| malicia witness 2階の目線2009 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 09-10シーズン 8月1日 京都サンガ 日産スタジアム 「4−2−2−2だ。」 やや変則的ながらも、ピッチの上に描かれている布陣は、懐かしい絵柄だった。かつて加茂ジャパンがこの布陣を用いフランスワールドカップ出場を目指した。そして、その結果は、みなさんご存知の通り。最大の欠陥は4バックの前の両サイドに大きなスペースが広がっていること。その広大なスペースを最後尾のサイドバックは何度も長旅を繰り返さなければサイド攻撃も守備も機能しないことにある。 その懸念通り、中盤の両サイドはスカスカ。ドリブルで持ち込まれると、あっという間にバイタルエリアにまで侵入をされてしまう。また、経験の少ない金井はマイボールになると高い位置に進んで待っている時間が長いため、左サイドのディフェンスラインの前には空白のエリアが出来てしまう。そのために、最後尾やボランチからのパスの出しどころが一つ減ってしまう。きっと、これはシーズン序盤に多く見られた「サイドバックは高い位置にポジションを取って下がってくるな。」というコーキチの指示だろう。 5分から10分にかけて波状攻撃を受ける。サイドから攻められると食い止めようがない。 「あーまずい、まずい。」 クナンのヒールから山瀬はゴールまで一直線。 「撃て!!」 「またかよ!」 この日、3本目のクロスバー越え。せっかくの決定機もゴールに結びつかない。シュートが枠にいかないのだ。 「また打ち上げ花火かよ。」 神奈川新聞花火大会を蹴ってスタジアムに駆けつけたサポーターから、クロスバーの上に打ち上げられるシュートの航跡を追って、ため息が漏れる。 「山瀬って右側だとダメなんだよなー。」 「なぜか左からしか決めないよねー。」 「アンリとかもそうだよねぇ。」 守備はといえば、パウリーニョや中谷の直線的なドリブルに翻弄される。しかし、京都の攻撃にもフィニッシュ前に芸がない。 ディエゴのフリーキック。長身のイジョンスにボールが送られる。競り合うのはクナン。軽い。きちんと競ることもなく、イジョンスに難無くヘディングをされてしまう。 「しっかり競れよ!」 「なんでフォワードのディフェンスになっちゃうんだよ。」 不思議なものだ。 カタチが出来ない。でも京都の攻めもサイドを突いてくるものの、無造作にクロスを入れたり、マイナスのボールを戻したり。こう着状態のまま。子どものサッカーのようにガチャガチャして落ち着きのないゲームは、けっして褒められたものではない。でも、苦しいリーグ戦で、久しぶりに勝利を手にできるかもしれないリードを奪っていることも、また事実。 あの素晴らしいゴールは渡邉の個人技によるもの。あまりに素晴らしいシュートにスタンドは総立ち。絶叫がスタンドを沸騰させ、なんとなく幸せな空気に包まれている。今日は直接対決だ。 「後半は京都が前から来るだろうね。」 「受け止めるために、序盤は待つべきだ。」 「いや、ハッタリでも押し込まないと。」 「ディエゴのポジションも前に出してくるだろうし、もっとゴール前に絡んでくると思うよ。序盤は押さえ気味で後ろにいたから、後半はかなり攻めて来るんじゃないか。」 「だよね、ディエゴがボランチの位置にいたから助かったけれど、きっと後半は前に来るはずだよ。」 ところが、京都の攻めに迫力がない。守備のラインも深いまま。ただ、布陣は少し違う。見ると左サイドバックだった中谷が高い位置にポジションを取ったままになっている。スリーバック気味だ。と思っているうちに中谷が交代。角田が出てくる。カトキュウの意図はわからなくはないが、トリコロールの中盤守備が窮屈で機能しない。 さて注目の選手交代だ。 「兵藤が出てくるぞ。」 「アレ誰だ?」 「小宮山も出てくるみたい。」 「金井を下げるだろ。ボール持ってからはチャレンジしているけれど、全体的には機能していないからね。」 「あのポジションだとパスコースが作れないし。」 「監督の指示通りなんだろうけどね。」 「あとは誰を代えるんだろう。」 「狩野かな。」 「アーリアなんじゃねぇ。カップ戦で最後まで使ったし。」 「あ、そうだよね。それはある。」 答えは意外なところにあった。 「え、山瀬なの。」 「コーキチやるなぁ。わからなかった。」 「すげぇな、まったく予想できなかったよ。」 「カップ戦でアーリアを最後まで使ったのはリーグ戦で別の選手を使うための起用方法だと思って納得してたんだけど、アーリアはこの試合でも最後まで使うんだ。ふーん、わかんねー。」 「うーん。」 「小宮山は金井の前に入るぞ。」 「これだと金井は前に行けないんじゃないのか。」 「どうやるんだろう。」 「ダブル左サイドバックシステムか。斬新だ。」 多くの仲間たちが、同じように悩んだのか・・・。 「2階席が静まり返っちまったよ。」 暫くの間、コールもチャントも手拍子も起きず静かになってしまう。恐るべき采配。サプライズだ。カトキューのスリーバックは機能せず、このまま押していれば負けることはなかろうが、妙にシステムをいじっておかしなことをしてくれなければよいのだが・・・。 スローインのボールからアーリアが反転して切り込んでノールックのパス。 「うぉ!!!!!」 ゴール前でドフリーの兵藤がゴールに流し込む。アーリアが前を向いた瞬間にスタンドは立ち上がり、兵藤にボールが渡った瞬間に飛び跳ねる。美しいゴールだ。 「うわぁすげー!!」 「兵藤が決めたぞ!!」 「しかもスローインから!!」 「よし、ナイスプレーだ!!」 「いいぞアーリア!」 歓声と賞賛の声が屋根にこだまする。心配をした選手交代のあとの時間に追加点をゲットすることができた。しかも途中出場の兵藤のゴール。 「よし、これで安心だ。」 「よかった、よかった。スタンドが静まり返ったときには、どうなっちゃうんだろうっておもったよ。」 そうこういっている間に次の選手交代。 「田代が出てくる。」 「田代?後ろに入れるのかよ。渡邉を下げるの?」 「田代はカップ戦で良くなかったからなー。」 「渡邉よかったぞー。」 渡邉に代わって田代が入るとディフェンスラインが5人にかわる。 「おいおい大丈夫か。フラットファイブになっているぞ。」 「これだと、ディフェンスラインの前はスカスカだぞ。」 「いやー、これで残り時間を凌ぎ切ろうとするのか。大丈夫かなぁ。」 「3点差ならともかく2点差だからな。」 「ドリブルでつっかけられたらイッパツだぞ。」 「守りに入るといけない。」というのは、ハーフタイム前のコーキチのコメント。それとは裏腹に、実際に最終的にピッチ上には3人のボランチタイプの選手と7人のディフェンダータイプの選手が並んでいる。 「見ろよ、掲示板。ずらーっとディフェンダー登録が並んでいるぜ。」 「すんげぇチキン采配だな。」 「でも、とにかく、このまま逃げ切ってもらわなきゃ。」 見れば5人のディフェンスラインが瞬間的に6人も7人にもなる瞬間が見える。救いは京都に意図を持った攻撃の組み立てがほとんど見られないことだ。 そんな不安のある中で、ボールのないところで小宮山が長い距離を斜めに走りゴール前に顔を出す。瞬間、兵藤からボールを受けてディフェンダーをひらりと交わしてボールをゴールマウスに置きにいく。 「ゴラッソ!!」 「素晴らしい!!」 「いいぞ小宮山!」 「また、個人技でゴールしちまったぞ!!」 「前半から、ずっと組織的にはむちゃくちゃだったんだけど、個人技で2点とったぞ。」 「しかも、交代選手がゴールしちまったよ。」 「木村監督ズバリ采配、とか書かれるんじゃないか。」 「選手交代がことごとく当る、6.5とか」 「つきかねない。」 「これで、田代が、もしゴールしたら・・・。」 「7.5!!」 「すげー。」 あとは夏祭りのようだった。ボールが動くたびに歓声が上がり、最高潮にうちに90分のゲームを終える。試合内容には、とうてい満足がいかないのは本心だが、何物に代えても勝ち点3は嬉しい。メンバーの顔はみな笑顔だ。 「とにかく勝ち点3だね。」 「なんか釈然としないんだけど。でも、まっいっか。」 「コーキチは悪運強いなぁ。」 「あまりにわけのわからない采配だから、カトキュウは理論で崩壊したんじゃねぇの。あーもうわかんねーって。」 4−2−3−1を4−4−2にし3−5−2に変更し、カトキュウ京都は90分間を沈黙した。 「ディエゴが機能しないままだったね。後半はもっとガンガン来ると思ったんだけど。」 「よくあるんだよね、前半は押さえ気味に行って、最後まで押さえたままになっちゃうって。」 「京都の不甲斐なさは酷かったね。」 「でも、まぁ、とにかく勝ち点3が大切だよ。」 「おっ、九州からメール。『京都の不甲斐なさを差し引いて、いい勝利でした。』だって。」 「えーテレビって怖い。」 「やっぱスタンドから見ないとサッカーって面白くないね。」 私たちがトリコロールと時を刻む日々は元旦まで続く。 今日のポイント ●松田が目立たない。 ●アウエーで勝てないのはカトキューの悩みすぎか。 ●招待券のお客様も満足した3得点。 ●なにはともあれ勝ち点3を獲得。
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