malicia witness 2階の目線2011
J1リーグ 11-12シーズン

4月23日 鹿島アントラーズ  国立競技場   (石井和裕)

横殴りの雨、晴れ、曇り・・・めまぐるしく変わる天気。待ちに待ったJリーグ再開は、荒れ模様の空の下。調べてみれば、国立競技場で鹿島と対戦するのは、あの2,000年チャンピオンシップでの惨敗以来だという。私たちは、あれからすっと、国立・鹿島戦の苦い思いを、どこか胸に秘めて闘ってきた。

試合前に行なわれる静かな黙祷。スタンドは寂しい15,000人。雨のせいなのか、それとも今日からJリーグが再開されることが知られていないからなのか。リーグ再開の喜びだけではない、複雑な感情を抱いてゲームは始まる。

セカンドユニフォームの黄色は大きく見える。
「人数が多く見えるんだよな。」
そして、目立ったのが442のフラットな布陣。スペースをキレイに埋めている。過去にマリノスが苦しめられた三浦監督の442と比較すると4と2の間隔が広い。要は中盤とディフェンスのラインが深い「引いて守る」スタイル。これまでずっと整わない守備陣形に見慣れてきているので、このピッチに描かれた模様な新鮮だ。

まだ始まって3分ほど。鹿島の不用意なパス回しを小椋が奪い思い切ってシュート。雨に濡れて不規則にバウンドしたボールはタイミングをずらしてゴールに飛び込む。
「決めた!」
突然の出来事に、ゴールからワンテンポ遅れて喜びがやってくる。苦戦は必至の覚悟だっただけに、あっけないほど簡単にリードを奪うことが出来て驚く。

試合が進むに連れて判ってきたことがある。

今日はファール判定が甘いということ。ちょっとやそっとでは笛は鳴らない。それは昔の鹿島と違ってアンフェアな汚いファールが少ないことの投影かもしれない。ゲームは止まることが少なくストレスがない。

アレックスの突然のミドルシュートに肝を冷やす。
「ところでアレックスって、なんで鹿島にいるんだ。」
「そもそも鹿島に入れるようなレベルの選手じゃないだろ。」
「いや、それよりも日立台で鹿島のゴール裏に旗で攻撃されたアレックスが、なんで鹿島に来たんだろ。」
「言われてみればそうだな。」
「よく来たな。」
鹿島はケガ人が多くベストメンバーではないことが原因なのか、監督がベンチにいないことが原因なのか、それとも、この深いラインの442の攻略法に迷っているのか、ダイナミックな攻撃を仕掛けてこない。緊張感はあるが緊迫感には欠ける。一点リードの余裕を感じられる試合だ。

残り時間が僅かになって負傷者が出る。鹿島がボールを緩く蹴る。しかしキックが緩すぎてタッチラインから、ボールが外に出ない。これは、簡単に倒れたことに対する抗議の意味が含まれている。
「ちゃんと出せよ!」
「出せよ!」
なかなかボールを外に出さない。
「わかった、もういい。出すな。」
「いいよ、出すなよ!」
「いいよ、そのままで。そのまま前半を終わらせろ!」
そのまま終わらせても良かった。前半の45分はすんなりと終わる。

「うわっバレたか。」
「18番はぜんぜんフィットしていなかったもんな。」
「監督がベンチ入りできないからハーフタイムにしか交代できないんじゃないの?」
後半が始まると鹿島は2人を交代。本山と大迫が投入される。監督不在でも、ここまでは手を打てる。
「さあ、ここからが本番だな。」

時折、雨が強く降る。屋根のあるスタジアムに慣れると、雨中の応援は辛い。そして、さらに観戦を困難にしているのはピッチ上の暗さだ。いつもであれば、とっくに照明が灯っているような暗さだが節電のために暗いまま。ボールや背番号が見えにくい。しかも、試合のほとんどはトリコロール陣内、つまりは向こう側のピッチで行なわれている。そういえば鹿島戦は雨の記憶が多くないか?

このままで持ちこたえられるか、気になり始めた時間帯に千真が交代。投入されたのがクナン。
「やっぱりフォワード起用か。」
しかし、このリードした時のクナン投入が、とんでもない機能をする。

442の4の2列が、ますます深くなり2との間隔が大きくなって招いたピンチを防ぐ。まさに本物のディフェンシブ・フォワード。小笠原がフリーになるのを防ぐ。サイドバックのオーバーラップにはクナンがマークしてついていく。これでディフェンス陣がかなり楽になる。それでも、際どいシュートが何本も飛んでくるが、疲れが出てくる時間帯に、この交代は効果的だ。

耐えに耐えていた時間で得たコーナーキック。

クナンのヘディングのこぼれ玉を右脚で豪快に叩き込んだのは栗原。
「ヨシ!」
「きたぞ!!」

このゴールが鹿島反撃の合図となったか、ボールはトリコロールのゴール前を右に左に往復する。さらに激しい猛攻だ。ギリギリのところで跳ね返し続ける。そこで思った。
「あ、懐かしいな、この感覚。」
攻撃面ではなにもできず、相手の猛攻に耐え続ける。シュートもほとんど撃てない。しかし、気が付けばリードしており安心してゲームを見ることが出来る。それは、80年代後半から90年代前半にかけての読売戦のパターンだったのだ。私は、不意にそれを思い出した。そして、続けて思った。
「今日は鹿島に点は入らないな。」

残り時間が5分となると、トリコロールはディフンスラインからクナンにロングボールを多用。それを胸で受け止めるクナン。クナンにボールが入るだけで歓声が上がる。

残り時間が僅かになって栗原がボールを奪うと、ダイナミックに前にボールを運び、左にクナン、中央に栗原、右にアーリア。相手は一人しかいない。栗原が左のクナンにボールを渡す。クナンから逆サイドのアーリアに。ここで完全にシュートコースが空く。勝負あった。しかし、意外なことにアーリアはシュートを撃たずにボールを栗原に戻す。ここに飛び込んできた野沢がボールをさらって、鹿島ゴールにボールが転がり込む。栗原は空振り。
「さいこーだ!」
「素晴らしい!」
「なんていいゴールなんだ!」
そして、試合終了を告げる笛。
「オシャレすぎる!」
「最高だ。最高だよ。」
なんて素晴らしい幕切れだろう。オシャレなオウンゴールで試合終了。こんなに相手にダメージを与える勝利は初めてだ。

「みんな知ってるか。もうゴールデンウイークがくるっていうのに、まだ無敗だ。」
「2節しかやってないけどな。」
「でもな、名古屋と鹿島とやって勝ち点4だぜ。」
「しかも忘れてるだろうけど、名古屋戦は俊輔抜きでだ。」
「更にいうと、実は、まだファーストユニフォームは披露されていないぞ。」
「え、ほ、ほんとだ。」
順調な滑り出しを見せたトリコロール。やっと守備が機能して奪い取った大量点。この喜びが、ずっとずっと永遠に続いてほしい。僕たちにフットボールのある週末が帰ってきた。

今日のポイント

● 小林がペナルティエリア内で倒されて笛がならないと見るや、直後に報復をしっかりする栗原。
● ほとんどボールを下げることがない小椋と谷口。パスが縦に動く。
● クナンと並ぶと宮本のように小さく見える岩政。
● 最後のゴールはオウンゴールになったので良かったが、本来ならシュートを撃たなかったアーリアは最悪の選択肢を選んだ。いつも通りに問題有り。練習番長の脱却はいつだ。









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