| malicia witness 2階の目線2009 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| J1リーグ 09-10シーズン 10月17日 名古屋グランパス 日産スタジアム 「やばいぞ、ピクシーが上着を脱いで蹴る気満々だ。」 後半、フリーキックのピンチにもれた冗談。まさか、その冗談が現実のものになろうとは誰も思っていなかった。 時計の針は85分にさしかかろうとするころ、これまでチャンピオンズリーグを控えて調整モードでゆっくりとしたペースで主導権を握ってきた名古屋が風雲急を告げる。そして、ここから5分間とロスタイムが、本当の試合となる。ゴール前で交錯した小川と田中裕介。倒れる田中裕介をかばって哲也がボールをタッチに蹴り出す。ちょうど、ストイコビッチがベンチを飛び出してくる事で、試合が動き出す。 ボコっという大きな音がスタジアムに響く。ストイコビッチは哲也が蹴り出したボールをダイレクトで蹴り返す。ベンチ前の濡れた人工芝の上で革靴でけられたシュート。それは弾丸シュートではなく、緩やかに美しく弧を描いてゴールに向かって飛んでいく。 「あれ、入っちまうんじゃないの?」 ボールはゴールマウスへ。そかし、それだけではなかった。ワンバウンドしたボールはゴールネットの天井に突き刺さりゴールの中でワンバウンド。一瞬の静寂。仲間同士、お互いに顔を見合わせる。そして、どっと沸き立つ歓声。 「すげー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「凄いぞピクシー!!!」 拍手喝采。今日一番の盛り上がりだ。鳥肌が立ち、金槌で頭を叩かれたような衝撃が走る。 ただ、ゴールに蹴り込むのでは飽き足らず、そこに芸術的要素を盛り込んでいるのがピクシーのプレー。ところが、広瀬主審は妖精を退席に。 「マジかよ。いいじゃねぇか。」 「いやぁ、ピクシーの退場が久々に見れるなんて嬉しくない?」 ここで退席になってこそ、ストイコビッチ監督は、一瞬、ストイコイビッチ選手に戻ったかのような錯覚に陥る。技術、ユーモア、そして退場。これぞピクシー劇場の真骨頂。 スタンドのボルテージが一気に上がる。 ケネディと中澤が激しく衝突し、坂田が裏へ抜け出す.雨天のために、いつもよりも密度の高いバックスタンド2階は手拍子が揃い、大きな音でリズムを創りだす。脚を痛めて動けなくなっていた栗原に田代からパスが出る。素早く低いクロスを入れる。そこにフリーで走り込んできた狩野が左脚のダイレクト。 「撃て!!」 「よし!!」 「やった!!!」 あとは絶叫。90分間大人しかった観客も総立ち。 凄いゴールだと仲間同士で語る間もない。 「終われ!!」 「終わりだ!!」 すぐに広瀬主審に試合終了を促す。その期待に応えるように、ゴールからたった一つのプレーだけで試合は終了。沸き立つスタンド。 「ロスタイムにゴールなんて、いつ以来?」 「75分以降のゴールだってめったにないんだぜ。」 それにしても相手に合わせすぎだ。チャンピオンズリーグに備えて主力を温存する省エネペースの名古屋に合わせて動きのない試合を進めた。前半で覚えていることといったら何だろう。2つのゴール。オフサイド崩れの、あっけない失点。天野の見事にコントロールされたクロスと、目が覚めるような跳躍力の坂田のヘディングシュート。それ以外には何を覚えているだろう。 前半、残り時間はわずか。マギヌンが松田を突き飛ばす。広瀬主審が間に入るが激しく詰め寄るマギヌン。マギヌンにはイエローカードが出るだろう。さらに広瀬主審に文句を言えば、マギヌンには退場の可能性もある。 「文句言え、マギヌン!」 「主審!マギヌンが馬鹿とか言ってるぞ!」 「おい、近くに三都主がいるじゃねぇか。おいアレックス!通訳しろ!!」 「馬鹿とか言ってるだろ。わかりやすく主審に伝えろ!」 「さっさと通訳しろよ、この万年通訳!!」 ジーコジャパンの通訳と言われた男、再び、罵声を浴びる。 興奮のクライマックスがなければ、酷い試合だったとも言える。田代の途中出場に光は見出せなかった。怒濤の攻撃の時間帯にコーキチが動き、選手交代をしたおかげで、すっかり勝機を逃してしまった。しかも、セットプレーの守備の最中らに選手を交代するという、今時は小学生でも知っているような守備のセオリー破り。勝てた事が不思議なくらいだ。数えてみれば、ピッチには7人のセンターバックが存在していた。 だが、収穫がなかったわけではない。まずは天野。出場機会は少ないが、出場すれば、必ず大歓声を受けている。思い切りの良いプレーでスタンドを沸かせるのは、まさにプロの仕事だ。同点弾を呼び込んだクロスは見事。 そして、坂田と渡邉のツートップ。以前のワントップの頃とは違い、前線にボールが収まったときの前への推進力が違う。坂田も、ただスペースに走り込むだけでなく、その後の選択肢が見えている。ツートップでの試合が増え、やっと攻めにカタチが出来てきたといえよう。以前と比べて、坂田や渡邉にボールが入ったときに巻き起こる歓声の大きさに期待の大きさが見える。 この試合を見て未来を感じる事が出来るか、というと、冷静に見て、それは難しい。だが、脚を引きずる栗原の奮闘でロスタイムに劇的なゴールを奪うことができた。久々に見た勝利にかけるスピリッツだ。そして、ピクシーの素晴らしいプレーでエンターテイメントも満点。そう、今日は、難しい事を忘れて、つかの間の勝利の喜びに浸ろうではないか。また来週、楽しいサッカーを期待しよう。ロスタイムのゴールは、それくらいの価値がある。 今日のポイント ●オーバーヘッドのボールが自分の顔に当たったデカすぎるケネディ。 ●いつものように、まともなクロスは一本もなかったハユマ。 ●14年ぶりに見た、コーナーキックで守備をしているときの選手交代。 ●両チームとも近すぎる壁。
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