malicia witness 2階の目線2010
J1リーグ 10-11シーズン

3月20日 川崎フロンターレ  日産スタジアム   (石井和裕)

サポーターはクラブを応援する。一つ一つのプレーに驚きと喜びを感じながら、大きな声を出し、拍手・手拍子で選手のプレーを後押しする。選手はプレーでスタンドにアピールする。評価されるのは試合の中でのパフォーマンス。いかにして勝つか、いかにしてスタンドを沸かせるか。そして、サポーターは選手に感謝する。この日、中村俊輔と山瀬功治が交代で退く時、前節以上に大きな拍手が鳴り止まなかった。そして、さらに、バックスタンド2階はスタンディングオベーションで、大活躍した選手に感謝のキモチを伝えた。
本当は当たり前のこと、しかし忘れていた幸せなスタジアムが戻ってきた。
「次の土曜日が待ち遠しいと思って一週間を過ごしたのは久しぶりだよ。」
ゲームを終え、ダイジェスト映像を見届けた仲間の顔は、みな笑顔だ。

「撃て!」という間もない。


山瀬のボールがポストに当り、落胆しかけたそのときに、クリアボールは中村俊輔の元へ。ワンタッチで正確に止めたボールを素早くワンステップでシュート。大きく弧を描くこともなく、ずずっとボールはゴールマウスに。
「入るぞ!」「きた!」
ゴールネットが揺れ、無惨にも、そのネットに川島が絡み付いていくのが見える。
「すげっ!」
「やった!」
もう、その後は狂乱だ。いつもの仲間だけではなく、近くの席の見知らぬ人も一緒にもみくちゃになる。

布陣は正真正銘のツートップ。

山瀬はトップの位置で渡邉と並ぶ。狩野は兵藤と、時よりポジションを交換する。しっかりとスペースを埋めて守るため、昨年のような無駄な走りがない。だから、終盤に動きが落ちることがないのだろう。そして、山瀬がフォワードで魅せる。
サイドをコンビネーションで繋ぎ、渡邉がドリブル。明らかに、川崎の守備は中村俊輔を警戒している。その隙をついて、山瀬がディフェンスラインの裏に走り込み、そこにスルーパス。うけた山瀬は迷うことなくゴールに向かい、川島の手前でボールを手放し、コロコロとボールはゴールマウスへ。

喜びと驚きが交錯し、生まれるのは熱狂。ホーム開幕戦を上回る35,000人以上が詰めかけたスタンドは、沈黙するアウエースタンドを除くと大興奮で揺れる。特に山瀬は、この2年間、不遇のシーズンを過ごしているだけに、サポーターにとってもひときわゴールの喜びは大きい。

元旦からロンドンに移住した仲間がTwitterにツイートした。
「12分で2-0! 何が起こってるんだー!」(現地時間5:20)

川崎の攻撃はチグハグ。前線のチョン・テセに長いボールを送り込むばかり。トリコロールが両サイドを制圧しているので、川崎の両サイドバックが攻撃に絡むことが出来ないことが大きい。
「あんなのJ2サッカーなんだよ。俺は去年から、あんな攻撃外人任せのサッカーなんて認めていなかった。」
ピッチ上のブラジル人はレナチーニョだけ。しかも、レナチーニョはファールを求めて倒れているばかり。ついには主審の西村さんの判定に噛み付く。それを止める川崎の選手たち。
「おい、その外人、森になだめられるなんて人として最低だぞ!」
トリコロールのサイド攻撃に恐れを抱き、川崎は完全に崩壊した。

さらにだめ押し。

強風の中の試合だ。浮き球の処理は厄介だ。川崎のペナルティエリアの上に、ふらふらと上がったボール。ヘディングをミスし、川崎の選手の背中に当たる。
「マジですか?」
強風の影響とはいえ、プロとして考えられないプレー。あり得ないプレーによりボールは兵藤の手に当たる。
「ハンド?」
ホイッスルは鳴らず、山瀬がまっすぐにゴールに蹴り込む。
「決まった!」
川崎の選手たちはハンドをアピールしたそうだったが、その前のプレーが、あまりに情けなかったので、スタジアム内はファールをアピールできるような雰囲気にはない。もうすでに、3−0の喜びが爆発している。

前半を終え3−0。
「小宮山がいるチームはダメだなー。」
「小宮山がいるチームって弱いな。」
「小宮山が疫病神なんじゃネェの。」
ハーフタイムに、いくらでも軽口を叩ける。
「俺は狩野にゴールしてほしいんだよ。中村がゴールした試合で狩野もゴールって最高じゃないか。」

「さ、後半は、あの弱虫がこっち側に来るぞ。」
「いや、あれだけダメだと来ないかもよ。」
前半で退くのではないかという不安もあったが、無事に小宮山は後半もピッチに姿を現した。8番がボールに触れば絶大なブーイング。だが、考えてみると、その大半はスローインの時だったのかもしれない。

後半から川崎が立て直すかと思ったが、ハーフタイムには何もなかったようだ。山瀬の左足の鋭いシュートで猛攻の幕を開ける。バックスタンド側にポジションを取ることになった小宮山はブーイングにビビったわけではないだろうが、少しトリコロルが距離を寄せると、すぐにボールを下げる。
「一人、コーキチサッカーの継承者だな。」
「確実にフロンターレに新風を吹き込ませている。」
「今までのフロンターレにはない、新しいスタイルを伝来させているな。」
「ザビエルみたいだ。」

カウンターのボールが波戸に渡りドリブルで突破。長いクロスをファーサイドに送り込みボレーで合わせる。
「惜しい!」
「面白い!!」
「決まればプレミアみたいだった。」
木村監督のフットボールは、無駄なパスがなく、シンプルに早く、とにかく攻撃がダイナミックで面白いのだ。元々は高いポテンシャルを持っている選手たちが、楽しそうにプレーしている。ゴール前に現れる選手の数が多い。無駄走りは少なく、それでいて、前の選手を追い抜くシーンもある。スローダウンしたかと思えば、急にテンポアップ。様々な仕掛けがあるが、共通しているのはゴールを奪い取ってやろうという意識。

迫力ある山瀬のドリブルでコーナーキックをゲット。中村俊輔が蹴り、それを栗原が決める。早すぎるジャンプに見えた。しかし栗原は長い滞空時間で中村俊輔のボールを支配し、グンと突き出した頭で、ボールを地面に叩き付けた。圧巻のゴール。「空飛ぶ要塞・栗原勇蔵」だ。
「すんげー。」
「なんだありゃぁ。」
「栗原凄すぎる。だってジャンプ、早すぎただろう。」
「俺もそう思った。」
「なんかあれ、何でしたっけ・・・カメルーンの・・・。」
「オマンビーク!」
「そうそう、オマンビーク。あいつみたいでしたね。」
「しかし古いなー。あれ、いつだっけ?」
「確かイタリア大会ってことは90年。」
「20年前じゃねーか。」
「じゃぁ、他に、あのヘディングの例えとしたら・・・スクウラビー。」
「それもイタリア90で20年前だよ!」
もう、笑いが止まらないゴールラッシュだ。

大きく点差が開き、怪我の回復が十分ではない、中村俊輔が交代。万雷の拍手とはこのこと。バックスタンド2階席にはスタンディングオベーションが起こる。まさに、今日、この時を提供してくれた中村俊輔への感謝の拍手だ。

登場するアーリア。
「どっちの8番が本物か見せてみろ!」
山瀬の2ゴールで、アーリアはポジションが危うくなった。きっとゴールをどん欲に狙ってくるだろう。

山瀬の激走に水を差す「風船ホイッスル」もあり、中村俊輔が退いた後も見せ場が沢山。
「アドバンテージとれよ。っていうか吹くなよ。」
「リバプールのアレだよ、ビーチボールゴール。あれさえなかったら、ここで笛を吹くこともなかっただろうに。」
山瀬はハットトリックをふいにした。

中村俊輔が抜けてもボールの動きが止まらない。狩野が攻撃のタクトを振り続ける。右に左に動き長短パスを使い分ける。素早く長いサイドチェンジをデイフェンスラインの裏に送り込むプレーは昨年には見られなかったプレー。前半の左脚によるミドルシュートもそうだが、明らかに中村俊輔のプレーに影響を受けている。

その狩野が下がり河合がイン。直後に川崎は稲本がアウト。

「あー稲本がいたのか。」
「気が付かなかった。」
「攻守に消えてたなー。」

小宮山に右脚でシュートを撃たれる。珍しくスローイン以外のプレーをした。すると川崎ゴール裏から小宮山コール。そこで不意にK林さんが叫ぶ。
「うるせー!!!!!!!!!!!!!」
突如の絶叫にみなが固まる。そして笑い。いつもの仲間は笑っていいものとわかっているから笑うが、私たちの前の列の人たちは笑って良いものか悪いものかがわからない。なにしろ突然、怒りのの大絶叫だ。肩を振るわせて笑いをこらえている。
「だってマジでうるさいんだよ。」

山瀬交代。中村俊輔に劣らない大拍手。ゴール裏もコールをするのではなく拍手でピッチから送り出す。みんな、こういう山瀬のプレーを待っていた。こんな楽しいfootballに期待していた。

さて、次のホームゲームが楽しみだ。特に大きくメンバーが入れ替わったわけではないのにも関わらず、レギュラー争いは熾烈だ。特に、昨年は「育成枠」で出場機会を得ていた選手たちの多くはベンチ入りすら出来ていない。出場するためには、自らが、その存在価値を木村監督に示さなければならない。練習で頑張るだけではなく、価値を伝え競争に勝たなければならないのだ。これから、若手選手の逆襲が始まるに違いない。そしてチャンスもある。きっと、金井は燃えているだろう。なにしろ、途中出場した河合のプレーは、まったく全盛期とはほど遠い出来だった。あの河合のプレーと比べれば、金井には勝てる自信があるだろう。考えてみると4−0の安全圏での河合の起用は、ベストチョイスといえる。きっと木村監督は河合のゲーム感が不十分であることを見越して起用したのだろう。もし活躍すれば収穫。逆に活躍できなくても無意味ではない。なぜなら、その出来を見て金井はチャンスを得たとして練習に熱が入る。そして、河合は先発出場できないどころか3節までは確保していたベンチ入りの座すら危ういことを自覚できるからだ。間違っても「なぜ俺を起用しないんだ。」などというわがままな自己主張をすることは出来ない。次の試合に効果をもたらす、絶妙な選手交代だったといえる。

2試合で7得点、失点はゼロ。ますますfootballが面白い。次のホームゲームが待ち遠しい。


今日のポイント

●ディフェンスラインの裏を狙った仕掛けを多発。
●狩野が前にいる方が、左サイドの川崎守備陣は深い守りになる。
●栗原がフリーキックを蹴るならば小宮山の顔を狙え。
●ゴールのとき以外はトラップミスが多かった中村俊輔。
●風船はやめた方が良い。

[今日の査定]心が躍るね。











無冠の敵に対して、歴史の違いを見せつけた、素晴らしい横断幕。


木村監督を狙ってベンチ前に殺到する報道陣のカメラ。


お天気にも恵まれて、バックスタンドは、ほぼ埋まった。
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