malicia witness アジア戦記2005
アジアチャンピオンズリーグ

5月12日 マッカサル  今野隆之

いつもの平日の試合のように、会社を早めに抜け出す。だが、駅までの道のりで、雑踏の中で、三ツ沢に向かうバスの中で、いつものように気が急くことがない。消化試合だからだろうか。いや、消化試合を観るのは初めてじゃない。リーグ戦は優勝の目がなくなれば消化試合だ。2003年に完全優勝するまで、何度も観ただろう。

この日は行くことだけは決めていた。だから行く。

もらえるものはもらっておいてスタンドに入ると、既にバック側まで埋まりつつある。結局この日も6,000人以上が入り、ACLのホーム3試合とも観客動員はほぼ同じ。わずかの差だが、この日が最も多かった。そのことがACLの微妙な位置づけを物語っているようでならない。オフィシャルのゲームレポートでは、A3杯やXEROX杯と一緒くたに「そのほか」と分類されているではないか。

この日の大きな話題の一つは、久保の先発出場。そして昨年1st第2節市原戦以来の4バックで臨むという。あの寒い寒い臨海の一戦後、岡田監督は結果重視のリアリストに徹してきた。そして故障者が続出しながら、リーグ連覇は果たされた。だが、今回の13連戦を通じて、3バックの限界が見えてきた。相手もトリコロールを研究している。だから、4バックという試みはいいことだ。

と、見所はあるはずなのだ。ほぼベストメンバーを揃えてきたが、試合間隔が空いただけに選手の動きはいい。奥が縦横無尽に駆け回る。上野がこんなに上がっている。いつもにも増して、ドゥトラと隼磨の両サイドは鋭く突破する。マッカサルがほとんど攻めてこないため、実質的には2バックになっている。達也の出番は全くというほどない。

横浜が誇る両翼が数え切れないほどのクロスを上げ、数え切れないほどのチャンスが生まれた。しかし、シュートの意識の薄さは変わっていない。あと一歩詰めればというシーンが何度あっただろう。久保は競る姿勢を見せない。業を煮やしたかどうかはわからないが、ドゥトラが、隼磨が自らシュートを放っていく。

いつもならば、惜しいシーンに頭を掻きむしって悔しがるところ。ところが、淡々と試合を観ている自分がいる。何となく時間は過ぎ、前半が終わろうとしている。時折馬鹿話を振られても上の空。声援を送るでもなく、野次を飛ばすでもなく、頭は醒めていく。サイズの大きいTシャツを無邪気に着ている子供たちをぼんやりと眺めている。

後半も既に30分。ここまで観ていてようやく気付く。選手は消化試合だろうと真剣に戦っている。それなのに点が入らない。これが今のトリコロール。そんな選手に声援一つ送れない。これが今の自分。

と、スコアレスドローを意識し始めた時間に、ゴールラインを割りそうなボールにドゥトラが食らいつく。クロスかと思われたボールは0度近い角度からそのままサイドネットに突き刺さった。諦めない姿勢が生んだ素晴らしいゴール。さすがにこの時ばかりは手を叩いた。そこから思い出したように点が入り出す。FKから上野のヘッドで2点目。直接FKで奥が3点目。やがて響き出すアジアの歌。

そんな様子を、やはり淡々と眺めているうちに試合は終わった。負けるより、ドローより、勝つ方がいいに決まっている。それ以上の意味をとうとう見出せないまま、三ツ沢の坂を下る。過去2戦のように飲みに行こうという話にはならないが、話題はリーグ再開後の展望や補強の必要性に及ぶ。外野が何を言おうが決めるのはチーム。それでも語らずにはいられなかったのは、少しは持ち直したからなのだろうか。

リーグ戦の不振の影響、とりわけ浦和戦の影響を引きずっていたのは確かだろう。しかし、浦和戦に勝っていれば、リーグでいい位置にいれば、この日はもっと盛り上がれたのだろうか。それを言ってもしかたがない。一つだけ確かなのは、こんな気分で観戦したのは初めてだということ。どんな試合でも、喜ぶなり怒るなり感情を揺さぶられてきた。消化試合だから。それだけが理由なのだろうか。今でもわからない。

幸いリーグは消化試合にはなっていないが、悠長なことを言っている余裕もない。

代表モードになど切り替えられない。長い中断期間が恨めしい。
早く再開してくれ。そしてこのもやもやをどうにかしてくれ。






決意を持って、この試合に臨んだゴール裏。メッセージは選手達に伝わっただろう。


結局は、前の2戦と同じようにゴール裏は満席となった。メインのアウエー側にはマッカサル市長をはじめ、約60名のインドネシアからのサポーターが陣取った。
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