malicia witness 2階の目線2011 | |||
J1リーグ 11-12シーズン 5月21日 ヴァンフォーレ甲府 日産スタジアム (石井和裕) 試合前にワンドリンクを片手に今日の試合展開予想や注目選手を語り合うのは楽しい。試合開始1位時間前から30分間限定で開催している「malicia × M cafe」は参加者が増え、会話の白熱度も増している。この日の注目のポイントは2つ。1つ目は遠くの位置から弧を描いて走り込んでくるマイクと、そこに合わせて曲げてくるクロスをどのように防ぐか。2つ目は谷口トップ下の役割がどのようになるか。広島戦は2得点できたものの、訳も解らずの3失点。守備の立て直しは急務だ。そこにきてシステムの変更ともなれば、一抹の不安は誰にでもある。 「どーせ、自然と谷口のワントップになるんだよ。」 甲府の攻撃の起点は中盤の底の伊東。そして武器のクロスは右の市川、左の吉田から供給される。フォワード登録されている永里(なでしこジャパンでブンデスリーガで活躍する永里の兄)も、ほとんどサイドでプレーする。 試合が始まって驚く。甲府の両サイドを完全制圧。谷口トップ下のダイヤモンド型の中盤は両サイドのスペースを空けてつけ込まれる隙を作るのではないか、と懸念されていたが、千真、大黒、谷口の3人でしっかりと両サイドを押さえ込んでしまっているのだ。 中央に谷口、左右に千真と大黒が開く。ちょうど甲府の4人のバックの間に3人が入る構図だ。これで3人を4人が意識する必要が生じて両サイドバックはオーバーラップすることが出来なくなる。さらに谷口は、伊東がボールを持てばプレッシャーをかけにいく。これで甲府のキーマンだった3人を完全に封じることに成功する。 まずは千真が甲府のディフェンスラインの裏を取る。続いて大黒が裏に抜ける。甲府のディフェンスラインが揃わない。5番の黒人選手・ダニエルが遅れてオフサイド崩れ。そこを逃さないのは大黒の真骨頂だ。 「あの外人、怪しいぜ。」 「三浦の割には守備のラインがルーズだ。」 三浦監督といえば天敵。フラットな442でコンパクトにスペースを消してくるのが持ち味。いつもトリコロールは、攻め手を失い自陣でボールを回しているうちに試合が終盤になり勝ち点を落とすというパターン。大宮、神戸、札幌、チームが違っても常に三浦相手に繰り返してきた。ところが試合開始5分で綻びが見える。 さらにロングボールでラインの裏。千真がGKと一対一。しかし防がれる。 「惜しい!」 「いや、あれは決めないと!!」 「これは決めてくれよ!!」 「でも、もう3回も裏をとれてるぜ。これはいけるんじゃないか。」 「確かに三浦っぽくない。」 甲府は攻め手を失う。両サイドが上がれない。ボールを5番の外人に戻す。なんでもないパスだがトラップに手間取り3タッチ。 「この外人、そうとうヤバいだろ。たぶん下手だぜ。」 その怪しい5番の外人のパスをカットして小林がドリブル。コーナーキックを得る。 「来た!」 ニアにポジションをとった谷口が叩き込む。 「よし!」 「やった!」 高い打点の見事なシュートがゴールネットをゆらす。 「いやー見事だ。」 「一点取れちゃったね。」 「これは甲府の守備が整わないうちに畳み掛けたいな。」 拍子抜けなくらいに簡単に奪うことが出来た先制点。これで試合の主導権を握れる。 俊輔のポジションは深め。だが動きすぎることなく、基本的には右サイドのやや内側にポジションをとる。今日は、いつもに増してボールが停滞せずによく動く。特に右サイドは小林と俊輔で押し込んで制圧している。 浮き球。谷口が黒人の5番を背負う。競り合いの中で、なぜか黒人の5番は後ろに崩れて尻餅をつく。 「弱い!」 「なんだあいつ!?」 「弱すぎ!!」 その一瞬の言葉が終わらないうちに千真が右サイドの裏をとる。素晴らしいスルーパスが右脚に出る。そのままシュートを放てる。 「撃て!」 「撃て!」 「切り返すのかよ!」 切り返して左足に持ち替える。ディフェンダーが2人、ゴールを塞ごうとする。そこに左足でコースを創り、振り抜いてシュート。 「うぉー!」 予想外に追加点は早い時間。しかもエースの見事な意外性があるゴール。喜びを突き上げ、ボルテージが高まる。 「すげーな。」 「わざわざ難しくして、凄いゴールを決めやがった。」 「よーし、ここは押せ押せだぞ。」 「しかし、あの黒人は弱いな。」 「久々に出たな、身体能力の低い黒人選手。」 さらに、俊輔が左サイドから右足のミドルシュート。これはGKに阻まれるが、追加点の気配がぷんぷん臭う。とにかく甲府は中盤の守備がルーズすぎる。序盤に長いボールで裏を狙ったことが甲府の最終ラインの位置取りを混乱させている。しかも、休むことなく大黒が駆け引きしている。谷口も仕掛ける。 20分を過ぎてシュックリとボールを回す。 「暑いし、ここはちょっと休憩タイムかな。」 「じっくりいってもイイね。」 甲府のプレッシャーがかからない。好きなようにボールが回る。 「オーレ!」 声が出る。 下がってボールを受けた千真が左タッチライン際を駆け上がっていた波戸に。波戸がマイナスボールを戻し、走り込んできた千真が前に押し出したボールを大黒がゴールに流し込む。抜け目ない。 「きたー!」 「きめた!」 「素晴らしい!!」 無駄なパス回しではなく、完全に試合の流れを引き寄せて崩し切ってのゴール。こんなゴールは久しく見ていない。驚きのゴールだ。 「何本パスが通ったんだ?」 ゲーム再開。遂にゴール裏からもパス回しに「オーレ!」の声。これは、まさに「オーレ!」のかけ時だ。そして気が付く。福岡戦とは違って大黒が前線で守備をしている。ただコースを切るだけではなく、奪取のチャンスとなればスライディングも。これが、中盤の守備を大いに助ける。 ようやく甲府が得意のアーリークロス。市川からマイクに際どいボールを送り込む。30分を過ぎてのことだ。谷口を加えた前の3人の守備が見事に甲府の両サイドを押し込んでいる。 千真との競り合いで5番の外人が膝から崩れる。 「おいおい。」 「弱いなー。」 「大丈夫かあいつ。かなりヤバいぞ。」 目を離せない選手だ。何か起こしそうだ。 栗原から谷口に速いボールが入る。谷口は半身の体制から身体をひねりながらダイレクトで右のタッチライン際のスペースにパスを送る。またしてもオフサイド崩れで千真がスペースに走り込む。完全にフリーだ。 「ニアに来い!ニアだ!」 声が飛ぶ。ゴール前、ニアサイドには広大なスペースがある。そこにファーサイドから大黒が走り込んでくるのが見える。 「来た!ニアだ!!」 そこに千真からドンピシャのマイナスクロス。大黒の頭がボールをゴールに叩き込む。 「素晴らしい!!」 「これは凄い!!」 「お見事!」 なんともフォワードらしいゴールだ。大黒を見失っていたのは5番の黒人。 さて、話は飛んで試合後のこと。待ちに待って上映される本日のダイジェスト映像。美しい4ゴールを振り返って歓声を挙げる。そして、ダイジェスト映像は後半に触れること無くぷっつりと終わる。 「あ、やっぱり。」 「後半は無かったってことね。」 今日は完全に木村監督にやられた。序盤のロングボール攻勢と谷口のトップ下が勝因に間違えない。 今日のポイント ● 謎の助っ人?身体能力の低い黒人選手。 ● 能力の片鱗を見せた吉田。 ● 大量得点は良い守備から始まる。 ● 前からの守備で小椋の負担が軽減された。 |
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