malicia witness 2階の目線2010
J1リーグ 10-11シーズン

11月14日 FC東京  日産スタジアム   (石井和裕)

ガス浮上の立役者・米本が高い位置でボールを奪う。こぼれたボールが平山の前にこぼれる。迷うことなく振り抜いた脚がボールをゴールに。両チームを通じて初めてのシュートが痛恨の失点に。

この失点はただの失点ではない。ガスが、あの大熊の部活サッカーを取り戻したことをスタジアムが痛感する一点となった。しかも、あの部活サッカー全盛時には不在だった大型センターフォワードの座に平山が君臨している。平山は、あののんびりとした間抜けな平山ではなく、オランダリーグで活躍したヒラヤマの印象。足下のボールの扱いもコンパクトで巧み。上背のない小椋、波戸、天野を圧倒するハイボール。当時の部活サッカーよりも破壊力がある。

マリーシアの若手メンバーにK林さんが声をかける。
「おいT!お前、ピッチに出て行ってゴール決めてこいよ。今野相手なら、お前、ゴール決められるだろ!」
声をかけられたTは振り向いて2列後ろのK林さんに反論する。
「僕は幼稚園児だから、あそこには行けないんだよ!」

小野ユウジーニョのドリブル、俊輔のコーナーキックで反撃する。ボールは止まらない。両チームとも、時間をかけずに相手ゴール前にボールを運ぶ。そんな応酬ではあるが、ガスの中盤守備の厳しさが目立つ。あっという間に3人がボールを囲みにくる。パスコースが限定され自由が効かない。時間が進むに連れて、徐々にトリコロールの攻撃スピードが鈍っていく。

前節よりもハッキリしているのは、攻撃時に松田がアンカーからセンターバックの位置に下がってスリーバックの陣形を創ること。そして、その場合には両サイドバックは同時に高い位置をとる。攻撃の枚数を増やすための戦術だろう。

そして印象深いプレーは左サイドの俊輔が全力で蹴り込んだグランダーのクロス。
「来た!」
権田の手の先を通ってゴール前をボールが横切る。小野の脚に届かない。
「惜しい!」
「そうだよ、あれくらいのクロスを撃ち込んでいかないと。ふわっとしたクロス入れたってゴールなんて奪えないよ。」
先制点を許し中盤を苦戦するものの、前半に十分に同点に追いつけそうな展開。

失点直前、ゴールライン上でボールをかき出す。逆に天野のクロスにユウジーニョのヘディングシュート。迫力と緊迫のシーンが続く。追いつけそうで追いつけないままに45分を終える。あの1点は止めようがなかった。後半に巻き返すしかない。

後半が始まる。試合が動かない。そこで端戸を投入する。厳しいプレッシャーの中でトラップに難のある山瀬を外さざるを得ない。そして結果はすぐに出る。
右サイドペナルティエリア内で端戸がボールをキープする。これが長時間。その後ろに天野が走り込んでくる。ヒールパス気味に意外な方向へ端戸がパス。天野らしいグランダーのクロスはガスのゴール前を横切り、逆サイドに走り込んできたユウジーニョが美しいごっつぁんゴール。

後半は更に部活サッカー。広いピッチを選手が往復する。60分を過ぎて松田の動きが落ちてくる。他の選手も、少しずつ反応が遅れてくる。そんな中でも、双方がイケイケでゴールに向かってボールを運んでいく。ただ一人、兵藤を除いては。

エキサイティングなゲームだ。それだけに兵藤の消極的なボール扱いがフラストレーションを溜めてしまう。なぜなのだろう、ドリブルを途中で止めてしまうのは。

中盤はない。人もボールも走る。そして、一人、又1人と、置いてきぼりを食らう選手が増えてくる、トリコロールに。特に右の天野は疲れただけでなく脚をつりそうなのか、立ち止まって脚を押さえている。
「代えろよ、天野を代えてやれ!」
「天野は限界だって!」

天野ではなく松田交代。体力の限界を超え、この早い試合の流れについて来れない。しかも序盤から入れ込みすぎでイエローカードももらっている。致し方ない交代だ。代わりに入った河合はアンケーではなくスリーバックの真ん中に見えるポジション。これで中盤は完全に空いてしまう。それはリスクだが、攻撃に枚数をかけたい監督の判断。両サイドは我慢して闘えというメッセージか、それとも天野はベンチと逆サイドなので小さくて木村監督の視界に入っていなかったのか。

部活サッカーへのお付き合いが、結果、体力を奪っていった。

右サイドでリカルジーニョがドリブル。すでに天野は走れない。追いつくことは出来ない。右サイドには広大なスペースが広がる。そしてマイナスのクロス。松田は交代しアンカー不在。そして清水も兵藤も、ここまで戻って守備をすることは、すでに出来ない。むしろ、中盤の守備は俊輔が軸になって行なっていた状況。その隙をガスは逃すことなく、またしても平山がコンパクトに叩いて地を這うシュートをゴールに撃ち込む。

このとき、ピッチ上では白いユニフォームのガスの選手たちが倒れ込んでいた。芝に腰を降ろして拳を握っている。対するトリコロールの選手は立ち尽くしてうつむく。ベンチ前では、本来は監督と通訳だけしか立入ることが出来ないはずなのに松田が選手を鼓舞しようとする。この試合を象徴するシーンだった。

再び一点を追わなければならない。しかし、その力がない。

権田とユウジーニョが交錯する。権田が背中から声をかけ、何事か険悪なムードになる。ブーイング、罵声。そこに、マリーシアの若手メンバーTがひと言。
「お前!高校生に何言ってるんだ!」
そういう君は幼稚園児なのだが。

ロスタイム4分。奪えそうで奪えないゴール。あっという間に時間を使い果たし試合は終わる。試合終了のホイッスルを聞いてガスの選手が崩れ落ちる。立ち尽くすトリコロール。ガスの選手たちは力を使い果たした。その気力にトリコロールは屈したのだ。


今日のポイント

● 松田の清水と兵藤がよっぽど頑張らないと松田の体力が持たない。
● 天野が動けなるほどの部活ゲーム。
● 急増センターバックで思い知った栗原の力。
● 岡田さん見納めかな。


[今日の査定]兵藤には勇気が足りないよ。












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