malicia witness 2階の目線2009 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
J1リーグ 09-10シーズン 6月28日 ガンバ大阪 日産スタジアム 試合を終え、口論寸前の会話が火花を散らす。 「中澤といえどもコンディションが悪かったら外さないとダメなんだよ。」 「中澤使って、松田を前で使って坂田が押し出されるなんておかしいじゃないか。だいたい、勝っている時はいじるなっていうのは鉄則なんだよ。」 「いやー、俺は中澤を外すなんて出来ないと思うよ。」 「中澤を外すのは無理だよ。」 「俺が監督だったら、そんな勇気はないよ。」 どちらにも一理ある主張だ。同じ試合をずっと10年以上も見て応援している仲間だが、その解釈は一つではない。際どい会話を交わしながら、前節よりはかなり早くスタジアムから引き上げる。 強い雨が降る中で始まったゲームは、お互いに攻め合い。細かなパスを繋いで前へ前へとボールを運ぶ。そして遠藤のセットプレーがゴール前を襲う。それを的確なとび出しでクリアする飯倉。好守が光る。 「いいぞ!」 「よし!!」 「そっちか!?」 雨のために1階からの退避サポーターも多く、すっかり埋まった2階席からはプレーに合わせて声が出る。特に大きな拍手が沸き起こるのはグランダーでの素早いサイドチェンジ。以前に比べてオフザボールでの選手の動きがダイナミックになっているために、ゲームが停滞しない。見ている方も、自然に身体が動き声が出る。 攻撃力に定評があるガンバに対して、トリコロールが選択したのは、松田、中澤、栗原、小椋の同時起用。短髪の強面、松田と小椋の2人が横縞のユニフォームに身を包んで敵の行く手を阻む姿は、まるで、漫画タイガーマスクに登場した伝説のプロレスラー「ザ・コンビクト」。ガンバの攻撃の行く手を阻む。 そして、最後尾では、好守を連発する飯倉から、攻撃のリズムを創る適切なパス。細かく繋ぎ、ガンバディフェンスラインの裏を狙う組み立て。それは浦和戦に続いて冴えている。 ここまで正確に、かつ積極的にシュートを枠に放つストライカーは、ディアス以来だろう。渡邉のミドルシュートは、地を這い枠へ。松田直樹と一文字違いの偽物・松代直樹がこれを止める。ボールがこぼれる。腰が浮く。 「詰めろ!!」 「行け!」 ガンバのディフェンスラインが浅く、こぼれ玉を押し込む位置にトリコロールの選手はいない。 その直後、奪ったボールを右から左へ。本物、松田直樹がディフェンダーを交わす。 「撃て!」 「撃て!」 一斉に座席を立ち叫ぶ。目の前には、偽物・松代直樹のみ。だが、ボールは松田直樹の左脚の下にある。シュートと見せかけて中央へグランダーのパス。 「マジか!?」 シュートに至らない。クリアされる。小椋がボールを拾って左の小宮山へダイレクトパス。大きなフェイントでディフィンダーを振り切ってクロス。クリア。しかし、至近距離の狩野へ。ここで信じられないプレー。狩野は頭で、すぐ横にいる松田直樹に正確なダイレクトパス。そのショートパスを受けた松田直樹は上から右脚をかぶせるようにしてボレーを叩いてボールでゴールを貫く。 「すげー!!」 「完璧!」 「もらった!!」 前節、浦和戦に続いて、またしても美しいゴール。シュートの芸術性と力強さが格別の大きな歓声を沸き起こす。 「いやー、良く決めた。」 「素晴らしい!!」 フォワードの下で展開にリズムを創る遠藤。かつて、彼は「遠藤・弟」と呼ばれていた。鋭いパスと高い戦術眼を持つ、日本の代表的なプレーメーカーも、決定的なボールを前線に供給することが出来ない。運動量では、ガンバはトリコロールと比べて、明らかに劣っている。ミッドウイークにチャンピオンズリーグを闘ったガンバのコンディションが良いわけがない。このままいけば、更にガンバの運動量は低下するはず、というキモチで誰もがゲームを見つめていたはずだ。時折、レアンドロや橋本へのスルーパスが出るものの、決定的なピンチとなる前に中澤がボールを奪い取る。ビッシリと埋まった2階席の屋根下から歓声と拍手。 「やっぱりすげぇな、中澤。」 またしてもゴールの再現か。小宮山のミドルシュートを偽物・松代直樹が前にこぼす。そこにいるのは狩野だけ。弾んだボールを松田直樹と同じように叩けばゴール。しかし、シュートはフィットせず。 「あれー!」 「おいおいおい!!」 「なんだー????」 追加点の絶好の機会を逸する。ビッグチャンスは、トリコロールの方が圧倒的に多い。 前半の終了を告げるホイッスル。 「よし!」 「いいぞ!!」 「いやいや、面白い前半だったね。」 前節、浦和戦とは対照的なハーフタイム。素晴らしいゲームに会話も弾む。 後半の立ち上がりもトリコロールのペース。自信を持って素早いパス回しを魅せる。しかし、好調なときにこそ、落とし穴は大きい。右サイドで何気なく繋がるガンバのパス。その時、左サイドの遠藤をケアする者は誰もいない。ここまでの50分間で、そのようなことは一度もなかったのだけれども、なぜか誰1人として遠藤を見るものがいなかった。遠藤は歩いてペナルティエリア内に悠々と侵入。そして運悪く、右サイドの突破を下平がいとも簡単にやってのける。中澤が、栗原が、裕介が、下平のケアと、レアンドロとルーカスのマーク。その背後に遠藤はフリーで立っていた。 この大きな落とし穴にはまったトリコロールは痛い失点。「しまった」という心理が影響したのだろう、思わぬカタチで逆転される。ここからは、もう多くを語るまい。絶妙のポジショニングでパスを引き出すルーカスと遠藤の職人芸のパス交換に象徴されるようなガンバの上手さが、きっちりと後半の45分間の時計の針を進ませる。しっかりとボールを奪われることなくボールをキープし続ける彼らにはコーナーキープなど不要。圧倒的な力の差を見せつける1点差の大差が、この後半にピッチを漂う。対するトリコロールは、クナンの投入で全てを壊してしまった。コーキチはクナンへの放り込みを禁止しているが、であれば、何を狙っての投入だったのだろうか、それがわからない。チーム戦術が徹底されてきた前半の印象が良かっただけに、クナン投入後の選手たちの迷走ぶりが目立った。 「あー、参った。」 「終わってみればガンバは強かったよ。」 「でも、勝てたゲームだよ。」 「もったいない。」 「でも、前半は良かったよ。結構、上向きなんじゃないの。」 勝てた試合だ。そして勝てるチームになってきた。悔しい敗戦ではあるものの、闇に沈む敗戦ではない。次は大宮。当然、勝ちに行く。 私たちがトリコロールと時を刻む日々は元旦まで続く。 今日のポイント ●ユニフォームを引き裂いた栗原。退場でもおかしくない荒技。 ●雨でも悪影響がほとんどないピッチ。 ●チャンピオンズリーグを落とし必勝機運だったガンバ。 ●背番号が見えなくても姿で選手の見極めが出来るようなってきた。 ●マリノスケとは役者が違ったドナルドのオオボケ。
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