| malicia witness 2階の目線2009 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 09-10シーズン 6月21日 浦和レッズ 日産スタジアム 「今日は2人の田中が気の毒だったよなぁ。」 「2人の田中って誰?」 「1人は田中マルクス闘莉王ね。代表明けで無理して、あれだけ頑張ったのに試合後にブーイングだぜ。あんな傷に塩を塗り込むような行為をしたらダメだと思うんだよ。あともう1人は(マリーシアの)田中のこーちゃんね。」 その少し前に田中こーちゃんから電話が来ていた。 「どうなりました?」 「あっ、あれから凄かったよ。これ以上ないくらいの崩し切ってのファインゴール2つ。2−0だよ。」 「えっ、マジ?」 どうしても外せない事情があって、彼は前半で日産スタジアムをあとにしていた。攻めあぐみ、選手が倒れ転び続けた前半のみを見てスタジアムを去っていれば、この2−0の結果は信じられないことだろう。 素晴らしい圧勝劇に、試合後の私たちは饒舌になる。バルセロナのソシオであるリカルドもすっかり楽しんだようで、トリコロールのTシャツを買おうとしている。 前半は酷い試合だった。浦和の素早いパス回しについていけず、劣勢に追い込まれる時間が続く。決定機を掴んだのは前半終了寸前。そこまでは、まったく勝機を見いだすことが出来ない展開だった。特に両サイドは浦和ディフェンス陣3人に囲まれる失敗を繰り返し、ドリブル突破も出来ない。これでどう勝つのだ、という時間が続いた。しかし、終盤の攻勢は自信と可能性の灯を点し、望みを後半に繋いだ。 後半が始まり、またしても怒濤の攻め。 ゴールまであと一歩。まさに、地団駄を踏んで悔しがる。腕に付けていたアクセサリーが振り上げた腕から飛んでバラバラに砕け散り、座席に散乱する。 「決めてくれよー!」 浦和の守備陣の乱れは前半終了間際から継続されたまま。改善されていない。浅いディフェンスラインの裏を狙うには格好の標的といえる。特に坪井。闘莉王の動きが鈍くディフェンスラインの前後動が少ない浦和ディフェンス陣の中にあっても、さらに動きが鈍く、坂田や山瀬の奪取に再三振り切られている。 「あの代表引退とか寝ぼけていたヤツが狙い目だぜ。」 狩野からディフェンスラインの裏にグランダーのスルーパス。 右サイドを駆け上がる坂田がディフェンスラインの裏に抜けると、ゴールに向かってドリブル。中央に渡邉がフリーで待つ。ディフェンダーとゴールキーパーを引きつけた坂田が中央にパス。渡邉は難無く枠にボールを流し込む。見事に崩し切ったゴール。完璧な崩しに喜びは倍増。 ボールを奪うと裕介が前へ。 裏に抜けたボールをクロス。狩野の親切なパスを山瀬が蹴り込む。そのとき、日産OBの金田さんは、テレビ中継の解説席で「ヨシ!」と声を出した。今シーズンのトリコロールの燦々たる戦績からすれば、まさかのファインゴール2連発。興奮の絶叫が大きな屋根に反響する。いずれのゴールもスリートップらしいゴールの奪い方。しかも守備から素早くボールを前線に送り込み、シンプルにゴール前にボールを運ぶ理想的な展開。コーキチサッカーが美しく一つの完成型を見せた。 得点直後に坪井が交代。まさかのセンターバック交代は無惨すぎる。 「あれ、阿部がディエンスラインに下がったぞ。」 「なんだ、この前、オーストラリアに散々やられたセンターバックのコンビじゃないか。」 決定的なシュートを何度も止める都築だが、あまりに酷い味方の選手達に呆れて集中力を欠いたのか、スローまでがタッチラインを割る。 「おいおいおい。」 もう、こうなると、何が起きても楽しい。 クナンが入る。 「前?後ろ?」 「坂田が代わるよ。」 「ってことは前か。」 「あっ後ろに行った。」 「松田に、前に行けと言っている。」 「松田も、あれって感じだね。」 スリーバックを変則にして、かつてのドイツ代表のフォアリベロにマテウスを入れたような陣形で守備は万全。時間の経過を待つ。 「ここでアーリアか。」 さらにアーリアを投入。 「なるほど。松田、栗原、クナンが後ろにいれば、アーリアも何も心配しないでプレーできるだろう。」 前線でボールを追うアーリア。ディフェンスラインでボール回すしかない浦和。ボールを前に運ぶことが出来ない浦和。試合終了を告げるホイッスルと同時に、怒濤のような重く大きな歓声が巨大スタジアムを支配する。安堵と歓喜とが入り交じり、いつもよりも何割か増しの音量に感じられる歓喜の瞬間。大型補強が見送られ、誰もが不安を抱えた臨んだ一戦。しかも序盤の劣勢は、その不安を大きく膨らませるたちの悪い刺激剤だった。しかし、終わってみれば圧勝。獲るべき人が獲り、守りはミス無し。小椋に代表されるように、すぐにボールを動かすことで停滞する時間がなく、常に人とボールが動くフットボール。こうして90分間を終えた今、試合前の不安が解消されるどころか、有り余るくらいの満足が心に満ちあふれている。 ヒーローインタビューが終わり、ダイジェスト映像が上映される。 「いいよ、前半はカットしろ。後半だけを見せてくれればいいよ。」 「ゴールのシーンだけ10回くらい見せてくれれば良いんだよ、嫌がらせみたいに。」 しかし、実際には、ダイジェスト映像が終わる頃には、アウエースタンドはすっかり空になっていた。 「以前、三菱にワシントンが来て、今度はトヨタにケネディが来たんだから、うちもリンカーンくらい獲らないとダメだろうな。」 どんな馬鹿げた話をしても面白い。 「次はガンバか。」 「ガンバはチャンピオンズリーグがあるんだろ。しかも一発勝負。延長戦までやってくれればベストですよ。」 「うちはついてるなー。」 真面目な話をすればなお楽しい。 私たちがトリコロールと時を刻む日々は元旦まで続く。 今日のポイント ●ゴールはなかったが再三のフリーランニングで貢献した坂田。 ●センスを見せた良い山田とさぼっていた悪い山田。 ●中盤の底でテンポよく繋がったパス。 ●コーナーキックを蹴らされる高原。 ●横断幕を出すために広告を隠さないで済む サイドへ移動した浦和ボーイス。
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