| malicia witness 2階の目線2008 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 08-09シーズン 4月2日 FC東京 ニッパツ三ツ沢球技場 「俺らの10番」と「奴らの10番」。 その差は天と地ほどあった。かたやA代表の現役10番、そしてU23代表の元10番。 「10番対決は梶山の不戦敗だったな。」 「ぜんぜん闘ってないもの。」 「しかし、あの10番と13番で五輪に行こうと思ってたんだから恐ろしいね。」 「梶山の10番ってしっくりこないな。」 「去年の10番って誰だっけ?」 「えーと・・・・。」 「ワンチョペだ!」 「何もしない監督って素晴らしい。」 「いや、何もしないわけじゃないんだけどさ、去年の早野だったら、鹿島に負けただけでメンバーをいじったり、いろいろやっちゃったと思うんだよね。」 「松田のボランチも、確か、去年、三ツ沢でやったね。」 「あんときは、めっちゃくちゃだったけどな。今年は違うね。」 「左サイドの小宮山と裕介の併用もやったけどダメだった。」 「ちょっとやり方が違うだけで、こんなに違うんだね。」 とにかく、試合後は、誰もがご満悦。 「これからは、ずっと平日の夜はガス戦でいいよ。いつでも3−0で勝てるんだったら、みんな見に来るぜ。」 平日の19時。試合開始に間に合わないサポーターも多い。 スタンドに遅れて駆けつけて、まず仲間に聞くのは生の声だ。携帯速報の文字では結果だけしか伝わらない。 「ど、どうなの?ここまでの展開は。」 「ん?まぁ、失点の気配は全くないね。」 後半が始まる。 ガスは魅力的な攻撃サッカーを展開しているというのがもっぱらの噂だ。しかし失点が多いのは気がかり。ブルーノ・クワドロスの出遅れが主な原因と見られる。そのためディフェンダーが固定できない。今日の右ストッパーは佐原。昨年まではフロンターレに在籍をしていた茶髪。恵まれた跳躍力をもちながらファールで自滅するのが特徴。 「狙うは佐原だぞー!」 すぐに見せ場がやってくる。山なりのボールを争う大島と佐原。佐原は後ろから大島に手を回してジャンプをできないように押さえ込もうとする。厳密に言えば反則。しかし、信じられないことに、その反則の張本人の佐原が倒れるではないか。 「やった!」 「行け!!」 ボールは図ったように俺らの10番の足下に。早送りのような小刻みで高速のドリブルは止められず、ゴール前へ。シュート! 「やった!」 「すげぇ!!」 満員の三ツ沢球技場は熱狂。昼間のうっぷんを晴らす素晴らしいゴールだ。 勢いを増すトリコロール。しかし、そこに冷や水を指すような大ピンチ。今野からのゴールが裏へ抜けて平山が哲也と一対一に。ゴールかと思われた。しかし、なぜか平山はボールを手でコントロール。手を使わなくてもゴールできる可能性は高かったが、謎の反則行為だ。 「何やってんだか。」 「頭悪いなぁ。」 そこでストレートな一発。 「平山ばーか!」 普通であれば、そこまで辛辣な野次を飛ばすと注意をされるし、冷たい視線が集まるものだ。しかし、ここでは誰も批判しない。あまりに正解だったからだ。ハンドの判定に不満なガスのゴール裏は「糞レフリー」の大合唱。きっと、帰宅してビデオを見れば、真の「糞」が誰であるかを理解するだろう。 ここで気持ちを引き締めて、追加点を奪いにいくべき時間帯。そこでパスを譲ってピンチを招くのも、またハユマの特徴。ここでは失点には結びつかなかったが、次節で痛い目に合うことになる。 トリコロールの試合での定番は「ショートは止めろ!」の叫び声。 ショートコーナーとロングスローでは、てんでゴールを奪うことができないからだ。山瀬のコーナーを短く中沢に繋いだときに「止めろ!」と叫んだ。しかし、折り返されたクロスをニアのロペスがゴールに流し込む。 「マジですか!?」 「決まった!!」 「やった!!」 飛び跳ねて喜ぶ。 「ショートコーナーからのゴールを初めて見た!」 「ついにゴールした!」 「いや、初めてじゃないぞ。俺は見た記憶がある。」 「えっ?いつ?」 「1993年5月15日。」 「その時のゴールは?」 「エバートン。」 「それってJリーグで最初のうちのゴールじゃないか!?」 記録の裏付けはないが、ひょっとすると15年ぶりのゴールなのかもしれない。 「かっぽれ〜かっぽれ〜。」 かっぽれは江戸時代に発生した滑稽な踊り。寄席演芸の一つだ。ガスのゴール裏が0−2の厳しい状況の中で「かっぽれ〜かっぽれ〜」と歌い始めると、その場違いなフレーズが緊張感を損ないかける。 登録名は「かっぽれ」ではなく「カボレ」のようだ。カッポレはKリーグ得点王で実力がある選手のようだが、川口をベンチに下げてしまったために、ガスのサッカーは放り込みになってしまった。平山の運動量が少なすぎてパスコースがない。そして、中沢と松田の縦の関係が、ドリブルを断ち切る。 左は長友が窮屈そうにプレーしている。 怪我でプレーが途切れた時間。長友がポジションを中にとったまま、ライン際のスペースはがら空き。ハユマにバックスタンドから、控え目に声が飛ぶ。 「ハユマ、前だ!前!」 「ハユマ、そーっと前に行け。」 「気づかれないように、静かに前に行け。」 「おっ、長友が水を飲むぞ。」 「ハユマ、今度は中に入っとけ。」 長友はハユマにノーマークだったが、カポレが気が付いて長友に注意。 「バレたかぁ。」 「ここまで持ち味が出ない羽生も珍しい。」 勝ちは間違えない。あとは、このコンビネーションの悪い相手に、どのような勝ち方をするかが重要だ。 「こんなの潰しちまえよ!」 「まだまだ2点、3点獲れるぞ!!」 やや停滞が見えてくる時間帯に兵藤を投入。適切な処置だ。ガスも守備のてこ入れに浅利を起用。すかさず今野が肘撃ち。かつてのチームメイトの山瀬にキツいイッパツだ。 山瀬が絶好のチャンスを大島に譲り、そのパススピードが遅すぎてゴールを逃し、もう追加点はないかもしれないというムードも漂い始めたロスタイム突入前。左サイドを山瀬が個人技で突破。しかも、クルクルクルっと3回転。浅田真央ばりのトリプリアクセルからマイナスのクロス。 「坂田!当てるだけで良いのに。」 「なんで撃っちゃうんだよ。」 シュートは大きく枠を越えてゴール裏のスタンドへ。ますます、ムードは時間の浪費へ。しかし、次の攻撃で小宮山は塩田の逆を突いて角度のないところからゴールを狙う。毎試合、得意の小宮山ゾーンから右脚のシュートを放ったり、小宮山はすっかり昨年の絶好調を取り戻したようだ。 佐原のクリアミスを、大島、松田が繋いでマイナスボールを戻して山瀬が豪快に蹴り込む。見事なだめ押し。このゲームの価値を一段と高める3点目。直後に試合は終了。 傘が回り、歌が響く。山瀬に負けないくらいに松田にも賞賛が贈られる。インタビューを終えた山瀬を迎え入れる。「俺らの10番」だ。 帰ろうとすると、アウエースタンド側の電光掲示板でビデオが流れ始める。 「しまった、帰るとこだった。」 「三ツ沢でもダイジェストを見れるんだった。」 前回の三ツ沢ではダイジェストが流れる前に怒って帰ったんだった。
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