malicia witness 2階の目線2011
J1リーグ 11-12シーズン

5月7日 アビスパ福岡  日産スタジアム   (石井和裕)

順調に勝ち点を積み重ねてきたトリコロール。2試合目のホームゲーム。今日もM・cafeに仲間が集まる。
「今日は最強の敵だよ。」
「どれだけ、うちが我慢できるかが重要だね。」
「監督が欲を出さないといいのだけれど・・・。」
これまでとは違う対戦相手だ。昇格組や下部リーグとの対戦にめっぽう弱いのはトリコロールの伝統とも言える。さらには、昨シーズンはホームゲームで大きく負け越している。前がかりに攻めてこないチームとの対戦が苦手なのだ。特に、今年はラインを深く保ってカウンターというのが基本戦術。昇格組との対戦は難しいゲームになることは間違えない。

スタンドの入りは寂しい13,000人ほど。新横浜駅前のタクシー運転手がホームゲーム開催に気が付かないほど。ゴールデンウイークでありながら当日券がのびないと日産スタジアムは厳しい。

福岡の選手登録は4231。

しかしゲームが始まってみれば433と442の併用にも見える流動的な布陣を敷いてきている。いずれのシステムだとしても福岡のポイントはシンプルにボールを前に運ぶこと。松浦、城後らが縦に短時間でゴール前へ。足下よりもスペースへ流し込むパスが多い。予想よりも守備のポイントは高い位置にある。

試合開始早々に気が付いたことがある。トリコロールにはハイボールに競り合わない選手がいる。中盤だけではなくコーナーキックのゴール前でも、それが見える。
「まずい。」
「最強の敵を相手にして緩すぎる。」
ピッチ上のムードは、まさに天皇杯の3回戦だ。苦戦は必至。

小林が惜しいシュートを放つが、ゴールを奪えず福岡が直線的なカウンター。中盤の選手が戻らないトリコロールは、あっという間に2−3の数的不利に。
「まずい!」
「足りない!!」
万事休すと思われたが一対一を飯倉がキャッチで止める。
「馬鹿野郎!」
「しっかり戻ってこいよ!」
「舐めた守備をするな!」
やられるとしたら前がかりになって裏を取られるとき、試合前に話をしていた通りの展開は心の準備があるだけに腹が立つ。
そして、コーナーキックから放たれたヘディングシュートがクロースバーに。
「ちゃんと競れよ!」
やはり、福岡は最強の敵だ。

15分を過ぎたあたりで、これまでの試合との違いが顕著になる。

これまでの442とは違い、小椋をセンターに栗原と中澤がストッパーのポジションに置くスリーバックのような布陣に。小椋の前の中盤の底に俊輔がポジションをとってパスを捌く。本来ならば中盤の底にいるはずの谷口が高い位置に長時間いることが多い。攻撃面では、昨年にも見られた、低い位置で俊輔がロングパスを狙う闘い方だ。

大黒の見事なボレーは副審の誤審でゴールキックに。ときたまチャンスはある。しかし全体的には、小椋や俊輔がボールを持たされている展開が長い。

破綻は、この陣形から。

俊輔が中盤の底に位置しゴール前にボールを運ぶ。奪われる。まずは、ここで谷口か小椋が福岡の縦への突破を防ぐのが常なのだが、そこにいるのは谷口でも小椋でもなく俊輔。俊輔が中盤のそこにいれば谷口と小椋は、いつもとは違う場所にいることになる。中盤の底に一人の俊輔があっさりとかわされドリブル突破を許しゴールに迫られる危機。パスでボールが右に。それはスリーバック状態の外側のスペースだ。しかも中央に栗原不在。前に行ったままで戻っていない。中央には中澤のみ。右からは小林が戻るが戻りきれない。パスで中澤は外に注意を向けさせられ、その瞬間に、逆にパスは、簡単に中央に戻され、走り込んできていた城後にゴールを決められる。
「やっぱり決められた。」
「だから、前がかりになるなっていうのに。」
「ちゃんと442のラインを敷けよ。」

そんなことで失点をしたのにもかかわらず栗原は、前にボールをドリブルで運ぶ。対する福岡は、先制で、さらに厳しい守備で臨んでくる。特に俊輔に対する厳しいチェックを徹底。俊輔がボールを持つと2名以上でプレッシャーをかける。やっかいなのは、俊輔がプレッシャーをかけられる場所がサイドではなく中央で、しかもディフェンスラインの直前だということだ。

2失点目はまったくのノープレッシャー。右のスペースから容易くグランダーのクロスを入れられる。ディフェンスラインの前のスペースに走り込んできた城後がダイレクトでゴールに流し込む技ありのシュート。だが、まったく誰も城後にプレッシャーをかけにいかないノーマークのシュート。
「なんでフリーなんだよ!」
「手抜きやってんじゃねーよ!」
ここにも小椋と谷口がいるべきなのだが、城後に最も近い位置にいた(しかし背を向けていた)のが俊輔だったことから、いかに、これまでの陣形とは違った闘い方になっていしまっているかがわかる。
「最悪だ。予想通りの展開じゃないか。」
「なんで、これまでの442をやれないんだ。」
直後に前半終了を告げる笛。ブーイング。
「ちょっと勝っただけで、なんで違うことをやろうとするんだよ。」
「スリーバックにして両サイドをスカスカにして、何回、同じパターンでやられてるんだよ。」
このスリーバックが監督の指示によるものなのか、それとも中盤や最終ラインの選手が守備を怠ったために生まれてしまった産物なのか、それは試合後の記者会見でも明らかにはなっていない。しかし、一つ確実なのは、前半45分間に、この陣形を修正することは出来なかったという事実だ。

怒りと不安を抱えてハーフタイムに入る。
このスリーバックが監督の指示なのか?なぜ俊輔は中盤の底にいるのか?守備が緩いのは相手を舐めてかかったからなのか?さまざまな言葉が飛び交う。

後半が始まる。

あっという間に1点を返し空気を変える。たった10秒ほどのプレーでスタンドは「追いつくぞ」というムードに。ピッチ上も、どうやら4バックでスタートしている。それでも、すぎに左から崩されて、あわやのミドルを放たれる。さらには、何度目だろう、城後に、中央で裏を取られ飯倉は一対一。次は左からの大ピンチ。1点差となったものの、逆に追加点で突き放されそうな決定機の連続。この試合、落ち着かない後半となりそうだ。

大黒にとって不運だったのは、ユウジーニョやクナンの前線からの守備の必要性が認識されていなかったこと。この試合、前線から守備がなくなったことで、福岡の再三の速攻を許すことが明らかになった。守備のテコ入れの必要性もあって大黒はユウジーニョと交代する。

またしても飯倉が一対一を止めピンチを回避するが、直後にユウジーニョから千真へのパスで千真が一対一に。こちらもシュートを止められるが、この試合で最初のチャンスらしいチャンスを創り出す。

千真とユウジーニョのツートップになって期待の膨らむシーンが増えるが、中盤の構成は谷口が前で俊輔が後ろのまま。これまでの試合と比較して俊輔からのロングボール展開が多くなる。そして狙われ続ける俊輔は守備面でのリスクが高いまま。

俊輔のフリーキックは好調だ。枠を捉えキーパーが弾く。こぼれ玉を小林がシュート。ネットが揺れる。
「決めた!」
「やったか・・・。」
同点かと一瞬上がった歓声はため息に変わる。キーパーがシュートを弾き、ネットが揺れたのは外からだった。観客は13,000人ほどと寂しい入りだったが、手拍子のボリュームがぐーんと上がる。まるで40,000人クラスの手拍子。あんなだらしない失点で負けるわけにはいかないのだ。対戦相手は最下位、勝ち点ゼロ。それでもスタンドが試合前から緩い空気に包まれることがなかった訳。それは雨天にここにきているファン・サポーターが本物の声援の為にココに来ているから。やっと攻撃のカタチが出来かけてきた、ココからが勝負だ。

クナン投入。左サイドで俊輔とワンツー。裏に抜け出して見事なクロス。
「惜しい!」
「クナン、完全のフォワードの動きになっている!」
ユウジーニョとクナンが前に入ることで守備面では福岡の速攻を封じ、徐々に主導権を握り始める。

70分。まだまだ時間は十分にあるが、最終ラインや俊輔からクナンへのロングボールばかりになる。
「放り込んでばかりじゃ点なんてとれないよ!」
「中村、そこじゃない。サイドから攻めろ。」
「もっと前だよ!」
たとえ、百歩譲ってロングボールを放り込むにしても、サイドから入れるのは小学生でもわかる定石。しかし、中央にいる俊輔や中澤からまっすぐ縦に放り込んでいるわけで、これでは得点の確率は高くない。それを繰り返すくらいに冷静さを失っているのか。

福岡の速攻は減ったものの、ボール奪取の機会を虎視眈々と狙っているのが解る。最終ラインの目の前でボールキープする俊輔に福岡は2人がかりで襲いかかる。気が抜けない。攻守両方の理由で俊輔はサイドにいるべきだ。

左のユウジーニョが中央の谷口へ。谷口が戻しユウジーニョがダイレクトでシュート。弧を描いたボールはゴールヘ。美しい軌跡、大きく揺れるゴールネット。ついに同点に追いつく。
「すげー!」
「よし同点だ!!」
「まだまだ同点だぞ!逆転しろ!」
「一気に行け!」

さらに、俊輔からグランダーのスルーパスがユウジーニョへ。同点になって、やっとやるべきプレーを思い出したかのようだ。ホーム日産スタジアムの雰囲気に浮き足立つ福岡はパスミスが目立つ。副審の旗が揚がりスタンドからは歓声。

中央の俊輔がシュートと見せかけて右の兵藤に。兵藤が反転して素早くシュート。不意を突かれたゴールキーパーはキャッチできずにボールを弾く。ボールはクナンの前に。ゴール前には何人が詰めていただろう。大外にボールが転がる。ユウジーニョが角度のないまさかのところから思いっきり、それでいてコントロールされたシュート。ゴールキーパーが身体をまっすぐに伸ばしたまま跳んで落ちる。その右側にシュートは弾道をとって逆サイドのネットに。一瞬のことだが、つぶさにそれが見える。
「うおー!!」
「すげーぞ!」
「やった!」
0−2からの逆転に喜びが爆発する。
「石井さん、あっちの席だろ!」
気が付けば、自分の席とまったく違う場所にいる。心無しか脛が痛い。

でも、ずっと喜んでいるわけにはいかない。すぐに右サイドを突破されピンチ。
「守りに入るなよ!」
「この試合はわからないぞ!」
福岡は広島時代にこのスタジアムでゴールを挙げている高橋を投入。木村監督は、素早く手を打ち、俊輔を下げる。最も高い失点のリスクを排除する。

残り時間をどう使うか。チャンスがあればゴールを狙うことが重要だ。ただのコーナーキープではたいした時間を稼ぐことは出来ない。ユウジーニョが、アーリアが、シュートを放つ。これも必要。脅威がなければ福岡が勢い込んでボールを奪いにくる。
「えー長いよ!」
「のびちゃうだろ!」
カップヌードルと一緒に表示されたアディッショナルタイムは4分。右サイドでボールを回す。2階席のほんの一角だからだけだが、パスに合わせて「オーレ!」の声が起きる。この時間帯にパス回しが出来れば勝利の時間は早くやってくる。

やっと落ち着いたゲームは4分余りのアディッショナルタイムを終えて終了する。試合終了の笛を大歓声がかき消す。
「よく勝ったなー。」
「あー凄げー試合だった。」
試合後にリリースされた監督・選手コメントには、なぜスリーバックになったのか、ハッキリしたことは書かれていなかった。だが、最強の敵を倒して勝ち点3。無敗は続いている。いわゆる「馬鹿試合」だったが、こういう試合を勝てなかったのがトリコロールだった。強さが蘇ってきたことは間違えない。あとは、もう少し。
「442を継続しろよ。」


今日のポイント

● ユウジーニョはシュートが下手だったはずなのだが。
● 選手交代のタイミングが早かった木村監督。
● 見事なレフリングだった家本さん。うちは相性が良い。
● 栗原が両手に風船を持つシーンはファンタジー。









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