malicia witness 2階の目線2008
J1リーグ ヤマザキナビスコカップ グループリーグ

3月23日 大宮アルディージャ  NACK5スタジアム

久々に大宮サッカー場へやって来た。狭いバックスタンドも奇麗に整備され見違えるような姿になり、名残は微かにコーナーに設置されたサッカーシルエットのマークに残るくらい。緩い傾斜で手すりも段差もなく、ただコンクリート敷きだったゴール裏は急斜面の2階層に。2階席は椅子付きとなった。おそらく、ここに以前に来たのは1994年が最後。駒場を改装中で使えなかったレッズ戦だろう。たしかゴールキーパーはルルだった。駅から歩く道も忘れてしまった。鎌倉と似た雰囲気の氷川神社の参道から境内を通って行く、このルートは、外国人にとってはたまらないものだろう。たしか、オシムはパルチザンベオグラードを率いて横山全日本と、この大宮でも対戦をしている。

春にしては熱すぎる日差しを浴びてのキックオフ。立ち上がりから両チームともにミスが目立ち、ゴールがタッチを割る。ぴりっとしないサッカーが、結局90分間を通して展開されることになる。しかし、光明が見えてきた。ロニーは再三決定機を創りだした。ゴールまではあと一歩だ。

「まじ?」
「ラッキー!」
とにかく、前節に続いて、このナビスコカップはついている。
「え?ここで終わり?」
「蹴らないでいいの?」
「こりゃ大宮のサポーターは怒るだろう。」
前半最後のチャンスを、と思った大宮にコーナーキックを蹴る権利はなかった。蹴る前に主審の佐藤隆治さんが前半終了のホイッスルを吹いたからだ。大宮側のゴール裏からはブーイングと罵声が聞こえてくる。おそらく佐藤主審とトリコロールのコンタクトは初めて。昨年、J1に昇格をした30歳の若い主審で、JFAレフリーカレッジの一期生。いわば日本サッカー審判界のエリートと言える。ゲーム中は、見事なゲームコントロールをしてくれた。

スコアレスのドロー。鹿島戦を見据えてか、小宮山と大島を温存したこともあって、なかなか中盤の有効な組み立てのできない試合となった。いわゆる「特筆すべきことがない試合」。特に、左の清水が、4バックの場合の左ミッドフィールダーのようなプレーをしたために、左サイドはウイングの機能をする選手がおらず、結果、中盤のパス回しまでもが小さくなってしまった。さらには、坂田とロニーがサイドに流れることが多くなり、中央の枚数が少なくなる悪循環(ロペスはディファンスラインの裏に抜け出る動きをしないからだ)。これは清水が悪いのではなく、清水を起用した監督の問題。それでも、清水を途中交代させなかったのだから、きっと意図があってのことだろう。

縦へのチャレンジが、大分戦に続いて少ない試合。無駄な横パスにため息が漏れる。
「そのパス、無駄なんだよ!」
それを証拠に、シンプルに縦に繋いだり、ディフェンスラインの裏に走る選手に早いタイミングでボールが渡れば、決定機を創りだすことができているのだ。サイドにロニーが流れて中央が薄い、とはいっても、ロニーは見事なドリブル突破でゴール前まで持ち込み、一人で決定機を創りだす。しかし、ことごとく、大宮のゴールを守る江角に止められる。
「いやぁ、シュートを置きにいってるなぁ。」
「このキーパーは、ホント一対一に強いねぇ。」
この江角と言う男を檜舞台に上げてしまったのは、何を隠そうトリコロールだ。昨年の駒場での一戦で、これまでレギュラーだった荒谷が怪我をして途中出場したのが江角。その一戦で大当たりし、その後、すっかりレギュラーポジションを奪い取ってしまっている。
「えっマジ?荒谷って怪我治ってるんだ。」

後半は眠気を呼ぶような展開。哲也も大きなミスはなかった。大ピンチといえば、見送った山なりのシュートがポストとバーに当って、なぜか哲也の胸の中にすっぽりと入って来た。後ろを向いて見送らなければ背中に当たって失点だったはず。
「信じられない!」
「こんなの生まれて初めて見た!!」
神業のような偶然のプレーにスタンドがざわめく。

もうひとつの驚きのプレーは兵藤の「加速装置」。ゴール左に上がったロビングボールの処理をなぜか松田に任せようとして下がってしまう兵藤。一方の松田は兵藤が競り合ったこぼれ玉に備えてポジションを取っている。下がって来た兵藤と松田のポジションが重なってしまう。そのとき、松田が諸手で兵藤の背中をドンっと突き出し、兵藤はむち打ち症になりそうな勢いを付けて相手選手との距離を一挙に詰める。自らのダッシュ力を上回る「加速装置」のなせる技だ。全体的にそつなく守備重点でプレーをした印象の兵藤。まずまずの合格点だろうか。

「まぁ失ったものがあるわけじゃないから良いんじゃないか。」
「ロニーが決めてくれたらなぁ。」
「あとちょっとなんだよねー。」
「裕介は良かったね。」
「10分ずつ交代が遅い感じかなぁ。」
「ホーム全勝、アウエー引分けでOKだから。」
ぴりっとしない内容とはいえ、レギュラーメンバーを落としてのアウエードローだから、ちょっとした消化不良感が心に引っかかること以外に問題はない。帰宅して桑原監督のコメントを見て驚いた。完全に「お試しモード」だったようだ。やっぱりそうだったのか。


今日のポイント

●落ち着き払って守備を仕切る松田の存在感。
●シュートを大降り過ぎの坂田。軽く撃っても入るはず。
●貫禄がありすぎて恰幅の良いコーチに見えた、試合前のロペス。
●アウエーゴール裏は満席、ホーム側はガラガラ。
●素晴らしいスタジアム。急角度で見やすい。











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