| malicia witness 2階の目線2009 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 09-10シーズン 9月19日 鹿島アントラーズ 日産スタジアム 鹿島は強い。だからこそ、この試合結果は生まれた。 序盤、松尾一さんが、やや細かな指示で笛を吹く。お互いにスペースを消した布陣でピッチにはまんべんなく22人の選手が散りばめられている。ツートップにフラットな4−4−2を採用しているとはいえ、パスコンビネーションの熟成とはほど遠いトリコロールがゴールを奪うためには、いつものように、特筆すべき個人技の披露が必要となる。まずは小宮山が大きなフェイントで鹿島ディフェンダーをかわしてシュートまで持ち込む。 窮屈な中盤でトリコロールは効果的なパスが繋がらない。 鹿島は、ほんの少しずつポジションを変えながらパスコースを巧みに創りだしていく。明らかにパスに無理がないのは鹿島。残念ながら、それが現実だ。 ところが、クサビに入ったボールを坂田が見事なトラップからサイドの渡邉へ。その前のスペースに走り込んでいた小椋がパスを受けて、間髪入れずに左脚でクロスを入れる。 「えっ!?」 「おっ!」 いつもはサイドでプレーしない選手2人の連携。しかも体勢を崩しながらの小椋のクロス。身を乗り出して、ボールの行方を追う。そこには、攻撃の起点となった坂田が走り込んでいる。曽ヶ端の守備範囲にまっすぐ飛んで行くかに思われたクロスボールは、小椋が精一杯腰をひねって撃ち込んだこともあって、予想以上に大きく弧を描いて飛んでいく。そして、坂田とドンピシャに交錯。曽ヶ端の手に届くことなく、ボールはゴールネットを揺らす。 「やった!!!」 「すげぇ!!!」 「美しい!!」 「ナイスゴール!!」 予想外に早い時間帯で奪ったゴールにスタンドは興奮の坩堝となる。まさに小椋、一世一代、サイド攻撃相勤め申し候。坂田のプレーは当然のこと素晴らしいが、このゴールは小椋のゴールだ。 しかし、喜びもつかの間、鹿島はスピーディーなパス交換で前にボールを進める。クロスに対して分厚く枚数を当ててくるのが王者。大外に走り込んできていた小笠原に決められる。 「ちっくしょー。」 「本気で来やがったぜ。」 「強いなぁー。」 「なんだよ、これじゃ弱いチームの典型じゃネェか。」 ここから鹿島が素早いパス回しでトリコロールを翻弄する。間一髪のピンチを哲也が止める。波状攻撃を耐える。 「いやぁ、ヤバいぞ。」 そんな言葉が出始めてすぐのこと。突然、まさに、それは突然、左足から放たれた。 「まじかよ!」 「決まった!」 「今度も凄い!!」 試合が始まって15分も経たない間に、2度もスタンドは大きく揺れる。 「よし、これで行けるぞ!」 「この試合、勝てる。」 もはや、鹿島は以前の鹿島ではない。 残念だが「メルダ!」と声高に叫ぶことは出来ない。知的な佇まいの名将オリベイラが指揮する緻密なサッカー、いやフットボールは、敵チームのサポーターすらも感嘆する。その鹿島に勝つには、真っ向勝負で内容を競うことは得策ではない。いや、それは出来ない。それよりも、いかに勝負強さを発揮してボールをゴールに叩き込むか、それが優先される。ここまでの試合運び、失点はあるものの、ほぼ理想型ではないか。だから、あの声が出た。 「この試合、勝てる。」 いつの間にかダメ外人だったダニーロが鹿島の攻撃のアクセントになっている。パスが回る。脚を止めない。約束事を守りつつも、個人の裁量でポジションを動かしていく鹿島のフットボールに、トリコロールは受け身となる。ただ、この日のトリコロールは4−4−2の布陣なので、ひとまずスペースは埋まっており、目に見える破綻がない。さらに、中澤が高い位置やサイドでマルキーニョスに対応する。中澤の前ではマルキーニョスは蛇に睨まれたカエル。ほとんど何も出来ずにボールを手放すばかり。 「中澤が前に出た時は松田がセンターバックのポジションに入っているようだね。明らかに、コーキチはやり方を変えてきたぞ。」 ドリブルの決定的な突破を許さずにゲームを進めているが、鹿島のチームとしての熟成度をうかがいしれる展開が多々見られる。特に驚きを与えてくれるのはサイドチェンジ。基本通りにコーナーをめがけて長いボールを蹴ってくる。ただ真横にサイドをチェンジするのではなく、サイドを変えると同時にトリコロールの陣地深くにボールが入ってくる。そして、そのボールをサイドアタッカーがキッチリとトラップする。それは美しい。パスの角度とサイドアタッカーが走るコース・スピードがしっかりとマッチしている。 さらに、面白い展開がある。 鹿島がサイドでボールの行き場を失ってどん詰まりになると、何をするか。普通であれば、後ろにボールを下げる。または、中央でボランチの選手がボールを受ける。それが普通の選択肢だ。しかし、今年の鹿島は違う。中央の選手がボールに寄ってくるのではなく前のスペースに走り出す。すると中央のトリコロールの選手が走り出した選手についていく。したがって中央に両軍選手が不在となる。そこで、パスコースが生まれ、どん詰まりだった選手は、一気にグランダーで素早く逆サイドにまでサイドチェンジのボールを送り出すのだ。 「うぁすげぇ。」 いくら敵だとは言え、この素晴らしい次元違いのサイドチェンジには、驚きと賞賛の声が出てしまう。 その後、試合は膠着。何事も起こらずに前半を終える。 後半は果たして序盤のような鋭い攻撃を見ることが出来るだろうか。それとも、こう着状態を続けるままに勝ち点3に辿り着くだろうか。ディフェンンスラインはお互いに高く、空いているスペースは少ない。 そんなピッチ上の窮屈な絵柄の間をすり抜けていくように鹿島のパスが繋がる。グランダーのボールが逆サイドにまでゴール前で渡り、最後は野沢のシュート。どうやら、後半も攻勢を受けて耐える時間が長くなりそうだ と、誰もが思ったのだが、鹿島も攻め手がない。4−4−2で潰した狭いスペースを鹿島の攻めを潰している。まさにこう着状態。 「鹿島も疲れているのか、前に出てこないな。」 そうこうしているうちに渡邉が交代。いつものゴールデンタイムがやってくる。 「う〜ん、渡邉が前にいるだけで脅威になっているんだけどなぁ。」 苦しい時間帯に助けてくれる人あり。ずっと細かな笛を吹いていた松尾一主審が明らかな誤審でコーナーキッをゴールキックにしてくれる。おそらく、この主審は鹿島との相性が悪い。 75分が過ぎて自体は急変。鹿島の両サイドが裏へスピーディーに走り込み始める。小椋がカードをもらう。内田に蹂躙されボールはゴール前を左右に往復。トリコロールは大きく振られる。際どいシュートに身を挺して守る。次から次へとシュートを放たれ跳ね返す。 ここで選手交代。 「誰が出てくるんだ?」 横縞の開港150周年ユニフォームでは、動かない選手を見分けることが難しい。アウトはアーリア。入ってくるのは狩野だろうか。前でボールをキープできるようにして、ピンチの連続を凌ごうというのか。 「あ、河合だ。」 「ほー固めてくるのか。」 「おいおい、これって、松田、小椋、河合の中盤揃い踏みだぜ。」 「あのトリプルボランチって機能しなかったじゃないか。」 「マジかよ。恐怖のトリプルボランチ復活?」 「ちょっとチキンすぎないか?」 「これ、守り切れるのかな。」 「中盤が下がらないで、高い位置で守れるんだろうか。」 そんなことを行っている間に、すでに恐怖のトリプルボランチは最終ラインに吸収されて6人ほどが最終ラインにポジションをとっている。その前のスペースはスカスカだから、鹿島のパスが俄然回り始める。攻めの面で言えば、アーリアが抜けて実質的には中盤の選手が一枚減っているので、ボールを奪っても中盤で預ける先が足りない。 「この先、やられっぱなしで耐えなきゃならないな。」 「まずい。」 「おっ、代えるぞ。」 「さすがに、これでは耐えられないとコーキチも考えただろう。」 今度こそ中盤の選手を入れて立て直すか。 「え、松田交代。狩野?」 「カードもらってる小椋じゃないのかよ。」 「しかも兵藤も脚がつってルぞ。」 ここで選手交代のアナウンス。聞こえてくるのは「か・・・」。 「狩野じゃなくて金井かよ!!」 「何処に入れるんだよ。」 残り時間は4分ほど。松田を下げてまで投入されたのが経験の少ない金井。しかも、何処に入るのか、どうやらスムーズではない。やや混乱している。それが功を奏したのか、オリベイラは混乱か。最後の攻撃のカードを切ることが出来ないままにロスタイムに突入する。 「とにかく守りきれ。」 「耐えるしかないぞ。」 跳ね返すボールはクナンに収まるわけもなく、中盤がキープすることも出来ない。さらには金井は簡単にクロスを曽ヶ端に渡してしまう。 でも、時間はゆっくりとしか進まない。 「もう、なんでもいいから、とにかく跳ね返してくれ。」 願いを声にしてコールを叫ぶ。ロスタイムは4分。長い。耐えに耐え試合の終わりを告げる主審の笛で安堵と歓喜が入り交じった歓声が屋根に反響する。 首位の鹿島を葬る。前節の広島戦で大切な勝ち点をみすみす逃したことを考えれば、大きな価値ある試合となった。 「ところで、うちって、今日、コーナーキックなくないか?」 「そういえば、狩野も山瀬もいないのに、セットプレーのキッカーが誰かって話題がなかった。」 「兵藤が蹴った記憶がない。」 「コーナーキックもなかったけれど、ひょっとしてゴール前でのフリーキックもなかったんじゃないか?」 「鹿島は一度も壁を作らなかったんじゃないかな。」 振り返ると、得点をした時間帯以外には、ほぼノーチャンス。 「でも、こんな試合もあるんだよ。」 鹿島は運が悪かったのだろう。対して、運を引き寄せたのは選手たちの頑張りと、明確な戦術不在な中で簡単にスペースを埋められる4−4−2で守備の安定を選んだこと。さて、次節以降、この「勝てるサッカー」を続けることが出来るかどうか。浦和戦では真価が問われる。 今日のポイント ●力の差は歴然。しかし結果と力は一致しない。 ●明らかに運動量があれでも落ちている鹿島。 ●渡邉に適しているのはツートップ。 ●負けてブーイングだった鹿島ゴール裏。
この試合の感想や意見はこちらで |
|
| confidential 秘密 | message 伝言 | photo&movies | reference 参考 | witness 目撃 |
| scandal 醜聞 | legend 伝説 | classics 古典 | index | LINK |