「馬鹿やろう!柳沢じゃなかったら失点してたじゃないか!!!」
絶好の決定機を柳沢がほにゃらさわらしく外し、前半は無失点。アウエーゴールの失点に気を使いながら、更に1点を獲り、焦る鹿島の逆を突いてカウンターから3点目を獲るというゲームプランは、ハーフタイムに誰もが描いた。前半に先制したということは、そういう試合をするのがベストということと、ほぼ等しい意味がある。

逆に鹿島は選手交代を巧みに使いながら、ときが来るのを待つ。

迫力のないパス回しに終始して時間が経過していく後半の立ち上がり。ハユマのドリブルに代表されるように、攻撃に先手を打つことができず、相手の体勢が整ったところで真正面からの勝負となる。中盤は上野が1人で支える。

70分から75分にかけて、サッカーでは疲れが最も出る時間帯とされている。

ただし、今日はカップ戦の準決勝だ。まだリードもできていない。この大切なしいは、これまで重ねて来たリーグ戦(つまりは調整試合であり消化試合)とは意味が全く違うのだ。だが、選手の動きが軽率になる。身体を入れるべきところを軽く足を伸ばすだけの守備で誤摩化そうとする。簡単に捌こうとしてかっさらわれる。パス出しが遅れて囲まれる。全員が足を止めてシュートを眺める。
「ここをしっかりやらないとダメだ!!」
「頑張れ!勝負所だぞ!!」
「小手先でやってもダメだぞ!がっちり行け!」
危険を察知(というか、どう見ても失点は時間の問題の雰囲気だった)し檄を飛ばす。別に、その声が選手に直接届くわけではない。だが、その危機感がスタジアム全体に伝播して、危険なムードを変える空気ができればいいのだ。その時、スタンドを支配していたのは、気の緩んだフィールド上のプレーと、スタンドで緩やかに延々と続く応援歌(チャント)だった。

そのとき、ただ叫ぶだけでなく、2階席からゴール裏の歌を切る覚悟でコールを始めれば良かった、と、今も後悔している。

失点は突然の出来事ではない。集中力を急に欠いたのでも、運が悪かったのでも、ほにゃらさわが抜群の動きをしたのでもない。必然だった。スタジアムの全ての人たちが、全力で闘うことを怠った結果でしかない。その後の執念は、おまけでしかなかった。

試合後に選手がスタンドの前に並んで挨拶をするときに、身体が動かず座り込んだまま黙って見つめてしまう。失ったものが大きすぎる敗戦だ。天皇杯までの長すぎる消化試合が残される。今日の大切な試合を大切に扱えない今のトリコロールが、長い消化試合を、天皇杯のための調整試合として大切に扱えるのか。さらにはスタンドのサポーターのために大切に扱えるのか。

フロント陣は、この大切な試合の前に、重大な(といっても普通の企業であれば当たり前の)決断をすることができなかった。その罪は日に日に増している。さらには、「1−0で延長戦に入るかもしれない」という想いで終盤にスタンドに駆けつけたサポーターはスタジアムに入場することができなかった。試合の途中で当日券売り場を閉鎖したからだ。

私達は勝者にふさわしくなかった。名門と言われ、過去17度のビッグタイトルを獲得したトリコロールが「勝者にふさわしくない」というのが、はたして妥当なことなのか。私は悲しむ。希望は持っている。しかし、このクラブの抱える重い症状が、この先何年で回復するのか、その創造力が働かないのだ。


今日のポイント

●マークを外す動きもなく、
 ロングボールのターゲットになりえなかったマイク。
●奥の動きが落ちて、さらにピンチを広げた。
●積極性に欠けた狩野。もう一度、勉強が必要。
●攻めに守りに来季も上野頼みなのだろうか。






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