malicia witness 2階の目線2010
J1リーグ 10-11シーズン

8月29日 アルビレックス新潟  日産スタジアム   (石井和裕)

試合を左右したのは、前半後半、開始早々の2つのシュート。ほんの少しのタッチの違いがゴールとクロスバーの境目。

10分。マイボールのスローインをミス。新潟ボールとなりミシェルがシュート。飯倉のタッチがなければゴール。かろうじてボールはクロスバーに当たり難を逃れる。

「ヤバい。」
「やられたと思った。」
「アレが入っていたらゲームは終わりだぞ。」
「よりによってスローインのミスからかよ。」

残念なことに、今のトリコロールに、逆転を生み出す力を感じない。勝ち点奪取のためには先制点が重要、いや必須だ。あのゴールが決まっていれば、試合は90分間、ほぼ劣勢に進むのは間違えない。

小椋らが決定機を掴むがゴールを奪えない。むしろ全体的には圧倒され続けた45分だとも言える。新潟の速いパススピードと有機的な選手の動きが目立つ。

後半立ち上がり。自陣でボールを奪い山瀬が俊輔にボールを渡し、ディフェンスラインの裏に走り出す。そこに簡単に俊輔がパス。山瀬は黒河と一対一。いつもならば左脚から右脚に持ち替えて思いっきりシュートを振り抜くのが山瀬の持ち味だが、左脚でちょこんと浮かしてボールをゴールに流し込む。技ありだ。
「決まった!」
「よし、やった!」
まさに流れるようなカウンター。
「前半は、あんなに足下パスばっかりだったのに、裏を狙えば獲れちゃうじゃないか。」
「やればできるんだよねー。」

前半開始直後のクロスバー、後半開始直後のゴール。ほんの少しの違いが、結果を3点差にまですることになる。

続いて左サイドから小野がドリブルシュート。ニアサイドを黒河が跳ね返す。
「馬鹿やろう!止めるんじゃねぇ!」
「小野の邪魔すんじゃねぇぞ!」

監督の指示がハーフタイムにあったのだろう。ディフェンスラインの裏にパスが送り込まれ、攻撃がスピードアップ。前半とは、まったく違う試合となった。中盤でもボールを奪われない。
「ガンガン行けよ!」
「守りに入るなよ!」
松田の運動量が少なく、松田の前のスペースでボールを繋ぐ選手がおらず、山瀬が迷いに迷って中途半端なポジションで持ち味を発揮できずにいた前半。後半に入ると攻撃面は活性化。ただ、守りが万全かというと、暑さもあって不安がある。

新潟の素早いパス回し。前半から積極的に前を向いて勝負するヨンチョルが起点となって、ボールはゴール前のスペースに。走り込んでくる大島。
「やばい!」
走り込んで左脚でダイレクトに撃ち込んでくるのは、最近の大島の得意のパターンだ。
「おー、やられたかと思った。」
「撃たせるなよ、大島に。」
一つ間違えれば、ゴールを奪われる。油断はならない。

「動けないから、早く松田を交代した方が良いと思うよ。」
「でも75分過ぎないと、きっと代えないと思うよ。」
そしてミシェルに遅れ気味のタックルでファール。
「まずいって、カードもらっちゃうから。終わっちゃうから。」
ここではカードをもらわなかったが、直後に西にタックルでカード。
「あーだからよー。」
マルシオ・リシャルデスはセットプレーだけでハットトリックを決めている。ピンチだ。無駄なファールは厳禁。

やや危ないシーンも目立ち始めた70分。左ペナルティエリア内で小野がキープ。戻して俊輔が右脚で突如のシュート。弾丸のようにボールは弧を描いてサイドネットに飛んでいく。
「うぅわっ!!」
「すげっ!!」
「うおー!!」
力強くで美しいシュートが流れを変える2点目を生み出す。
「すげぇなー。やっぱ、俊輔は復調すれば凄いや。」
「やっぱ違うな。」

木村監督がやっと動く。2点のリードを奪って松田と河合を交代。これで攻守に安定感が出るだろう。そして、河合といえば殊勲のゴールの記憶。
「河合、頼むぞ!」
「今日もやってやれ河合!!」
松田への賞賛も相成って、2階席はスタンディングオベーションも。

俊輔は、すっかり復調して躍動している。ファールで当たってきたヨンチョルを逆に吹き飛ばす。ヨンチョルにイエローカード。そしてヨンチョルは動けない。
「どうしたのヨンチョル。」
「吹っ飛ばされてんじゃん。でカード。」
「俊輔は、すぐに担架を呼んでいたぜ。」
「ってことは俊輔的には充分な手応えがあったってことか。」
「ヨーロッパのリーグで活躍してきたんだから、体調が戻れば、やっぱり強さがあるね。」

そうこう言っているうちに、一番怖かったヨンチョルが交代。さらには長谷川アーリアジャスールが登場。小野は積極的な仕掛けで湧かせたが、今日も無得点だった。

頼もしい瞬間だった。

左サイドにいる西がまったくのフリーでクロスを入れる。ニアサイドに詰めてきたマルシオ・リシャルデスが・・・ボールは頭には当たらずゴールラインへ。すぐに飯倉が飛び跳ねて小椋に詰め寄る。
「そうだよ!飯倉の言う通りだ。」
攻守に大活躍の小椋だが、今の守備は完全に怠慢。それを指摘する飯倉の姿勢は頼もしい。

一瞬、緊張が切れそうなプレーだったが、これでムードが引き締まった。直後にコーナーキックを中澤がヘディングし、栗原が頭で繋いで最後はアーリアがゴールに蹴り込む。

こうなると、みんなが待っているのは狩野の復活。

木村監督は狩野をベンチに呼ぶ。
「狩野が出るぞ!」
動きを見て、ゴール裏から狩野のチャントが始まる。スタンド全体が狩野にエールを送る。やっと狩野が戻ってきた。ポジションは予想通りに前の左。中盤の底ではない。

中村からディフェンスラインの裏に。走り込んでくる狩野。右脚のインフロントで巻き込むように蹴ればファーサイドの上部にゴールが突き刺さる、そんな絵を誰もが脳裏に描いた。だって、蹴るのは狩野だ。彼のテクニックであればダイレクトで重い通りにシュートを放ってくれるはずだと。しかし、ボールは当たり損ね。カーブかかからず枠を捉えることが出来ず。
「あーーーーーー!」
頭を抱える。立ち上がった腰を再び降ろす。この日最大の落胆のシーンだ。スタンド全体が崩れた。

狩野大復活の更なる歓喜は味わえなかったが、久々に至福の90分間。みんな笑顔。ホームでは3試合ぶりの勝利だ。
「18:00開始だから時間あるよ。飲みに行こーう!」
「よーし、美味いもの食いにいくぞー!」
楽しいフットボールは、みんなを幸せにする。

次は天皇杯。元旦まで、みんなと喜びたい。


今日のポイント

●前半の攻守を支えた小椋。
●さらに調子を上げる俊輔。強さも魅せる。
●何点止めた?飯倉の反応。
●裏を狙えばゲームは動く。

[今日の査定]裏だ!裏に走るんだ。












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