| malicia witness 2階の目線2009 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 09-10シーズン 4月18日 鹿島アントラーズ 鹿島国立競技場 鹿島は外国だ。かつては、暴力と常識はずれの独自文化が渦巻いていた。しかし、一人の紳士が指揮を執るようになると、国の景色は変わった。少なくともピッチ上の鹿島を卑下する者は、ほとんどいなくなった。今や、日本サッカーを牽引する存在となっている(外国だが)。 これほどまでに面白いスコアレスドローはいつ以来のことだろう。 大声援に後押しされたホームチームに押し込まれ、寸でのところが失点を免れるスリルの連続。なぜか両サイドが前がかりに来ない。トリコロールはラインを上げるべきか、このままで闘うべきか。スタンドの意見も割れるサスペンス。あっという間の90分間は、Jリーグの魅力と国際試合の迫力を兼ね合わせ、アウエーの醍醐味を感じさせてくれる。この国での試合には常にストーリーがつきまとう。そして、今日は「現時点での実力差」というファクターが加わり、魅力を倍加させている。 予想に反してトリコロールは好調な立ち上がりを得る。 チャンスを生み出すのは、この男、やはり前線よりも中盤の底が似合う兵藤。走ることの大切さを、これほどまでに実感させる選手は、トリコロールでは久々だ。文丈の指導の成果か。 「おっ。」 狩野の一瞬のひらめきがゴールを強襲する。息をのむ股抜きスルーパス。そこに走り込んでいくのは、本来であれば狩野の後ろのポジションのはずの狩野なのだ。 「あー!!」 「惜しい。」 飛び跳ねて地団駄。 「決まれば記憶に残るゴールだったのに。」 鹿島に攻めに積極性がない。 聞けばオリベイラ監督が両サイドの攻撃参加に慎重な指示を出していたようだ。しかし、それはトリコロールの両サイドを前がかりにしてスリーバックの横を狙うための罠。 「前から行けよ!」 「いや、ラインを上げすぎると裏を狙われる。このままで良いんだ。」 仲間の間でも意見が割れる。結局、トリコロールは前に行かなかったのか、前に行けなかったのか、選手の判断なのか監督の判断なのか、理由はインタビューを見ても明らかではない。ただ、前がかりにならなかったことが無失点に結びついたことだけは間違えない。 好調な立ち上がりに水を差したのは小椋のファール。序盤に警告をもらう。 「早すぎる。」 「あれはカードをもらうだろう。」 「う〜ん。」 ここから我慢の闘いが始まる。 鹿島は策を講じる。強い鹿島が手堅く巧妙な罠を仕掛けて来るのだからたまらない。狙いは小椋だ。トリコロールがボールを持つと縦のコースを基本に忠実に切る。そして小椋へのコースを空けて、パスを小椋に集めさせる。ボールを攻撃における展開力とスピードに難点のある小椋経由とさせることで、トリコロールの攻撃力の低下、そして、あわよくば、小椋のところでボールを奪おうという考えだろう。攻守に懸命なプレーを続ける小椋だが、試合の主導権は次第に鹿島に流れていく。 それでも決定機を許さない。才能のある大迫を中澤が完封。松田は鉄壁。そして、驚きは金の一対一のディフェンス。ドリブルで挑むマルキーニョスは蛇に睨まれた蛙のように動けない。仕掛けを断念すること数度。 前半が終わる。無失点。 「良いぞ、良くやってるぞ!!」 「松田、後半も頼むぞ!!」 「なんとか無失点で折り返すことが出来たね。」 「兵藤のシュートが決まっていたらなぁ。」 「さぁ、問題は小椋だなぁ。」 「俺だったら早めに替えるぞ。さすがに怖い。」 「替えるっていったって、控えにいるのはアーリアだけだぞ。」 「アーリアかぁ、それはないな。」 「コーキチは悩んでいるんじゃないかなぁ。」 「コーキチ、我慢してほしいなぁ。」 「ほんとは兵藤を後ろにして前にアーリアを入れれば良いんだけどな。」 「コーキチには、その選択肢はないんじゃないの。」 「だよねー。だから、小椋のままで我慢してほしいんだけど。」 「でも、小椋で大丈夫かよー。」 「とにかく耐えるしかないぜ。」 後半も開始早々にジョンの突破から狩野の決定機。トラップを浮かせてしまいボールは枠を捉えることが出来なかったが、鹿島に脅威を与える立ち上がりとなる。 試合後のインタビューによればコーキチはラインを上げることを希望。しかし、ピッチ上では、深めのラインのままで試合が続く。試合を支配するのは鹿島。トリコロールはカウンターで応戦。右サイドで渡邉が突破する。申し分のないスピードでゴール前に一直線。敵は曽ヶ端のみ。 「撃て!」 「シュート!」 シュートコースがあったはずだが、ここで切り返し。ディフェンダーをやり過ごすことに成功するが、自らも足を滑らせる。 「あーーーーーーーーーー。」 「・・・・・・」 「なぜ撃てない!?」 「曽ヶ端が完全にコースを切っていたのか?」 10分を待たずに興梠を投入。 オリベイラは大迫を下げる。これでゲームが一変。鹿島の攻撃はギアチェンジ。スピードを上げスリーバックの横を狙うことが、ますます明確になる。ここからは防戦一方が始まる。 ゲームのテンポは速くなる。時間の進みは遅くなる。 「まだ15分もあるのかよ。さっきから、残り5分みたいな展開じゃないか。」 狩野、山瀬の足が止まりゴールが遠のく。もう、スコアレスで引分けで御の字だ。鹿島が終盤に怒濤の体力勝負をかけられるチームだということを知っている。彼らは、約束事とペース配分で、序盤に体力を温存している。それがわかっているだけに緊迫感が高まる。 ゆっくりとした時計の針であっても、それが止まり続けることはない。あと数分間で勝ち点を得ることが出来るところまでやってきた。 「終われ!」 「終わり!!」 ボールを奪う。チャンスになるかも。 「行け!!」 「勝負しろ!!」 「シュートまで行け!!」 ボールを奪われる。 「終われ!」 「終わりだよ!!」 「終われよ!!」 待ちに待ったホイッスル。 「よし!!!」 立ち上がって叫ぶ。 「ナイスゲームだ!!」 「良くやったぞ!!!」 スリルとサスペンスに溢れる90分は勝ち点1という成果を得て終わる。なにより鹿島を相手に無失点で終えたことが大きい。カードをもらった後に、カード寸前のタックルが2度あった小椋だが、退場することなく奮闘した。選手達の底力を感じることが出来た。と同時に、鹿島と比較したときに、戦術徹底の未熟さと控え選手の層の薄さを思い知らされた試合でもあった。 わずかな勝ち点差で中位にも降格圏にも順位が動くリーグ戦。私たちがトリコロールと時を刻む日々は元旦まで続く。 今日のポイント ●鹿島の芝にやられたのは16年振りか。 ●耐えた小椋とコーキチ。 ●渡邉に守備の負担を課して無失点。しかし肝心なときに中央に不在。 ●効率的な鹿島の攻守。
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