malicia witness 2階の目線2010
J1リーグ 10-11シーズン

4月17日 モンテディオ山形  NDソフトスタジアム山形   (石井和裕)

最小得点差の「1」。苦しい闘いだった。内容だけならば満足のいくものではない。だが、この北国での勝利は、悪天候の中で応援に駆けつけた私たちに大きな喜びを与えてくれた。ホームゴール裏はびっしり。バックスタンドは立ち見。ビジタースタンドがガラガラだったのは、自家用車での道中を雪に阻まれ到着できなかった人が多数いたこと、オフィシャルバスツアーが試合終了後に到着したこと、などが一因。アウエー遠征するサポーターならば、誰もが思うこと、それは「厳しい遠征であるほどにパッションが弾ける。」ということ。今回の山形遠征は、まさに心弾ける遠征となった。

山形新幹線は真っ白な世界を車窓に広げる。雪がちらつくなんてもんじゃない。山間部では吹雪に近い。東北地方の遅い春を試合とともに楽しむ予定だった今回の遠征で、さらに遅い冬を、私たちは再び味わうことになる。

県庁所在地にしては小さな駅を降りる。スタジアムへ直接行くならば天童まで新幹線で行くと良いのだが、私たちは山形駅で下車。駅前広場に出ると、山間部と同じように重たい雪が降っている。足下に注意しながらバスに乗り、霞城の近くに向かう。目的地はどら焼き屋。いつも大混雑で、予約をしなければ午前中でも欲しい商品を買うことが出来ないという噂の店だが、この天気で、さすがに人影が少ない。小さな店はトリコロールが完全ジャックした。
「この天気ならば、今日は贅沢言えないよ。どーんと蹴ってダーンと走って、とにかく1点。」
「ここまで厳しい環境のアウエーならば、そりゃ引分けでも御の字だよ。」

本来であれば、この日は桜が満開で祭が行われているはず。しかし桜はつぼみの上に雪が積もる珍しい風情。祭行事の全ては中止。ただ、この頃、天気予報通りに雪が小降りとなってくる。

山形駅前からバスに乗りスタジアムに向かう。最寄り駅ではないこともあって、ここから30分以上かかる。遠くの雪を抱いた山々を眺め、雪に埋まった田畑を抜ける。気が付けば、遠くに青空が見える。どうやら雪の中での観戦は避けられそうだ。

「すげー食い物だらけ。」
「食ってるなー。」
食のスタジアムといわれる通り、スタジアムの外周には様々なテントが並び、どのテントにも長蛇の列。その脇の桜の並木は、はやりつぼみ。スタジアムに入って、まず驚いた。ピッチは緑のターフ。雪が見事にトラックへかき出されている。そしてスタンドは足下が雪、雪、雪。しかし椅子はキレイに拭かれている。これならば、思う存分、声援を送ることが出来る。選手も普通にプレーできるだろう。

試合が始まる。注目の中村俊輔ファースとタッチ。スタンド全体から「おおっ」という声が漏れ、その後はため息。
「聞いた?今の。まだまだ名前だけでプレーできるんだね。」
「これは、相手はかなり過剰に意識するだろうからチャンスだろ。」
前節よりも、かなりボールは回っている。縦にパスも入る。ただ、山形の守備は見事に組織化されていて、なかなか決定的な突破をすることが出来ない。ただ、ファーストタッチでわかるように、中村俊輔への警戒は、かなり過剰に思える。ドリブルでかわされることを恐れているのか、ボールを持ってもなかなか奪いにこない。山形ディフェンス陣は距離を保ったまま。

中村俊輔は、ドリブルでいつものように仕掛ければ、山形の守備陣形は崩れるように思える。しかし、やらない。あれだけ相手が恐れているのに、ボールを軽く回すばかり。おそらく、かなり脚の状態が悪いのだろう。さらには、周囲の選手がパスを受けるために仕掛けるわけでもなし。なかなかチャンスが広がらない。唯一の際どいシーンは坂田のシュートがクロスバーに直撃。

悪くないといえば悪くない。ピンチらしいピンチもない。だが、ゴールを奪える香りがない。なんらかの打開策が必要だ。中村俊輔が自ら仕掛けるか、周囲がパスを引き出すか、それとも、中村俊輔を下げるか・・・。

前半と大きく変わらない緊迫感のある中盤のせめぎ合いの中でセットプレーのチャンンスを得る。蹴るのは中村俊輔。狙うは中澤、栗原。いや、違った。ニアに走り込んだ坂田が頭から飛び込むのが見える。ボールはゴールに向かって飛びネットが揺れる。
「よし!!!」
「いいぞ坂田!!」

後半に中村俊輔がプレーらしいプレーをしたのは、この止まったボールを蹴ったフリーキックのみといっても良い。あとは、ほとんど何も出来ていないに等しい。逆に、中村俊輔が動いて出来る右サイドの守備の穴を山形のカウンターに晒すことも多数。
「右サイドにディフェンシブな選手を入れた方が良いだろ。」
「いや、ディフェンシブじゃダメだ。山形はもっと攻勢をかけてくる。」
「攻撃的な選手を右に入れて、逆に山形にプレッシャーをかけなきゃ。水沼がいるじゃないか。」
「木村!動くなら今だぞ!!」
だが、木村監督は動かない。

中村俊輔はリードを守るためにボールをキープすることを好んでか、ディフェンスラインからボールを受けやすいポジションにまで下がる。中村俊輔が不在となったスペースは山形の選手が自由にフリーで使える空間となる。劣勢の時間が長くなる。栗原、小椋、中澤が跳ね返す。そして2度の決定機を飯倉が救う。さらには、山形の選手たちが審判の笛に対してナーバスな対応を増やす。
「別に普通にファールだし。」
「いやぁ、助かるなぁ。」
「今日は厳しい目の笛なんだよ。だって、新幹線の中で俺がお願いしたし。」
行きの新幹線、審判は同じ車輛だった。丁寧に挨拶をして、敬意をしっかりと払った上で、こう言っておいた。もちろん返事はなく笑うまま。
「すいません、今日は厳しい目の笛でお願いします。うち、ひ弱なんで。」
攻勢が続く山形だが、トリコロールは凌ぐ。更に攻撃の手を強めるために小林監督が打った手は・・・。
「おっ、クナンが出てくるぞ。」
「あー助かった。これで何とかなる。」
予想通り、クナンはフォワードで使われる。そして、サイドに流れていく。
「いやー、去年、見たなーこういうの。」
「山形もうちと同じで使い方間違えてるし。」
「これで、なんとかなるでしょう。」

最初得点差での勝利。雪の山々をバックにトリパラが回る。特に坂田と飯倉に大きな声援が贈られる。
「勝ったから良かったけど、この采配は、どうかと思うな。」
とはいえ、厳しいアウエーでの大きな勝利だ。気分上々で、また30分余り、バスに乗って山形駅へ戻る。

予約しておいた人気店で、格別の地元を味わい話に花が咲く。桜は咲いていなかったが、雪、どら焼き、山形牛、だし、そして勝ち点3、この遠征は深く記憶に刻まれるものとなるだろう。
「山形は降格しないだろ。今年は、けっこうヤバいところが他にあるから。」
「また、来年も来たいね。」
「今度は桜は咲くかな。」
日が暮れて、すっかり寒さが厳しくなる。ここは東北。土産話に勝ち点持って、これから新幹線で帰路に就く。
喜びいっぱい課題山積。リーグは続く、冬までも。


今日のポイント

●山形は組織化された好チーム。
●ヘディングが弱いバスティアニーニ。
●縦に勝負しようというキモチは前節よりも感じられた。
●うるさかったスピーカー。

[今日の査定]来てよかった。











雪景色の山形市ない繁華街。人影はほとんどない。だが、時たま現れる女子高生はミニスカ。


栄玉堂のどら焼きは山形の名物。予約しなければ絶対に変えない。なんと我々、合計30個ほどを購入。


あと一息だったのに、つぼみの上に雪が積もる。結局、満開になったのは2週間後。


スタジアムに到着。椅子の上に雪はない。山形のスタッフの皆さん、ありがとう。


雪の山を背景にして躍動するトリコロール。山形は四方を山に囲まれた盆地だ。

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