malicia witness 2階の目線2010
J1リーグ 10-11シーズン

5月15日 京都サンガ  ニッパツ三ツ沢球技場   (石井和裕)

晴れ空の下、ワールドカップ中断前、最後のリーグ戦が始まる。相手は最下位の京都戦。必ずことが義務づけられた試合だ。

試合前、マリノス君の誕生日(?)を祝福するセレモニーが行われる。実際には1993年5月15日よりも前からマリノス君は登場していたのだが。まぁ、そのような細かいことはどうでも良いのだが、選手が登場する直前にまで行なわれたお誕生会でスタンドの空気が緩む。

「緩い、緩すぎるぞ。」
「いくら京都が相手だといっても、ここまでなめた雰囲気はあり得ない。」
「今日は厳しい試合になるよ。まいったなぁ。」
そして、中村俊輔と中澤のワールドカップ用スパイクのお披露目試合でもある。

ブーイングが高鳴る試合。

試合開始直後のフリーキック。リスタートを京都の9番が邪魔をする。扇谷さんが注意。
「偽ドゥトラ!偽物のくせにきたねぇぞ!」
ブラジルでは、かなり期待されている選手らしいが、ここ横浜では偽ドゥトラにすぎない。

両サイドに攻撃的な偽ドゥトラとディエゴ(偽巨大マラドーナ)を置く京都。当然、守備は甘く、両サイドはパスワークで簡単に突破できる。そこから、トリコロールは再三のコーナーキックゲット。完全にゲームを支配しているのだが、コーナーキックが中澤や栗原に合わない。

そこで突然の偽ドゥトラゴール。ハーフウエーライン付近からのドリブルに対して、トリコロールは多くの人数がいるものも実質的にはプレッシャーをかけることが出来ず、あっさりとぶっちぎられて飯倉との一対一を決められる。
「バカ!」
その直前にもディエゴ(偽巨大マラドーナ)のドリブルにプレッシャーをかけられずシュートを撃たれているだけに、この失点はダメージが大きい。

中村俊輔は怪我が癒えてきたのか、それとも本日お披露目のスパイクがフィットしているのか、積極的なプレーで魅せる。ロングシュートも放つ。山瀬は今日も迫力あるドリブル。ペナルティエリア内で倒されかけても踏ん張り、反転してシュート。そんな良いプレーは散見するものの、どうしてもチーム全体の印象はしっくり来ない。先制点をとってから、京都はスペース埋める守備に徹してしまい、トリコロールには、なかなか攻撃の糸口が掴めなくなる。
「ボールを奪ってからが遅いんだよ。」
「仕掛けがなくなったなぁ。足下で繋いでもスピードアップしないよ。」ディフェンスラインでやむを得ずボールを回す停滞した展開に、スタンドの一部からオーレの声が出る。
「恥ずかしいからやめてくれないかなぁ、オーレ。」
「京都の狙い通りに回させられてるだけだからなぁ。」

中澤が中盤でボールを奪い、そのままドリブルで縦に突進する。それをチエゴがファールで倒す。
「良いプレーだ!」

「そう、これをやらないとダメだよ。」
「足下パスを回していても何も起きないし。」
中村俊輔も、この局面を打開しようと創造力の高いパスを狙うが、頭に身体が追いついていないのか、又抜きを狙ったパスも再三止められてしまう。そして、試合開始直後にはサイドの前目のポジションだったはずだが、中盤の底、狩野の横にまで下がってきてボールをもらい、無理なスルーパスを狙うことが増える。

狩野のフリーキックの際に、水本が栗原の腕を引っ張る。扇谷さんはPKの判定。場内はそれに気づかず静かなまま。
「何?どうしたの?」
「PKだよ!PK!」
「みんな喜んでいないけどPKだって!!!」
蹴るのは渡邉。思い切って左サイドに蹴り込む。
「うわっ!」
「すげぇインパクト。」
あまりの振りの速さに驚く。まずは早めに追いついた。さらに、右を天野が突破しクロス。戻ったボールをフリーの山瀬。
「撃て!」
「撃て!」
「撃てー!」
「あーーーー!」
「ぐぁーーーーーー!」
振り抜いたシュートはゴールの枠を外れ、遥か上空へ宇宙開発。さらに、今度は得意の左サイドを素早いフェイントで切り刻み、左脚でシュート。ゴールキーパーに阻まれる。そして、また、天野から絶妙なクロス。山瀬が今度はヘディングでゴールに叩き込む。
「やった!!」
「凄い!!」
「いや・・・オフサイドだ。」
「あー残念。」

前半は1対1で終わる。惜しまれるのは、序盤と終盤の2つの時間帯の猛攻でリードを奪えなかったことだ。

ハーフタイムを終え選手が現れる。ゴール裏だけではなくスタンドのホーム全体からは盛大なブーイング。それは京都のゴールキーパー水谷に向けられたものだ。それは、スポーツの対戦相手へのブーイングではない。試合中に観客席に向かって卑猥な挑発ポーズを行なった水谷の人間性を否定するブーイングだ。彼が、過去に横浜で行なった愚かな行為は、彼が一生かかっても背負い続けなければならない。

スタンドからピッチの距離が近い三ツ沢では、ホームスタンド側にトリコロールが攻め込んでくるとテンションがとても高くなる。この後半、熱い45分になりそうだ。

右サイドを駆け上がる天野の前のスペースにパスが入る。追いついた天野とゴールの間には水谷しかいない。撃て、水谷の心を打ち砕くような強いシュートを、多くのサポーターがそう思った。しかし、天野の選択は山なりのクロス。
「何でだよ!」
「撃てよ!」
「シュートだろ!」
「逃げてるんじゃねぇよ!!」
コースがなくてゴールに入らなくても良い。でもシュートを撃たなければ何も起こらない。水谷の手を弾いたボールが、更なるシュートチャンスを生むかもしれないのだ。シュートを撃つべきだ。

後半は左サイドの高い位置から中村俊輔はフットボールをスタートしている。しかし、決定機がなかなか生まれない。60分過ぎまでに決定機は天野がシュートを撃たなかったシーン。さらには、兵藤のミドルシュートくらい。攻撃のスピードアップは見られず、時間だけが進んでいく。さらに、左サイドで水谷以外にはゴールを阻む者がないシーンでも兵藤の選択はクロス。またしてもチャンスを潰す。これは、いつもの「兵藤スタイル」。

ところがリードを奪うゴールは突然。いくつかのパス回しから中村俊輔へ。前に選手が何名もいたが、素早いモーションのトーキックでシュート。突然のゴール強襲に大歓声。そして、こぼれ玉を兵藤がシュート。
「兵藤良く決めた!」
「中村すげー!」

いつもよりも、ずいぶんと狭い座席にバランスを崩す。仲間ともたれ合いながらリードを喜ぶ。その余韻も冷めぬ間に、今度は渡邉のシュートがクロスバーを直撃。
京都が前がかりになったこともあり、トリコロールも素早くスペースにパスを流し込むことで追加点を狙う。テンポが速まり、スリリングなフットボールに。臨場感が特徴の小さなスタジアムは沸きに沸く。ただ、裕介もシュートのチャンスをクロスで潰す。

中盤の守備がルーズ。

「詰めろ!撃たれるぞ!」
「撃たすな!」
だが、最初の失点と同じようにディファンダーはあっさりとした守備。簡単にシュートを撃たれる。飯倉は止めるのが精一杯。そこに走り込んできた高校生に同点ゴールを決められてしまう。
「あー、だから撃たせるなっていうのに。」
「前半と同じじゃないか。」
さらに、ロングクロスで完全に崩されて逆転の大ピンチ。幸い、京都の選手がシュートを枠から外し運良く失点とならなかったが、完全にやられた。

同点となって、中村俊輔が右サイドの位置へ。本来、得意とするポジションなのだが、これにより水沼の行き場がなくなってしまう。さらに評価が分かれる山瀬から坂田への交代。どうなんだろう、などと会話の隙もなく、ディエゴ(偽巨大マラドーナ)のシュートが枠に飛んでくる。そして、またしても高校生のシュート。
「まずいぞ。」
ポジションの混乱もあってか、それとも頼みの綱の山瀬が退いたからか、さらには中村俊輔の動きが落ちた上にミスが増えたからなのか、まったくチャンスを生み出せなくなる。水沼から渡邉のクロスがスタンドを沸かせたくらい。逆にピンチの連続。それを凌いでロスタイムに3つのチャンス。なんとか勝ち点3を獲ってくれという願いとともにゴール前に・・・しかし、コーナーキックで試合終了の笛。

そのとき、ここに13,000人以上の人がいるということが信じられないくらいに、スタジアムは音を失った。歓声もブーイングも、悲鳴も激励の声もない。ただただ、みな押し黙った。音が帰ってきたのは、選手たちがバックスタンドの前からゴール前に向かって歩き始めてから。
「いやぁ、勝てない。」
「柔すぎる。」
気を取り直したかのように、ゴール裏からは、中村俊輔と中澤へのコールが起きる。ワールドカップでの活躍を願い贈られるエールだ。だが、なんとなく、しらっとした雰囲気が拭えなく、音も表情も、再び失って、スタンドから13,000人あまりが去って行く。

期待が膨らんだリーグ序盤戦、そして迷走と失速。しかし、この2試合で、再び上昇への光明はわずかに見えた。きっとワールドカップを終えれば中村俊輔は抜け殻のようになっているだろう。怪我かもしれない。ドイツ大会後を思い出してみれば、中澤のパフォーマンスは最低レベルにまで低下した。だから、リーグ再開後のトリコロールは、別のチーム構成になっているはずだ。松田も戻ってくるだろう。ワールドカップ期間の木村監督による立て直しに期待しよう。そして、休むことなくナビスコカップ。次戦は日本平だ。


今日のポイント

●なんだかんだとほにゃらさわのワントップは機能している。
●良質なクロスを量産した天野。
●逆襲に気の毒だった小椋。パスに大きな進歩を見た。
●祐子と弥生のようなディエゴとチエゴ。

[今日の査定]そりゃねぇだろ。












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