malicia witness 2階の目線2008
J1リーグ ヤマザキナビスコカップ グループリーグ

3月20日 大分トリニータ  ニッパツ三ツ沢球技場

「どうだった?札幌、寒かった?」
「いやぁ、今日よりはマシだよ。」
お土産のじゃがポックルを味わいながら、札幌遠征の土産話に花が咲く。とはいっても寒い。Jリーグでも屈指の雨に打たれ弱いサポーター同士が、冷たい雨の下で相対する。
「しかし、掲示板が無くなったら、妙に抜けた感じになったなぁ。」
ホーム側のゴール裏にあった掲示板は撤去されアウエー側に。そしてカラー表示の高性能だ。しかし、住み慣れた三ツ沢とは違った違和感ある風景。なにかよそよそしさを感じさせる。
「昔の三ツ沢みたいな雰囲気だなぁ。」

昔と言うのはオシムがパルチザン・ベオグラードを率いて来日し、横山全日本と対戦した頃の三ツ沢だ。

その、少し抜けた感じのホーム側ゴール裏に90分のゲームを終えた選手たちがやってくる。充実の表情の松田はスタンドを見上げ、頭上で手を叩いている。しかし、バックスタンドの反応は、勝利の安堵とも喜びとも似つかわしくない、なんとも白けた空気を微かに漂わせている。それは、直前まで目の前で繰り広げられた勇気に欠け状況判断を誤り続けたプレーのせいだ。確かに勝った。だが、これでよかったのか。圧勝すべき試合を自らが難しくし雨中の激戦としたのではないか。しかも、あれほどまでに主審の松尾さんには偏ったジャッジでサポートをしてもらったというのに。

思い出してほしい。前半に裕介が左サイドでフリーキックを与えたシーン。裕介は「なんでファールなんだ」と不満のジェスチャーだったが、スタンドからは両手でユニフォームを掴む裕介の姿をしっかりと捉えていた。しかも、ペナルティエリアの中でも掴んでいた。PKと判定されても仕方ない愚劣なファールだった。そして、ペナルティエリアのすぐ外でウエズレイが倒れたシーンもかなり怪しい。さらにはアドバンテージで流したと思えたコンタクトも、何事もなかったようにプレーが切れてもお咎めなし。さすがに大分ベンチは大荒れだった。警告か百歩譲っても注意があると思ったことだろう。しかしノーファール。私たちは、かなりの幸運に恵まれていた。
「え〜ホントですか?」
「OKなの?まじOKなの?」
何度隣の席に確認をしたことか。

桑原監督の目指すサッカーの一端は見え始めている。そして、3連勝で勢いも出て来ている。そこで注目なのは7番と8番だ。
「早く点を獲らせてあげたいなぁ。」
と思ってしまうロニーは計算できそうだ。だが、ロペスはフィットしていない。前半は横パスのオンパレード。ところが後半は開始早々からスルーパスを2連発。
「きっと監督に言われたんじゃないか。そんな横パスばかりだったら替えるって。」
そう詮索してしまう程の豹変。いや、後半は無理な縦パスばかりが多く、逆にチャンスを潰すことも多かった。シュートはやっと枠に飛ぶようになったが、まだまだ活躍までに時間がかかりそうだ。浦和戦は浦和の中盤守備があまりに緩すぎたのでロペスが自由にプレーできたに過ぎない。この試合では持ち味を発揮する縦への突進もあったが、基本的には機能していない時間の方が圧倒的に長い。この状況から大きな進歩ないままに鹿島戦に突入するのか、別の手を考えるのか。おそらく鹿島はロペスを狙ってボールを奪いにくるだろう。桑原監督の判断に注目だ。
「ロペスとウエズレイがマッチアップするとラグビーみたいだな。」
「しかも、トンガ対フィジーって感じ。」
「ロペスってナンバーエイトって感じだよ。」
「スクラムの一番後ろ。」
「そして背番号8。」

ハユマには素晴らしいクロスがある。高精度のクロスを1試合に一度は見せる。しかし、それはゴールに結びつくことなく、そして一度きりの場合が多い。ゴールのシーンは見事だった。まさに狙いすましたシュート。ロニーのドリブルのお膳立てを、きっちりとゴールに結びつけてくれた。

ただ、それだけなのだ。シュートを撃つべきところでは撃たず、ワンタッチで突破できるところで立ち止まる。ロスタイムが5分くらいはあることが確実でありながら、カウンターのチャンスを無駄に時間稼ぎで浪費する。このスリッピーなグランド状態、上空を舞う強風、松尾さんの判定のアンバランスさ、それらが揃ったこの試合は、何かの拍子にうっかり失点をしてしまう危険性が高い。たとえ幸運な判定で大分がエースを失っているといっても、1点差では危険すぎる状況なのだ。しかも10分近くの時間が残されている。
「勝負しろ!」
「獲りに行け!1点差じゃダメだろ!!」
叫ぶものの届かない。前がかりになって守備が手薄な大分の最終ラインを突破することは容易なのだが、まったくチャレンジしない。そしてパスをカットされてピンチを招く。
「トドメ刺せば、自分たちも楽になるのに、なんで攻めないんだよ。」
「せめてシュートを撃てよ。」
その批判は、目の前の7番に集中する。

オシムはハユマの招集を「守備固め要員」と明言していた。今、トリコロールの布陣はスリーバック。右ウイングに高い守備能力はなくとも良い。後ろの3人は強力なのだ。
「いやぁ裕介いいよねぇ。このままだと五輪に持っていかれちゃうかもしれないよ。ヤバくないか。」
「いや、そもそも五輪が開催されるかどうかが、まだわからないから。」
「そっか。じゃ、まだ心配しなくて良いか。」
小宮山とのダブルウイングバックは強力だ。

試合開始直後に大分のポゼッションを許したのは中盤の守備のコンビネーションが壊れていたからだ。「日産プリンス」水沼宏太と長谷川の若いダブルボランチは前半途中までは、かなり苦労をしている様子だった。松田が最終ラインをぐっと前に出して大分にプレッシャーをかけようとするが、その前にいるボランチの動きが遅れるために、ボールを奪うまでには至らないシーンも見られた。しかし、松田が試合中に積極的にコミュニケーションをとって修正。徐々に粗は見えなくなっていく。ただ、若い。若さゆえの飛び込みで、スコーンとドリブルでかわされるシーンは怖い。これからの成長に期待しよう。

最後に、この試合の後味を更に悪くしたのは1番の状況判断の悪さだ。西川も前に出て来ていて大分のゴールはがら空きだった。だから、哲也はボールをキャッチしたら、素早く大分ゴールに向かって蹴れば良かったのだ。
「蹴れよ!!」
「がら空きだ!!」
だが、哲也は、なせかボールを蹴らずに抱きしめていた。そして試合が終了。なんとも苦い後味を残した。この試合は長いリーグ戦の1つではない。短期決戦の予選リーグだ。勝ち点が並んだ場合の決着は得失点差で付けられる。早く2点目を獲りに行くべき試合だったはずだ。それを選手たちは自覚していたのだろうか。

そのような不満はあるものの、なにはともあれリーグを含めて3連勝。次に苦手の大宮を撃破して、好チームとなっている鹿島との決戦に臨みたい。
「じゃあ明後日、大宮でね!」
駅で別れた仲間たちと再び会うまで、わすかに3日。


今日のポイント

●退場判定に大分ベンチは大荒れ。気持ちは分かる。
●危険な角度だった松田のタックル。
●攻守に大活躍だったつなぎ役の大島。
●ガラガラだった自由席。寒すぎた。










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