malicia witness 2階の目線2006
J1リーグ 06-07シーズン

10月21日 鹿島国代表  日産スタジアム

鹿島との試合が特別で、ただのJリーグの消化試合と異なる理由は、その緊張感にある。過去に刻まれた苦い思い出は、どれも腹立たしく、その反面、甘い香りを秘めている。これに匹敵するのは、数々のワールドカップ予選やアジアの頂点を目指すカップ戦くらいしか無い。五輪予選も、鹿島国との国際試合と比べれば、魅力は遠く及ばない。

「お前ら、カップ戦に絞るからってったって、もうちょっと来いよ。」
いつになく赤の濃度が薄いアウエー側のスタンド。彼らは11月のナビスコカップに照準を絞っている。前節でもナビスコカップ決勝戦に出場できない内田を外し、カップ戦の練習試合のごとく闘っている。

大きく布陣を変えてくるのでは、という観測は外れ、ここ数試合の水沼采配も、極めてオーソドックスなものだ。控え選手の入替があったのと、1番がホームゲームホスト、と、あらかじめ発表されていることくらい。ただし、それでも、「キモチ」を重視する水沼らしく、小さな配慮で選手のモチベーションを高めている。

一気に主導権を獲る。

ドゥトラの前に立ってクロスのコースを消したつもりの名良橋だが、スタンドから見れば、それはただの棒立ちに過ぎない。もちろんドゥトラにも、それは見えていて、簡単にクロスを入れる。信じられない緩慢な守備から飛び出したクロスを予想しているのは坂田だけ。鹿島国の代表選手達は、まさか、ここにクロスがくるとは思っていなかったのだろう。坂田を押さえることができない。あっという間に先制ゴール。

一気に総立ちで叫ぶスタンド。私達の後ろには上海から観戦に来ている男性がいた。試合前に紹介されたとき、日の丸を手に、私は答えた。
「Kashima is not Japan !!」
何の挨拶も無く、唐突な「鹿島は外国」に爆笑した彼は、このゴールと緩慢な守備を馬鹿にする喜びの表情や言葉で、その意味を実感しただろうか。さらには、山瀬が左足でしっかりコースを狙って流し込んだゴールで、またもやスタンドは揺れることになる。このゲームは、いつもの鹿島戦とは違った流れで始まる。

トリコロールのパスが小気味よく繋がる。

「よし!」
「いいぞ!!」
パスが繋がるたびに飛び出す言葉は、徐々に、その質を変えていく。
「そこかよ!」
「マジかよ!」
「えっ?」
「ゆるっ!」
「緩い!」
「ユルユルだよ鹿島!!」
目の前で展開されるパスのコンビネーションは素晴らしいが、中盤のプレッシャーが少なすぎる。これは鹿島国の代表シームなのか。これでは、勝利への執着心が無い韓国代表と試合をしているようなものだ。

とどめを刺せないトリコロール。

どこか優しさとお人好しの感があるのはトリコロールの伝統だ。鹿島国代表チームに情けをかける。2点差になった後、しばらくするとペースダウン。攻撃の手を緩める。
「早くトドメ刺せよ!」
「早く楽にしてやってくれよ!鹿島を!!」
「早く楽にしてくれよ!オレを!!」

厳しい局面も無く激しいぶつかり合いも無い。試合は淡々と進んでいく。タッチライン際でドゥトラが倒される際も、起きるのは怒りではなく笑い。そして、壁には深井が立つ。これはコメディーだ。
「壁、近いよ!!」
「いくら深井だからって、でも近いぞ!」
「小さいけど近すぎ!」
レフリーの吉田さんが深井に離れるように促す。
「今度は遠すぎるだろ。」
「小さいから、すっげぇ向こうにいるみたいに見えるぞ。」
「いや、遠近法の錯覚で、ほんとはそんなに遠くないって。」
「いや、遠いだろ。」
すると、山瀬は、わざと深井の頭の上を超えるボールを蹴り込んできた。

「これは野沢とミドルを押さえておけば、なんとかなっちゃうな。」
「それにしても名良橋は酷いな。」
「狙っていけよ2番!」
「2番のところから行け!」
「鹿島も、なんで名良橋のところから攻めるかな。全然ダメなんだから左から行けばいいじゃねえか。」
目の前でプレーする、右サイドの名良橋は、攻めも守りも、あまりに動きが悪く、かつての鋭いプレーの面影すらない。ただ印象に残るのは、栗のような頭だけだった。
「旬だからな、栗。」

ところが、後半になると、謎が解ける。
「名良橋酷いと思ったけど、こっちはもっと酷いじゃないか。」
「すげぇなぁ、この18番。こんなのに外国人枠を1個使ってるのかよ。」
「鹿島もレベルが下がったなぁ。」
「ただパスを捌くだけのサイドバックなんて意味ないもんな。」
「おっ、来た、来たぞ。」
18番ファビオ・サントスが初めてサイドをドリブル突破する。ペナルティエリアに侵入するがズルッと倒れる。
「わっかりやすいシミュレーションだったなぁ。」

直後に深井の特徴を活かしたラインの背後へのスルーパス。この1本は決定的だったが哲也がかろうじてセーブする。危険な60分前後、この時間を無失点に切り抜けたのは大きい。
久保は交代。マルケスが入る。フィールド外へ出ることを渋る久保を18番が押し出す。
「あいつ、今日、初めて役に立ったぞ。」

ゴール裏に覇気がない。
「『アーーーーーーーーーーーーーーレックス』って『ア』が長過ぎて、次に何が出てくるか心配になるよ。」
「大平首相かよ!」
「アーレックス、ウーレックス。」

鹿島国代表チームにとって、これは練習試合でしかないのだろう。

田代とコウロキ、さらには野沢を絡めたコンビネーションでチャンスをつかむが、その攻勢を長く続けない。ほにゃらさわを投入し、ディフェンスラインいっぱいに張らせる。岩政を加えて5人がトップに並んでいる。そこに、はやめにボールを入れてくる。美しさも芸も無い試合運びだが、これは練習にはなるだろう。ナビスコカップ決勝戦でジェフに先制されるのは織り込み済みというわけだ。終盤に一瞬の隙をつくり出すことにおいては数々の実績があるトリコロールだが、那須を中心にロングボールを跳ね返す。それでは不十分なのだが。
「パスの出しどころを押さえなきゃだめだ!」
「コースを切れって!」
「入れさせるな!」
いつもの鹿島戦とは違う。しかし緊迫感が蘇ってくる。跳ね返すボールを繋げない。鹿島国代表チームはなりふり構わない攻めを続けているため、カウンターは当て放題のはずなのだが、トリコロールはボールをゴール前にうまく運べない。

ハユマに変えて吉田。来るべき天皇杯という本番ゲームに向けて、選手の競争を促す水沼からのメッセージ。けっして、今日、機能したとは言えないが、本番までの時間を無駄にすることはできない。ここでカウンターから1点を獲ることができれば、この試合の後味は爽快なものになっていたに違いない。

繰り返し攻撃を跳ね返し、時間の経過を待つ。3人の交代選手を投入し総力で同点を狙ってくる(淡白だが)鹿島国代表チームに、新たに4番目の選手が加わる。それはバックスタンド側の長身のボールボーイ。とにかく、ボールを入れるタイミングが早い。
「早い!」
「判ってないなぁ。」
ただ感想のごとく言葉を吐いていたスタンドは、この試合、初めて怒りに包まれる。
「早すぎるだろ!」
「いい加減にしろ!!」
「てめぇ鹿島の血が混じってるのか!!!」
さすがに4連発でボールを早く入れられると、呆れの境地に入る。
「おーまえ椀子そばか!!!早すぎて、ふたできねぇじゃねぇか!!!」

予想外の敵の襲来を受けても、トリコロールは守り切る。大差がつきそうな立ち上がりからは予想外の2−1の僅差。場内アナウンスの「ナビスコカップの雪辱」という言葉に苦笑いする。

「なんか鹿島っぽくなかったよね。」
「練習試合なら練習試合でもいいけどさぁ、せめて、もうちょっと悪いことしてくれないと。」
単純に面白いサッカーがみたければ、欧州のサッカーを見ればいい。ただ、格好を付けたければ、毎試合、日本代表のゴール裏に行けばいい。Jリーグの魅力は別のところにある。それは、仲間との共感や結束、喜びや悲しみ、悪の駆逐など、もっと人間的な感情に訴える部分だ。Jリーグにとって大切なのは、鹿島アントラーズの10個目のタイトルではない。鹿島国代表チームの酷評される汚さ、激しさ、そして日本人には理解しがたい文化的な違和感を味わうことだ。Jリーグに感情に訴える部分を加えるエッセンス。
それがなければ、Jリーグの魅力は半減してしまう。私達はたぶん、ほんのちょとだけ、鹿島国文化を愛している。


今日のポイント

●豪快な柔道技でマルケスを倒して1本をとった名良橋。
●解説の木村和司も笑った河合の一撃二殺スライディング。
●途中からは手を挙げてもパスが来なくなった18番。
●連携がよく安定していたスリーバック。
●ほとぼりが冷めたと思って「SPIRIT OF ZICO」の横断幕を出した鹿島。
「SPIRIT 」は「SPIT」の間違え。


今日の査定
石井和裕

勝てて良かった。でも、あの鹿島にカウンターでだめ押ししなければダメだ。

凄すぎた名良橋
500
もっと凄すぎた18番
100
フェーアーにボールを戻してきた鹿島
100
河合が合気道のように2人を蹴散らした  
600
美しい軌道の山瀬ゴール
600
安心してみられる哲也
200
那須の寄せ
300
前から守れるようになった中沢
200
2600

stan

モチベーションの差。ナビスコ決勝を控えた相手はナビスコ準決勝とは異なり抜け殻のようだった。前節の、準決勝の悔しい思いが勝利へと導いた。相手がいくら緩くとも、リーグで2勝した事は大きな意味を持つ。

過ごし易い気候
100
すっかり少なくなった相手サポ
-100
4バックなのにサイドが緩い相手
100
ドゥトラが生き生きして見えた
300
坂田ドンピシャヘッド
500
ぼんやりしてる相手CB
100
ちょっと戻ってきた久保
200
山瀬のコントロールショット
500
ゴチャゴチャしてたらやられた
-200
深井は良いFW
100
チョキちゃん
200
積極的だった上野
200
2点獲れば勝てる守備
500
よく防いでた哲也
300
マルケス復帰
200
吉田主審
200
鹿島戦勝利
1000
4200

今野隆之

ナビスコ決勝を控えて心ここにあらずの鹿島はかつてないほどひどすぎた。しかし、何より普通の小粒なチームになったのが納得できない。鹿島といえば汚いプレーの連発だろう。それでこその悪役だろう。こんな鹿島は鹿島ではない。そんな鹿島に終盤は押し込まれたわけだが、2点を奪って逃げ切ったことは評価したい。

いきなり坂田のヘッド
1000
落ち着いて流し込む功治にしびれた
1000
冗談のようにプレッシャーがない鹿島 
-200
高熱を押して出場の哲也に感謝
700
最近よく前線に顔を出す上野
500
試運転はまずまずのマルケス
500
終盤すっかり引いてしまう
-200
それでも何とか逃げ切った
500
直球すぎるチョキちゃん
300
4100








鹿島国内在住ながら、地元では密かにレジスタンス活動を行なっているレジスタンスカップルが結婚。アフター鹿島パーティを桜木町ワシントンホテルで開催した。


茨城県内で開催した披露宴では「アウーエーで暖かいホームを築いてください」という祝電披露が行なわれた。さらには2人のラブラブ写真に交えてマリーシアマフラーを掛けられたジーコ像前のマリーシア集合写真がプロジェクターで大映しになり、招かれた多数の来賓が凍ったという。


ドレスコードはジャケットとマフラー着用。


レジスタンス妻(!)レディ恵里香。


トリコロール仮面が帰ってきた。


声を揃えて「鹿島メルダ!」こんなに笑顔の写真が撮れました。
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