malicia witness 2階の目線2006 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
J1リーグ 06-07シーズン 11月26日 大分トリニータ 日産スタジアム 2006年11月28日追記 クラブ発表 言葉足らずな部分があったことお詫び申し上げます。 (誤)※試合によってはメインスタンド以外は1階席のみの使用となる場合がございます。 ↓ (正)※試合によってはメインスタンド及びホーム側の自由席以外は1階席のみの使用となる場合がございます。 当初、DMでは「ビジター席の2階開閉」のみが記載されていた(か、これも言葉足らずで、じつはホーム側の2階開閉も意図した表記だったのかは不明)、オフィシャルサイトでは「アクセス」の欄に表記され「席割り」の欄には表記されていない。特にオフィシャルサイトは28日のクラブ発表以降も表記位置が修正されていない。なお11月28日午前中時点では、あるサポーターの問い合わせに対して、クラブは「ホーム側2階も大半のカードはクローズとなる」旨の説明をしていた。しかし、後に「説明者の勘違い」という謝罪がされている。 大分の下川がキャッチするところに飛び込んで行った松田。タイミングが遅く、明らかにファール。そこに、大分の選手が入ってくる。何か言われたのか触れたのか、なぜか松田がエキサイトしている。 「下がれ松田!!」 「落ち着け!!」 当然のこと、松田には注意。これで、試合再開かと思われたが、松田は、さらに奥谷主審に何事か声をかけながら大きな拍手を繰り返す。 「まずい!」 「やめろ!」 こういうときはスタンドの声など無力だ。誰か選手が身を挺してでも松田を止めてほしいのだが、止めようとする者はいない。これも当たり前のこと、2枚目のイエローカードが提示される。なおも、あれる松田は、芝生の上で腕を振り、キャプテンマークが宙を舞い、悲しくフィールドに落ちた。 何が彼をエキサイトさせたのか。それはわからない。 マルケスと久保が入り、仕掛けができるようになり、田中祐介も積極的に突破を狙う。松田は前に張り付いている。 「これは、いいのかなぁ。」 「まだ、早いだろ。」 「そんなことをして勝つよりも、きちんと崩していった方がいいと思うけど。」 「でも、田中を入れて、クロスを放り込んでいくんじゃないか。」 プレーが切れると、左サイド、ちょうどメインスタンド側のトップに張り付いている松田に、水沼が声をかけた。すると、松田はディフェンスラインに戻って行ったんだ。 「なんだ、やっぱり、松田が勝手に前に張り付いていただけみたいだった。」 それほど悪い試合ではなかった。たしかに、左の中西は、ベテランらしくないミスが多かったし、攻撃に絡むことも少なかった。右の栗原は、ガス戦よりも、かなり4バックの右らしきポジションがとれるようになって進歩を見せたが、まだまだの感は歪めない。上野は、前や横にボールを運べないし、ボールの無いところでの動きが少ないため、ディフェンスラインは効果的なパスの出しどころを見つけられない、これも問題だ。だが、それほど悪いわけではなかった。山瀬は低い位置からも前へ出ようと奮闘したし、中盤の守備も厳しく対処した。狩野は、前節の出来の悪さを忘れてしまうくらいに、意欲的に仕掛ける姿勢を見せた。大島や坂田もチャンスを作り出したし、途中出場の久保は、得意のプレー(ただしゴール前ではない)を繰り出してスタンドを沸かせた。同点にすることは、困難とまでは思えない試合だった。 トリコロールのプレーは、大分の、鍛えられた、そして抜け目も無くなったプレーと比べれば、たしかに物足りなかったかもしれない。逆に、大分の、コーナーに持ち込むのではなくボールを回す時間稼ぎには溜息が漏れた。コーナーに持ち込むと見せかけてゴール前を強襲しようとするプレーには驚かされた。 それでも、日に日に水沼は、このチームに必要なプレーや闘志を蘇らせている。 「今日は、山瀬も狩野も、ちゃんとプレッシャーかけてるよ。凄くいい。ただ、守備、頑張り過ぎちゃって、攻めのときに必要なところに出て行けてない。」 後半には、ハユマの突破に拍手が起きる。惜しいシュートもあって、スタンドは何度も沸く。ただ、今日のトリコロールは、トラップミスが多すぎた。簡単に止めるべきボールが、少し浮いてしまったり、足下に入り過ぎてしまったり。僅かなミスで、ほんの数分の一秒をロスするだけでも、相手は守備陣形を整えてしまうし、ディフェンダーが猛然と距離を詰めてくる。その辺りに抜け目が無いのが大分や千葉や東京だ。 大量の招待券で埋まった2階席は、松田の退場を見届けると、少しずつ、その密度を低下させ、試合終了の頃には、すでに3割から4割が姿を消していた。それでも残った、トリコロールに愛着を持つ仲間達は、整列する選手を眺めた。なかなか拍手は起きず、ブーイングも起きず、なにか、松田の退場で幕を閉じた今年最後のホームゲーム(天皇杯の長崎も毎年開催でホームのようなものだが)が、ろくでもなかった今季のリーグを象徴するかのようで、いや、嫌なシーンを走馬灯のように思い出させてしまうようで、ただ声を失い立ち尽くすよりほか無かった。 松田を除く選手達も、ばつの悪そうに整列し、場内アナウンスに後押しされて渋々と、挨拶を待つようだった。挨拶をするのは中沢。厳しい表情だ。 「まだ天皇杯があるので・・・。」 その声を聞いたとたんに、二階席は拍手に包まれる。 「そうだ!」 「まだ終わっていないぞ!!」 「よく言った!!」 中沢の心中は、残り1試合のリーグ戦と天皇杯に向いているようで、今日までのホームゲームの応援を感謝する挨拶をするような表情には見えなかった。それは、それで正しい。彼ら選手達は、まだ、何も終わったとは思っていないのだ。 とぼとぼと、頭を垂れた姿勢で松田がフィールドに戻ってくる。だが、他の選手達は、松田が列に戻ることを待たずに、簡単にスタンドに向けて手を挙げて、バックスタンドに歩を進める。松田はそれについて行くが、列に加わることができない。自ら加わることができなかったのか、他の選手達が、あえて松田が加わる前に動き出してしまうのかはわからない。だが、バックスタンドの前でも、松田が列に加わるよりも前に、選手達は手を挙げてゴール裏に向かい始める。2階席は松田に対して、ほとんど何も言葉を発しなかった。ゴール裏は、全ての選手達が去った後に、やって来た松田を迎え、「直樹」のコールを起こした。松田は、いつもよりも長く、深々とゴール裏に一礼した。 「マルケス!!!頼むぞ!」 何名かが大声で呼びかけるが、その行為が浮いてしまうような、なにかしらけた雰囲気。どうしても、目の前の今日の出来事を、みな消化し切れていないようだった。 こうして、私達のホームスタジアムでの、今季のホームゲームは終わった。このホームスタジアムで行なわれた数々の酷いゲーム、そして、本来はサッカーとは関係のないはずの馬鹿馬鹿しい出来事。一丸となって残留争いをした年よりも、ある意味、酷かった。 ●「ソシオ」命名(サポーターの抗議により撤回)。 ●10年後を見据えてという理由で開幕前の年間チケット大幅値上げ。 ●「大人が高校生料金で不正入場するかもしれないから」という理由でチームは年間チケットの高校生料金を廃止(後にサポーターの抗議により復活)。 ●「お客様は大切にしないと」という理由で浦和横断幕を規定以上に優先。 ● チケットの大量購入と引き換えに、テレビ番組とスタジアムで自民党のPRに加担。 クラブは、将来のことを真剣には考えず、目先の利益と思いつきを優先して手を打ち、いくつかは裏目に出た。観客数も減少した。来季はJ1に偽物の横浜が現れ、小さなパイを奪い合うことになる。クラブは来季を守りの年にするらしい。経費を削減して利益確保することを優先する方針が見受けられる。年間チケットがEdyになるのは、おそらく、本来であればユーザメリットではない。きっとEdyにすることでEdyにかかわる企業が費用を負担してくれるのだろう(Jリーグ開幕当初のマリノスクラブの会員証は全てニコスのクレジットカードだったので、カード発行や管理費用はクラブもリーグも重荷とならずニコスが負担していた、ことと同じだろう)(もし、私の理解が誤っているのであれば、クラブは誤りを指摘してほしい)。利益に直結しないサービスは切り捨てて、来年はもっと落ち込むかもしれない観客数で利益確保するための策を取り入れるはずだ。今日、衝撃的な言葉を聞いた。彼は、1992年から、ずっと一緒に応援してきた仲間だ。 「これじゃぁ、年チケ買う意味がなくなってくるよ。テレビよりも見えないんだったら、テレビを見た方がいいって考えちゃうだろ。」 年間チケットを買うのは、クラブへの忠誠心と惰性といってもいい。買う瞬間を楽しみに毎年を過ごす人は例外だ。そして、何年も買い続けると、その惰性にストップをかける理由がほしくなる人も現れる。何か理由があればやめてしまう。クラブは、その理由を昨年は大幅値上げを持って提供した。そしても、今年も。 もう、予想している読者も多いとは思うが、おそらく「二階の目線」は、今年で打ち切りになる。残念だが、来年も、同じような二階からのレポートを書き記すことは困難だ。 年チケホルダーに送付されたDMにも、年チケホルダーが頻繁にアクセするオフィシャルサイトにも無かった「来年は二階を使用しない試合がある」という、実質的には「二階閉鎖」が、今日、配布された印刷物には小さく明記されていた。(当初DMでは「ビジター席の2階開閉」のみが記載されていた(か、これも言葉足らずで、じつはホーム側の2階開閉も意図した表記だったのかは不明)、webでは「アクセス」の欄に表記され「席割り」の欄には表記されていなかった。)この決定が覆らなければ、来季は1階での応援となる。現在の1階バックスタンド自由席には、固定客がいる。そこに二階から大量に下りては、現在のコミュニティに土足で入り込むようなものだ。したがって、私達は、おそらく一階バックスタンドのアウエー側に行かざるを得なくなるだろう。 日産スタジアムはワールドカップの決勝戦が行なわれた素晴らしいスタジアムだ。だが、その反面、「トラックがありフィールドからの距離が遠い」「傾斜が緩くフィールドが見にくい」「屋根が小さく、1階席の半分は屋根が無い」といった問題もあり、多くのサッカーファンからは評判が良くない。そんなときに、「2階ならば上から見下ろせる角度だからフィールドが全部見えるよ」「2階席なら屋根があるから、雨の心配は全くいらないよ」と言って、友人を誘うことができた。このスタジアムには、良いところと悪いところがある。だが、クラブは、良いところを切り捨てたようだ。 メインスタンドの指定席は、前の座席から売れるらしい。買うのはマニアであったり、年に数試合も観戦しない人であったり、選手の顔を近くで見たい人であったりする。年間チケットで自由席に通う人たちは、必ずしも、前の席を好むわけではない。 そして、フットボールを生活の一部にしている世界の人々は、ただフットボールやプレーヤーを見に来ているわけでも、ただ歌いに行くわけでもない。毎週末、ここに来れば仲間と一緒にいられる安心感や、名前も知らないけれど、毎週近くの席にいて挨拶を交わす、小さな連帯感だったり・・・。それは、ホームスタジアムに、自分の過ごす場所がある、つまり家に自分の部屋があるような感覚だ。だから、年間チケットで自由席にやってくるサポーターの多くは、毎試合、ほぼ同じ位置の席に陣取る。近くにいる人も、また、いつも、ほぼ同じだ。 もし、来季は一階席だというのならば、一階席は、固定された「自分の部屋」であるべきだ。「自分の部屋」に、「今日は浦和の人が座ります」「今日は偽横浜の人が座ります」では気分が悪い。それもまた、年間チケットを買うことをやめる大きな理由になりうるのだ。でも、クラブが浦和や偽横浜のサポーター達を狭いゴール裏エリアに押し込める勇気は、きっとないだろう。 そもそも、そのような、年チケホルダーたちの日常をクラブがリサーチしているとは、到底、思えないが。 また会う日まで、二階席の仲間達。来年のホームゲームでは、いつもの席はなく、きっと違うどこかで会うでしょう。でも、それは、小さくエリアがまとまった地方のアウエースタジアムでだけで、なのかもしれない。 天皇杯を勝ち続ければ、この「二階の目線」は元旦まで継続できる。それが終われば、さよならだ。 今日のポイント ● 倒れた選手には厳しかった奥谷主審。 ● 哲也がシュートしてから試合終了にしてほしかった奥谷主審。 ● 素早いスローで起点になった哲也。 ● 一つもなかったセルフジャッジ。 ● 何枚カードを作らせるんだ。 今日の査定
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