malicia witness 2階の目線2011
J1リーグ 11-12シーズン

7月3日 川崎フロンターレ  日産スタジアム   (石井和裕)

「いきなりかよ!」
キックオフ直後のボールがタッチを割る。いきなりかよ、というのは、いきなり田中のスローイングとなることを示している。試合はブーイングから始まった。

あらためて説明するまでもないが、横浜F・マリノスはアジア連覇(日本では唯一)、天皇杯6回優勝(最多)、2年連続三冠制覇(唯一)の名門クラブ。1983-84年 天皇杯優勝 1985-86年 天皇杯優勝 1988-89年 天皇杯優勝 日本リーグ1部優勝 JSLカップ優勝 1989-90年 天皇杯優勝 日本リーグ1部優勝 JSLカップ優勝 1990-91年 JSLカップ優勝 1991-92年 天皇杯優勝 アジア・カップウイナーズ・カップ優勝 1992-93年 天皇杯優勝 アジア・カップウイナーズ・カップ優勝 1995-96年 Jリーグチャンピオンシップ優勝 2001-02年 Jリーグヤマザキナビスコカップ優勝 2003-04年 Jリーグ1st2nd完全優勝 2004-05年 Jリーグチャンピオンシップ優勝。これだけのタイトルを獲得してきた。メディアは「神奈川ダービー」と言いたいらしいが、格の違いは明白だ。
「川崎って無冠だろ?」

「カップ戦すら買ったこと無いよな。」
「いや、あいつらタイトル獲ってるぞ。しかも、俺たちには絶対に獲れない。」
「何それ?」
「J2優勝だ。しかも2回も。」
「なんだってー?それは、なかなか獲れないタイトルだろ。」
「あの浦和でも獲っていないぞ。」

川崎ディフェンスラインの裏にボールを送り込む。ストライカーらしく大黒が狙い続ける。足元で慎重に繋ぐ手間をかけない。俊輔を探して脚が止まることもない。実にストレスを感じさせない闘いだ。誰が見ても面白いと言うだろう。湧き上がる歓声と低く響くブーイング。遺恨はフットボールの美味しいスパイスだ。

圧倒的優位に進める試合は最初のコーナーキックで一変する。不運とは言えないオウンゴール。コーナーキックの守備のマズさは開幕以来、いっこうに改善されない。頑なにゾーンで守る、そのやり方に欠陥があるのは明白だ。セカンドボールを何度、あの位置から撃たれただろう。

スタンドの手拍子の音量が下がり、アーリアの積極性を削ぐ。試合展開は一気に川崎に傾きスタンドは悲鳴に包まれる。相馬監督采配の真骨頂。ゴール前に白いユニフォームが殺到し、際どいクロスに肝を冷やす。時には2-4の数的不利、時に飯倉との一対一。
「このままじゃ、何点取られるかわからないぞ。」
「倒れるな!」
「勝負しろ!」

2失点目の覚悟も胸に手拍子を続ける。崩され続ける左サイド。ギリギリのところを飯倉、中澤、栗原が食い止めてくれている。そんな重苦しい状況の時間に栗原がロングボールを入れる。後ろからの浮き玉を大黒がまさかのスーパートラップ。歓声を挙げる間もなく、大黒はボールを川崎ゴールに叩き込んでいた。
「すげー!」
フラストレーションから解放された私達は弾ける。揉みくちゃになって喜ぶ。そして、流れを辛うじて引き戻す。

ゴール前で谷口が倒れる。ゴール正面やや左。
「栗原、お前が行け!」
「ぶち込め!」
「3と8の顔を狙え!」
「あの意気地なしなら顔を狙えば逃げるぞ!」
谷口が撃つ。壁の下を狙うが壁は飛ばない。これが前半最後の見せ場。前半が終わる。

「闘え!」
「闘えない奴は引っ込んでいいぞ!」
殺気立つスタンド、積み重なる因縁、繰り返される大ピンチ、そして起死回生のビッグゴール。それでも闘えない選手がピッチにいることは実に残念だ。
「こういう試合は逃げちゃダメなんだよ。弱気を見せたらつけ込まれるじゃないか。」

実は木村監督も同じことを考えていたようだ。前半でアーリアが下がり千真が入る。ピッチ上には火花が散りそうだ。特に中澤は栗原を上回る気迫。鬼だ。一対一をことごとく止める。

千真のヘディングシュートは叩きつけ過ぎて枠の外。
「惜しい!」
「いいぞ千真!」
「馬鹿野郎!フリーじゃねぇか!」
一つのプレーに感情が大きく揺れる。カタチ通りの応援ではいられない、一つ一つのプレーに身体が反応する。

後半に入っても劣勢が続く。決定的なピンチが何度も訪れる。緊張感がスタジアムを包む。声援とブーイングは衰えない。失点直後には、ややボリュームが落ちた手拍子も再び音量を増す。

決着は突然。千真のミドルシュートがゴールに突き刺さる。一瞬の間を開けることなくスタンドは総立ち。感嘆こ唸りが上がる。
「すげーぞ千真!」
リードを奪ってブーイングの音量を更に上げる。

激しい試合に途中交代で入るのは難しい。
「まずい、クナンがぜんぜん試合に入れていないよ。」
トラップミス、決定的なピンチを招くパスミス。プレーに精彩を欠く。
さらに、暑さで選手が消耗する。脚が攣って倒れるのは兵藤だ。

選手交代は兵藤ではなくユウジーニョ。入るのは天野。やはり木村監督は闘えない選手を使わない。闘える選手として天野をセレクトしてきた。残り時間は3分+アディショナルタイム。川崎の猛攻がくる。何が何でも止めなければならない。
兵藤に声援が飛ぶ。
「頑張れ!」
「頼む、耐えてくれ。」

相変わらず数秒しか時間を稼げないコーナーキープに苛立ちながら、長いアディショナルタイムに手拍子を打つ。川崎の切り札・小林のシュートはポスト。さらには中澤が倒れ緊迫感が高まる。しかし、直後にタイムアップ。

川崎との遺恨マッチは終わった。格別の劇勝。沸き上がる歓声。選手を賞賛する声。熱気は試合終了後も簡単には冷めない。やはりフットボールには遺恨が必要だ。因縁が遺恨を呼び、遺恨が興味をかき立て、興味が緊迫感を引き起こす。年に何度かは、このようなアツい遺恨マッチがあって良い。この試合を見た人は、きっとまたスタジアムに足を運ぶ。そして、遺恨は簡単には解けない。


今日のポイント

● 常に強気だった木村采配。
● ゴール前に立ちはだかった中澤と栗原。
● 逆サイドへのワンタッチのパスが光った大黒。
● MVPは飯倉。ディフェンスラインはズタズタに崩されていた。
● 意味不明というよりも文字が小さくて読めなかった謎の横断幕。










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