malicia witness 2階の目線2010
J1リーグ 10-11シーズン

7月31日 名古屋グランパス  日産スタジアム   (石井和裕)

スタジアムを湧かせたシーンを思い出す。立ち上がりに山瀬が裏に抜けてシュートを放ちリバウンドを坂田がシュートしたシーン、中村のフリーキック、小野ユウジーニョを目の前にして闘利王がミスをしたシーン、中村の右脚シュート、あとは何があっただろう。目の前に起きた出来事、それ以上に、この敗戦は心の奥にダメージを与える。ロ
タイムが4分もあったのにも関わらず、中村のフリーキックを楢崎が弾き返すと、バックスタンド2階席の観客たちは一斉に席を立って帰り始めた。

終わってみれば、ワールドカップのインターバル明けのゲームは4試合で、わずかに得点2。攻撃的で魅力的なフットボールを標榜してきた木村監督は、この原因をどのように捉えているのだろう。それが気になる。なにしろ1ヶ月間もたっぷりと、戦術を浸透するための時間があったのだから。

「できれば楽しく、そしてファンやサポーターに喜んでもらえるようなプレーがたくさんできればいいと思っています。もちろん結果が最優先に来るとは思いますが。」
「できれば、相手ゴール前でのシーンが数多く生まれればと思います。あのゴールに数多く入れたほうが勝ちですから、そういうことを狙っていきます。」
いずれも木村監督就任記者会見での言葉だ。楽しいフットボールを、そして勝利を。プロフットボールにおいては、極々当たり前のことであろう。問題は、監督が、いかに実現していくかなのだが。

「普通にやれば勝てるはずんなんだけどなー。普通にやってほしいんだよ。」
試合後の私たちの口からこぼれる言葉は、まさに当たり前のことばかりだ。一方、木村監督の試合後の言葉は、ゴールを奪えない原因について、こう表現した。
「残り1/3や1/4の所で、いろいろな技術やアイデアが出てこない。」
監督は非凡なアイデアを選手に求めている。

選手たちのコメントによれば、急に中盤をダイヤモンド型にしたようだ。小小椋をアンカーにして前に兵藤と清水をサイドに開いて配置して、トップ下の司令塔の位置(死語)に中村。序盤は、これも上手くいっていた。なぜなら名古屋の動きが緩慢で、名古屋のワンボランチのサイドに大きな緩いスペースが空いていたからだ。しかし、失点すると、この形勢は維持できなくなった。名古屋のフットボールが息を吹き返したことが一因。そして、清水や兵藤が焦り、前にポジションをとることでバランスを崩したことが、もう一つの理由。4ー3(1ー2)ー1−2という元々守備のラインを深くしなければならない布陣でスタートしたが、これが4−2−2−2に近くなっていた。4−2−2−2といえば加茂ジャパンの布陣。もう13年も前のことだ。そして、当時でも、すでに時代遅れと評されていた戦術だ。

ゴール奪えない原因はアイデアや技術ではない。攻撃の枚数が少ないからだ。枚数が少なければゴールを奪える可能性は下がるのが当たり前。今のフットボールの潮流は3つのラインを作り、コンパクトにスペースを埋めてゴールに近い位置に多くの人数を配置するのが基本戦術だ。前に攻撃的な選手を置く、というよりも、敵のゴールにいかに近くに味方の全選手を置くかを優先する戦術だ。いくら中村が自由にプレーしても、中村が4−2−2−2の2の位置にいて、さらに前後の間隔が空いていては味方の人数が少なくゴールは生まれにくい。そんな単純な理屈だ。

木村監督は中村を「ワシ」に見立てて采配をしている感がある。「ワシ」が復調したのに前線の選手がゴールしてくれない。「ワシ」がゲームを創るから、中盤の底の選手はこぼれ玉を拾ってマイボールにしてほしい。そう考えれば、監督の選手起用や記者会見のコメントにも納得がいく。ただ、それは「ワシ」が現役時代のフットボール観であり、「ワシ」が現役時代には「ワシ」以外の選手も日本のトップクラスの選手や元ブラジル代表主将が揃っていたから楽しいプレーが出来ていたということを忘れてはならない。

試合中に無意味にパスを回させられていることに痺れを切らせたスタンドから大ブーイングがピッチに送られた。夏休みのひとときを楽しく過ごすためにワールドカップ決勝戦のスタジアムを訪れた家族連れには衝撃のシーンだっただろう。だが、皆が我慢できなかったのだ。

「普通にやれば、もっと勝てるんだけどなー。」
「エースを残り15分までは投入しないなんて理由は存在しないんだけどなー。」

普通にやれば、もっとフットボールは楽しいはずだ。


今日のポイント

●縦にスピードの速いパスを入れるのは中村と小椋だけ。


[今日の査定]絶望感。












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