malicia witness 2階の目線2010
J1リーグ 10-11シーズン

9月25日 ベガルタ仙台  日産スタジアム   (石井和裕)

スタジアムは静まり返っている。選手たちがバックスタンドに前にやってくる前に、招待券のお客さんたちは階段を下りて帰路に就いている。頭を下げる選手たち。ブーイングは少ない。当然、拍手はまばら。今日は、ただただ後味が悪いのだ。

「こら木村!」。
そう叫ぶ声が響いたが、その後に続く言葉がない。虚しい空気が流れる。

試合開始直前に、どっとお客さんが流れ込んできたが、スタンドには空席が目立ち、緩やかな時間が流れていた開門後。重要なゲームであるはずなのに、緊迫感に欠けている。相手は下位の仙台だとはいえ、山形に完勝している直後。しかも、私たちは、久々に上位に進出するチャンスの試合。勝てばチャンピオンズリーグ圏内が見えてくる。だが、勝たなければならないのだ。過去、何度も、このような重要なシチュエーションの試合を落としてきていることを、みんな知っている。

試合が始まると、一つの疑問が浮上する。選手や監督と私たちでは「大切な試合」の定義が違っているのではないか?

強豪チームとの対戦は、とても大切な一戦だ。だが、それだけではない、と私たちは考える。長いリーグ戦の中でターニングポイントとなる一戦や、絶対に勝ち点を落としてはならない一戦というのが登場してくる。そこで勝つか、負けるか、引分けかで、リーグ戦の結果は大きく異なってくる。

しかし、選手や監督には、そんな考え方はないのかもしれない。ただ下位チームとの対戦と考えているのか、それとも、あえて意識しないようにしているのか。試合前からのスタンドの緩いムードに加えて、試合開始直後のピッチ上のボール回しに愕然とするのだ。

仙台は引いて守る。ただ、早く仕掛ければバイタルエリアにスペースを作れる。

何試合かのビデオを見れば、それは簡単に判ること。ところが、トリコロールの攻めは遅い。バックラインでのパス交換が続く。しかも、そのパスのスピードが亀が横断歩道を渡るほどのスピードなので、右に左にボールが動こうが、仙台のディフェンス陣に穴があくことはまったくないのだ。
「なにちんたらやってんだよ!」
仙台は、まったく攻めてこれない。だが、これは仙台ペースの試合になっている。主導権は仙台の術中にある。

そしてゴールネットが揺れる。

仙台のゴールチャンスといえば、パターンは限られている。カウンターからストレートにゴール。カウンターから前線でドリブルしてセットプレーをゲットしセットプレーで。10番の個人技で。それくらいしかないのだが、その一つで失点。
序盤の失点であり、時間は十分にあるのだが、果てしなく遠くにある1点に感じる。この試合はマズい。

希望の芽を摘み取っていく狩野のプレー。

しばらく前の試合で、攻撃が機能しないとき「ここに狩野がいてくれたら」と何度も思った。今、その狩野がピッチ上にいて攻撃が機能しないことで小さな絶望感が芽生えてくる。
「これは木村に謝らなければならない。今の狩野を中盤の底で使ったらダメなんだ。よくわかった。」
「もっとポジションを変えていかないと、いいボールを受けられないし、最終ラインも出しどころがなくて困るぞ。」
「これじゃぁ、全部が俊輔経由にしなきゃならないじゃないか。」

前半を終える。
「これは後半頭から選手を変えないとダメなんじゃないの。」
「でもピッチ上の練習を見ると、それはなさそうだね。」
「失うものがない名古屋戦は、あんなに勝ちに行く選手交代が出来たんだから今日もやってほしいよ。」
「でも仙台戦は監督的には負けると失うものがあるし・・・。」

中央の密集では山瀬の持ち味は発揮されない。アーリアは巧みにポストプレーを見せているが、近くに連携できる選手はいない。ただ単純にサイドからクロスを入れても跳ね返されるだけ。同じことの繰り返しが延々と続く。

そこで端戸の投入。巧い選手という評判だ。だが、それで良いのか。強い、早い選手が必要なのではないのか。
「ここで端戸に木村が何をやらせようとしているかだよなー。」
その謎は解けない。この試合は勝たなければならない重要な試合のはずなのだが。

「えっ学の投入なのかよ、舐めてんのかよ。」
「いや、ここはドリブルで打開しろってことなんじゃないのか。」
だが、学がドリブルを見せた機会は、ほんのわずかな瞬間のみ。多くのボールは後方から前線に放り込まれる山なりのロングボールとなる。

何事もなかったかのように試合は静かに終わる。力尽きる選手もなければ、完敗に取り乱す素振りもない。0−1の完敗。それは最も虚しい。だが偶然に旗が揚がった2つのオフサイドがなければ0−3の惨敗となっていた試合だ。それを考えれば、トリコロールには、まだ運はあったということだ。
「仙台の朴が倒れているときにさぁ、ピッチ上の選手たちが集まって相談するとかさぁ、そういうことが何もないよね。」
「ただぼけーっと眺めてるんだもん。」
「上手くいっていないんだから、そこですぐに意思統一するとかさぁ。」
「せめて監督には、前に出てきて指示してほしかったよ。座っていないでさ。」
「ありゃぁ弱いチームの典型だったな。」

こんな日は、早く帰るしかない。次に訪れる重要な試合は、いつになるのだろうか。目指せ、アジアの頂点。


今日のポイント

●無策。
●小椋無しには機能しなくなっている中盤。
●だから10番は右脚から巻いてくるんだって!
●焦りすぎた飯倉。

[今日の査定]思い出を指でなぞる。












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