malicia witness 2階の目線2010
J1リーグ 10-11シーズン

11月6日 湘南ベルマーレ  平塚陸上競技場   (石井和裕)

慎重な立ち上がりに見えたが、それはただ怯えているだけに過ぎなかった。左サイドのパス回しにプレッシャーはなく、簡単に兵藤が上げたボールに清水がフリーでヘディングシュート。惜しくも枠を外れるが、湘南の選手たちが個々に勝負してこないことは明らかだ。

前線では早い寄せでボールを奪う。次から次への選手が殺到する。完全にワンサイドゲームだ。

静かになったスタジアムでPKが告げられる。
「え、なに?」
「何があったの?」
まさかボールに関係のない場所で後ろから中澤を倒すディフェンダーがいたとは夢にも思わなかった。これを俊輔がノーモーションから右上隅に速いスピードのキックで決める。
「あんなに見せつけるほど蹴らなくてもいいってくらい凄いPKだ。」
あれを止めることは不可能だろう。

これで試合は終わった。

湘南は益々臆病になる。降格圏を抜け出そうという気概すら感じられない。
「後ろからファールばっかりするなよ。」
「後がないくせに!」

「これは巧い!」

思わず八塚アナウンサーが唸った山瀬のゴール。右サイドの小野ユウジーニョがドリブルで蹂躙し、右のアウトサイドでゴールに叩き込む。スタンドのおよそ4割を締めるトリコロールのエリアが沸き立つ。その喜びでざわめく中で、次はユウジーニョがハーフウエーライン付近でボールをダッシュ。中央をドリブルで駆ける。
「行け!」
「あ、下がる、下がる下がる!」
ディフェンダーのプレッシャーもなくシュート。都築がなんとか止めるも、走り込んできた清水がダイレクトに叩き込む。
「決めたー!」
「清水えらいぞ!!」
「やったぜ!」
あっという間の3点差だ。

今回、私はバックスタンド自由席での観戦となった。仲間の多くはメインスタンド自由席。そのせいもあるのか、バックスタンド自由席は3−0にもかかわらず静かだ。そして、さらに静かなのはバックスタンド自由席のホーム側席。後半に湘南が1点を返すも、ちょっと拍手が起きたくらいで、アウエーの圧迫感がまったくない。そういえば、試合前に、こんなこともあった。
市長の挨拶。これは付け焼き刃のフットボール知識ではなく、本当に毎日、湘南を本気で応援しているのが解る素晴らしい挨拶だった。だが、「みなさん諦めていませんよねー!?」という叫びに対して、スタンドの反応は、まばらな拍手だった。すでに、サポーターの多くは残留を諦めてしまっている(そういう市長も完成間近なスコアボードに関して「今シーズンは間に合いませんでしたが」と暗に来期は降格を臭わす会話をしていたのだが)。

湘南は怖がっているのか諦めているのかボールを奪いにこない。トリコロースがディフンスラインと中盤でパスを回す。幾らでも繋がる。スタンドもあまりに静かなので「オーレ!」とパスに合わせて叫ぶことにする(ここで「オーレ!」をやらずにどこでやるんだというくらい絶好のオーレタイム)。
「オーレ!」
「オーレ!」
「オーレ!」
「オーレ!」
「オーレ!」
「オーレ!」
1人で叫ぶ。
「オーレ!」
「オーレ!」
「オーレ!」
「オーレ!」
「止めろよ!湘南もいいかげんに獲りにこい!」
湘南の不甲斐なさで、一人ノリツッコミのようになってしまう。

前半が終わり、後半開始。いきなりユウジーニョがゴールに叩き込む。しかしこれはオフサイド(副審の旗が、かなり遅かった)。歓喜は一瞬で静まるが、あまりに緩い湘南の立ち上がりが逆に心配になる。すでに前半で試合は終わっている。後半は怪我なく、失点なく、カードなく、それが達成できれば上々。さらには、途中交代で若い選手が登場するだろうから、チャンスを掴んでくれればいい。あとは、松田の動きが落ちたときに、どのような対処をするかを中澤を中心におさらいを。

結果から言うと、1失点はあったものの端戸のゴールで4−1。都築のファインセーブがなかったら、あと2点は獲れていただろう。守備面では予想通り、松田の動きが落ち、さらには前線からの松田へのフォローがなくなると押し込まれてしまうこと、その改善は出来ていなかった。とはいえ、端戸のゴールはスタンドを大いに沸かせた。「何でも出来るが、何が出来る訳ではない」という端戸にはキッカケが必要。それを今期に掴むとしたら、この試合以外にはなかっただろう。今後の飛躍に期待だ。

そして終盤、狩野の登場と同時に運動量が急増した松田。この男、信じられないほどの仲間思いだ。狩野にゴールさせるためにパスを送り、スペースに走る。さらには、ゴール前でのフリーキックでは狩野と俊輔の間に入ってなにかひと言。キッカーとなった狩野の一撃は惜しくも都築に弾き出されるが、この試合終盤のハイライトだった。

残念ながら平塚での試合はしばらくない。次は再来年のことかもしれないし、10年以上先のことかもしれない。このグルメ指数の高いスタジアムに来る機会がなくなるのは残念だ。そんな湘南を尻目に、私たちは上を目指す。かつては湘南も極めたアジア王者へ返り咲くのだ。


今日のポイント

● エメルソンを顔で止めた中澤。
● 60分過ぎのダイレクトパス。ゴールを奪っていたら今シーズンのベストゴール間違え無しだっただろう。
● 最後は、俺は負けてないモードだったエメルソン。
● 栗原が外に出ているのにボールを蹴り出した飯倉。それにブーイングしない湘南サポーター。お人好しすぎる。


[今日の査定]完勝でした。お疲れさまでした。












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