malicia witness 2階の目線2010
J1リーグ 10-11シーズン

4月3日 清水エスパルス  日産スタジアム   (石井和裕)

チャンピオンズリーグ圏内の上位対決。すっかり忘れ去っていた、この甘い響きを存分に味わえるゲーム内容に期待が膨らむ。きっと攻撃的なフットボールで撃ち合いが見れるだろう。試合前には、まさか、その期待が裏切られるとは思わなかった・・・。

ポイントは先発メンバー。清水(ジロー)の起用だ。

ジローは左サイドのMFでスタートした。しかし、その後、私たちは彼のポジションを見失う。そして、ピッチ上の選手たち、特に、中村俊輔と兵藤、さらには渡邉や波戸、いや、他の全ての選手たちも、前節までとは違い、悩みながらプレーするかのようにぎこちなくピッチを走った。

小椋が小野に挨拶代わりのファール。

そのとき、ジローはピッチ中央、中盤の底にいた。そして、プレー再開。そのとき、ジローは中央からやや左でゆったりと走っていた。誰をマークするわけでもなく、左サイドの本来のポジションをカバーするわけでもなく。それが命取り。失点に繋がる。

簡単に壁パスを2つ。絶妙のタイミングでクロス。中澤と波戸がかろうじて跳ね返す。本来であればボランチの選手がこぼれ玉をフォローするエリアだが、そこにはどフリーの岡崎が待っていたのだ。

木村監督には、いきなりの劣勢の経験がない。どうする。

「うーん、小野はよくなっているなぁ。」
「浦和時代は、こんなに走らなかったよ。」
守備でも見事。ジローがドリブルするボールを後ろから走り込んでさらってみせる。

清水、最初のコーナーキックも左サイドの突破から。ジローが中に絞り込んだポジションをとっているため、左サイドががら空き。そこにサイドバック・辻尾のドリブルを許す。そしてコーナーキックからの岡崎のヘッド。
「うぉ!」
「やられた!!」
弾丸シュートは運良く飯倉の真正面。肝を冷やす。

小野の3回目の汚いファール。罵声が飛ぶ。プレーの質は大幅に向上している小野だが、性格については治ったわけではないようだ。このフリーキックが、残念ながら中村俊輔の唯一の見せ場と鳴った。あとは痛みにピッチに倒れ込む25番の姿のみ。

今年の清水は堅い守備を特徴としている。人数をかけてブロックを作り、ボールを持つ敵をサイドに押し出していく。ここぞという場所では前後から挟み込んでボールを奪いにいく。この守備に手を焼いて、トリコロールは縦にボールを入れられない。中村俊輔もボールタッチが少なく、後ろに下がってきてしまう。さらには、中村俊輔が走り込むべきスペースにジローが先に走り込んでしまうために、前線での行き場を失う。
そんな最中に、足の甲を痛めてしまう。

中村がピッチ外に出る。水を補給するためにベンチの前で清水が水を飲む。そこに木村が近づいてきて何事かを告げる。
「さすがにジローにポジション修正を指示するだろ。」
「ここまでワガママ放題だったからな。あれじゃ、何回、左サイドを突破されるかわからないよ。」
清水は右サイドの守備的なポジションへ。ここで固定させて、自由自在にピッチを走り回るプレーを自重させるかと思われたが、それは中村俊輔が戻ってくるまでの暫定処置に過ぎなかった。11人が戻ると元のジローになっている。そして、小野に左サイドの大きなスペースを使われる。
「ここまで自分勝手にされるんだったら、交代させるしかないぞ。」
「ベンチ動いたね。」
「狩野だ。」

木村監督にとって不運だったのは、序盤で中村俊輔を下げて交代のカードを一枚切らなければならなくなったことだ。狩野はボランチの位置に入り、ますますジローのポジションは不明確になる。自由に動いて変化に富んだ攻撃を生み出すのは一概に悪いことではないのだが、本来のポジションが崩れ、味方が存在すべき場所に味方がいないことが生じるために攻撃のスピードが落ちてしまうのが問題だ。主には左MFに兵藤、右MFにジローというのが基本のようだが、頻繁に両者のポジションは入れ替わる、というよりジローの動きに、兵藤以外も含め、他の選手が押し出されていく。そして、その時々にポジションの穴が出来る。そこを確実に清水は突破していく。

「狩野は凄いボールを蹴れるようになったな。」
昨年までのコーナーキックと、今年のコーナーキックでは描く弧の美しさが違う。狩野のコーナーキックには美とチャンスが詰まっている。「日産伝家の宝刀セットプレー」が復活しつつあることは嬉しいことだ。5本目のコーナーキック。ボールを叩き付けるのは栗原。
「来たぞ!!」
「栗原!!!」
「惜しい!」
フィールドプレーヤーにヘディングシュートを跳ね返される。

2失点目も左サイドだ。

小野のフリーキックから、こぼれ玉を、またもや岡崎。さて、そのフリーキックを与えたその時だが、兵藤は右サイドにいた。では、左サイドの守備は誰が行なうべきだったのだろうか。結局、序盤から続く左サイドの守備の破綻は修正されることはなかった。

ハーフタイム。ジローに、どのような指示をするのか、もしくは交代させるではないか、などなどが話題の中心。

「交代だぞ。」
「やっぱり。」
「いや違う、栗原が交代だ。」
「あの失点のときの交錯か。」
怪我で2枚の交代カードを切ることになった。

バスティアニーニのいきなりのポストプレーから兵藤が抜け出しキーパーと一対一。
「行け!」
「撃て!」
「あー!!!」
「兵藤だったかぁ。」
「兵藤ならしかたない。」

直後に小野のクロスから山本を経由して飯倉と一対一。
「ヤバい!やられる!!」
「撃たれる!!」
だが幸運にも、シュートは枠を捉えずサイドネット。
「助かったぁ。」
「誰だよ、あのへたくそなシュート。」
「兵働だ。」
「あっちの兵働もペナルティエリアの中に入ると、イマイチだな。」
「でも名字が兵働で働くって文字だけに、よく働いている。」


何事も起こらないのではないかと思われた。もう何度目だっただろうか、コーナーキックでゴール前。中澤が倒される。
「PKだ!」
「誰が蹴るんだ。」
「ここは得点王を狙わせる渡邉か気分良く仕事をさせるために新外人だろ。」
「山瀬でも良いぞ。」
「あら、兵藤がボールを置いたぞ。」
「なに!?なんでもいいから決めてくれ。」
「いやな予感がする。」
「全選手、絶対に飛び込めよ。」
「こぼれ玉あるぞ!!」
「決めろ!!」

バックスタンド2階から見ると、兵藤の長い助走に我慢できず西部が、やや早いタイミングで動いた。
「よし、決まった!!」
そう思った。兵藤はコースをキッチリ狙って、パスを送るように右のインサイドキックで蹴っている。蹴り損ねなどあるわけがない。ところが、甘いコースに緩い球。皆が頭を抱える。

「早く替えろよ。二点差だぞ。」
「もう75分になっちまうよ。」
バスティアニーニはサイドに効果的なボールを流すことときより。しかしシュートが力ない。時折、裕介の左サイドが突破を見せるが、そのチャンスは多くない。スタンドのテンションも下がる。狩野からのクロスをフリーの山瀬が当り損ね。
「あー。」
「でも、山瀬のヘディングシュートなんて見たことないからなー。」
続いて、バスティアニーニから山瀬にスルーパス。今度は枠を外す右足の強いシュート。清水の脚は止まっている。この2点差を維持して逃げ切ろうという考えだろう。それなのに、トリコロースは攻め手に欠ける。このままでは悔いが残るゲーム展開だ。

突然の同点ゴール。

狩野のフリーキックはジローの頭をかすりゴールの中へ。
「よし!行け!」
「ここでジロー交代だ!」
立て続けのゴールを狙いバスティアニーニが突破。
「行け!自分で行け!」
「勝負しろ!!」
「あー。」
「遅い!!」
「追いつかれる。」
今度は山瀬の突破。バスティアニーニのシュートは跳ね返される。裕介の突破は大外に。走り込んできた波戸がボーレー。
「惜しい!!!」
残り10分間を切って猛攻だ。これまで、静かに戦況を観察していたスタンドが一気に盛り上がる。波戸の突破。山瀬がボレー。跳ね返されて兵藤が直接のロングシュート。西部にセーブされる。
「入らないのかー!!」
完全に清水の脚は止まっている。
「坂田を入れないのかよ。」
「ここはサイドからドリブル突破できる坂田だろ。」
時間は刻々と進んでいく。だが、ロスタイムは4分ある。

裕介のクロス。西部が跳ね返す。狩野のシュート。西部が飛び出したゴールマウスにシュートは向かっていったが、あと数センチのところでボスナーに跳ね返される。これが最後のチャンスだった。撃てども撃てどもゴールは遠い。

試合終了のホイッスルが鳴ると、2階席は足早に家路につく人たちが、どっと一気に階段を下りる。試合を終えた選手たちにねぎらいの拍手を送ろうとする人は多くない。この試合、何が悪かったのか、なぜジローはフル出場だったのか、交わす言葉は熱を帯びる。ダメな試合だった。でも、最後の10分間に、勝ち点を目指して猛攻を仕掛けれることが出来たのは、今年のチームがプロフェッショナルとして本物の闘う集団になりつつあることの証し。中村俊輔不在でも、サイドでパスを素早く繋いで、逆サイドに大きくグラウンダーのサイドチェンジをする、チームとしてのカタチを何度も披露した。だから、次の試合が楽しみだ。来週は何をしてくれるのか、週末が待ち遠しい。

試合に出れなかった選手たちよ、奮起せよ。時代遅れなワガママプレーをする選手をピッチに送り込んではいけない。まずは、チームで闘える選手が、先発メンバーの座を、奪い取ることだ。私たちのトリコロールは、これから、ますます進化する。


今日のポイント

●あまりに固かった清水の守備。抜け目ないサイド攻撃。
●無用なスライディングが減った小椋の守備。
●渡邉が守備でサイドに走るときは守備の組織が崩れているとき。
●トラップ下手すぎバスティアニーニ。
  サイドへの展開は素晴らしいのだが。
●風船はやめた方が良い。

[今日の査定]相手が強かった。












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