malicia witness 2階の目線2010
J1リーグ 10-11シーズン

4月24日 鹿島アントラーズ  日産スタジアム   (石井和裕)

試合後、選手たちがスタンド前にやってくる。しかし、その姿を迎える前に、ビッシリと埋まったバックスタンドは、下へ下へと人並みが流れていく。1−3の惨敗に、ブーイングが渦巻くこともなく、戸惑いの中で静かなスタンドは、日暮れの冷え込みを思わせるように冷めていく。
「鹿島なんて何もしなかったじゃないか。」
「後半は攻めるふりだけだったのによー。」
「だいたい、怪我で動けないヤツが何で90分フルタイム出場なんだよ。」
「うちのクラブは、べつに中村がワールドカップに出るための練習をする為に試合をやってるんじゃないんだよ。」

結局、前節の山形戦と何が違ったのか?それは先制点を獲れたことと勝ち点3。相手が中村俊輔に恐れたか恐れなかったか。そうだ、試合内容に大きな違いはないのだ。現代のフットボールにおいて、中盤にスペースを空けることは自殺行為に等しい。例外的な選出があるとしたら、そのスペースよりも高い位置に破壊力のある攻撃陣を並べて、相手選手たちに圧力を与えて、そのスペースに相手を立入らせないことだ。だが、この日も中村俊輔は中盤の底で無難にボールを捌くばかり。負けているのにも関わらず、ボールは前に運ばれない。
「兵藤、ちょろちょろ動くな!」
「サイドにいろよ、サイドに。」
試合開始時には左にいた兵藤が逆サイドに動く。逆サイドにいた中村が左サイドに。そこで小椋が中村に指示を出す。「中じゃない、もっと外だ」だが、中村は中に絞ったまま。すると、ボールを奪った鹿島は中村の外のスペースに勢い良く攻め込んでくる。

「兵藤、じっとしてろ!」
「前に行くなよ、前に!」
兵藤が前に行く。すると、山瀬が後ろに下がる。前に行った兵藤にパスが出る。
「勝負しろ!」
だが、兵藤はいつものようにボールを後ろに下げる。そして、ボールを鹿島に奪われる。そのボールを小椋らが奪い返すが、3節までの素早い攻撃は出来ない。縦にボールを入れるところがなくバックラインでボールを回す。きっと、マリノスタウンで、いくら素晴らしい攻撃練習をしていても、今のままでは簡単にゴールを奪うことは出来ない。この日も20本のシュートを打ったが1得点だ。なぜなら、山瀬や坂田が中盤の穴・無秩序に動く選手が生み出したスペースを埋めるために下がってきて守備をしているから。ボールを奪っても前線に攻撃の枚数が少ないのだから、練習した攻撃的なカタチを作ることが出来ない。だから練習は実らない。

「うぉー!!!」
「よく決めたぞ!!」
難易度の高いヘディングシュートを渡邉が決めたとき、スタンドは沸騰した。だが、いつまでたってもトリコロールへの応援がボリュームアップすることはなかった。手拍子もまばらだ。


鹿島は明らかに疲れていた。
「おいおい、ディフェンダーが膝に手をついて休んでいるぞ。」
「こりゃあ、きっとACLのダメージがあるんだよ。」
「まだ前半なのに、試合終了前のような姿じゃないか。」
「これはチャンスだよ。」
「前半で中村と兵藤を下げて、もっと仕掛けていかないと。」
東城さんのホイッスルで前半を終えると、勢い良くピッチに入って走り始める選手がいる。
「おい、狩野だぞ。」
「これは後半の頭から交代で出てくるね。」
「狩野!頼むぞ!!」
しかし、そのアップは木村監督からの指示ではなかった。狩野が交代出場を木村監督に要求して自ら行なったパフォーマンスだったようだ。実際には、いつになっても選手交代は行なわれることなく、そして坂田が下げられ、動けない中村はフル出場となる。無理に攻める気がない鹿島は、時たま隙を見つけて攻撃をスピードアップする。そしてゴールを奪う。あとは、30分間の攻めるふり。スケールの大きい時間稼ぎだ。見ている側にとっては、あまりに虚しい。

75分を過ぎると、スタンドのイライラが募る。バックスタンド上段からは消極的な選手に声が飛ぶ。
「走れよ!!」
「藤田!勝負しろよ!!」
だが、味方中盤の選手のフォローがなく藤田は孤立。このままドリブルで突っ込んでいっても、そこには複数の鹿島の選手が網を張って待っているだけだ。トリコロールは完全に攻守に機能停止した。

今では日本人随一の名将と誰もが認める西野監督だが、かつては最後の最後に余計な選手交代やシステム変更をして失点し、手痛い敗戦を多く経験していた。いつ頃からだっただろうか、そのような采配ミスが消え、ガンバはJリーグの強豪クラブに成長した。新人監督の誰もが通る道。それは自らの良くとの闘いだ。リーグ序盤のトリコロールは右の高い位置に中村俊輔を配置し、中盤の底には守備に十分に気が利く選手を2枚。程よくスペースを埋め、穴をなくすことで、失点を防ぐと同時に素早い攻撃を生み出していた。しかし、山瀬、坂田、渡邉に中村を併用する欲が出て、システムをいじり始めてから、逆に決定的なシーンを作る出すことが出来なくなった。攻撃的な選手を多くピッチに送り込めば攻撃的なフットボールを披露できるというわけではないのが、フットボールの面白いところ。また、常識でもある。

一度、出てきた欲を押さえて、木村監督がどのような采配を見せるか、次節に注目が集まる。きっと、中村俊輔は試合に出場しなくても岡田監督が南アフリカ本番メンバーに選出するだろう。だから、状態が悪いのであれば、使わなければ良い。今の木村監督にとって、欲を押さえることは簡単なことだ。この数日の新聞によれば「中村俊輔が魔法のギブスを使う。」「フリーキックの練習を再開した。」「もう痛くない。」などなどの記事が大きく扱われている。つまり、どういうことかといえば、中村俊輔の足は痛くて練習も出来ないほどだった、ということなのだ。ならば使わなければ良いのだ。

誰一人「飲みに行こう」という者はなく、足早に横浜駅に向かい解散。この日の試合を忘れたい気分だ。2試合続けて、木村采配がゲームを停滞させた。選手の奮起も必要だが、まずは監督が冷静に過去のゲームを分析して、選手の力を発揮しやすい布陣を敷いてくれることを心から願う。


今日のポイント

●前半はイエローカードを多発。
 往年の鹿島国戦のようなムードが心地よい。
●パスをしても収まらないバスティアニーニ。
●兵藤の動きは清水の動きと似ていた。
 ということは木村監督の指示は・・。
●ボールボーイが小さかった。

[今日の査定]やっと終わったか。












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