malicia witness WM2006惨敗記
5_マリサポとの再会。

ドイツの物価は高い。いろいろな人の心遣いもあってドイツに来た私は、土産を大量に買い込まなければならない。たいしたものでなくても、あっという間に現金がなくなっていく。経済力のない国から来たサポーターは、どれくらいの負担を強いられたのだろう。

日本ではすっかり定着した100円均一。フランクフルトにもあった。その名も「1ユーロ均一ショップ」。ただし、1ユーロは140円くらいする。そのお買い得ショップの前で、ばったりと顔を合わせる。
「あ〜〜〜〜〜〜!」
「わっ〜〜〜〜〜〜!」
今回の旅行は、いつもの仲間とは別行動だったし、行動経路も異なっていたので、誰とも会わなかった。偶然の再会は、今日が初めてだ。日産スタジアムのゴール裏でフラッグを振る島田さんと、その友人3名の4人組。一緒に行動することにする。

フランクフルトの中心街は、人とクルマの導線が完全に別れている。だから安心して買い物が出来る。そして、欧州には日本と違って広場がある。

レーマー広場に面したオープンエアのビア・レストラン「シム・シュタンデスエムトヒェン」で食事をすることにする。4年前のワールドカップ準優勝を、オリバー・カーンが、集まったドイツ人達に報告した建物の向かいの店だ。日差しの下では昼のビールが美味い。ただし、ワールドカップ期間中だからなのか、誰もが普通に昼からビールを飲んでいる。ドイツ人は無愛想と言われているが、誰もがとてもフレンドリーで、いろいろと話しかけてくれる。ちょっと意外だ。

意外といえば、「ドイツ人は几帳面」という話を裏切られたこと。電車の大幅遅れは当たり前。なかには、定刻発車と思って乗り込んだら、遅れていた反対方向列車で、翌朝になって折り返すはめになった人など、遅れのエピソードは沢山ある。私のルームサービスが届いたのは25:30分。実は、ドイツ人は几帳面なのではなくて「几帳面な法律を作るのが好き」な国民なのかもしれない。店で飲むビールのジョッキにはメモリが入っている。ビールは、そのメモリまで入れなければならない。法律で決まっているからだ。ビールの作り方は「ビール法」で定められ、店舗の閉店時間は「閉店時間法」という法律で定められている。
「そういえば、昨日のスタジアムに流れた『本日の観客数はフルハウス!』って公式発表はなんだったんだ?ぜんぜんいい加減じゃん。」
「ぜんぜん几帳面じゃないよね。」

ビールの次にオーダーするのは「アプフェルワイン」というリンゴ酒だ。フランクフルトのザクセンハウゼン地区が本場で、これも大きなグラスでがぶ飲みする。レーマー広場には、各国のサポーターが集まっている。

レーマー広場から10分も歩けばファン・フェスト会場に到着する。先日と違い、今日は平日なので空いている(それでもメキシコ人は沢山いる)。いろいろな国の人々と記念撮影をしながら、大型画面の前に進む。
そこで不意に
「石井さん!!」
と、声をかけられる。旅先で仲間に会うのは嬉しいことだ。

今日の中継はスイスートーゴ。なので、スイス人だけでなく、同じ組の韓国人も多くが大型画面に注目している。韓国人達とは「お互いに頑張ろう」と健闘を誓う。

暑いので、楽しいファン・フェスト会場であっても長時間の滞在は無理だ。そこで、みんなに宿泊ホテルに来てもらって、ビールの続きを楽しむことにする。

「なんで、残り時間が少なくなってもディフェンスラインでボールを回していたの。納得できないよ。」
「でも、クロアチアは慎重で、攻めて来ても後ろに6人くらい残していたじゃん。日本に強いフォワードがいるならともかく、前があれだから、パスしてもディフェンダー達に囲まれて盗られるだけだよ。」
「じゃあ、なんで、弱いフォワードが出ているのさ。」
「そりゃぁジーコジャパンなんだから、そういうもんだって思わなきゃ、応援していられないだろ。」
「そりゃそうだけどさぁ。」
「それでも、ブラジルには3−0で勝つんだよ。」
「まっ、そうじゃなきゃね。」
「俺たち、絶対ラッキーだよ。ブラジルに3−0で勝って一次リーグを突破する歴史的快挙を生で目撃するチャンスを得たんだから。」
「そう考えると、おいしいよね。」
会話は続く。クロアチア戦の問題点と、いかにブラジルに3−0で勝つか。それと恋愛話。

「そろそろ帰らなくちゃ。」
窓の外は明るいが、すっかり20時を回っている。ドイツで最も困るのは、やはり、時間経過がわからなくなる日没の遅さだ。

「今から行くから寝ないで待ってて。」
23時過ぎに鳴った電話の向こうから元気な声でアポイントを入れてきたのは石川ちゃんだ。1993年以来の付き合い。当時、彼女は中学生だった。シュツットガルトでのスペインーチュニジアを見終え、これからレンタカーで仲間達と一緒にフランクフルトに帰って来るのだ。待つことにする。

ホテルの前にフィアットのレンタカーが到着したのは26時30分頃。同行する久保田さんも一緒だ。すでに1階のバーが閉店してしまったので、部屋に招き入れれ、シャンパンで深夜の再会を乾杯する。久保田さんは、かの有名な「年間160試合観戦の男」。それでいて、優秀なビジネスマンで、外資系の企業に引き抜かれたキャリアを持つ。日本サッカー史に残るエピソードが多々あるが、ここでは割愛する。久保田さんとは、かつて、ボローニャとペルージャで一緒に観戦したことがある。
「いや、石川の選ぶホテルのが酷いんだよ。フランクフルトはさぁ、中央駅の前に怪しげなエロ街があるだろ。その先を進んでいって曲がったところだよ。途中の道で歩いているオンナは石川以外は全部、売春婦。あと、あそこは怖かったよな。動物園の近くで近くの住宅地のクルマがずらーっと並んでるんだけど、誰も人がいないんだよ。歩いているのは変質者だけ。怖いから走ってホテルまで行くんだぜ。ほんっと怖いよ。で、3カ所目が教会の近くなんだよ。おっ、今度は石川いいじゃん、って思って寝たら、朝7時から、カラ〜ン、コロ〜ンって鐘が鳴って、うるさくて寝られたもんじゃない。ほんと、酷いんだよ。」

オーストラリア戦の前からドイツに滞在している彼らは、明日の早朝に、再びレンタカーで旅立ち、ケルンに向かうのだという。私のフランクフルト滞在も今夜が最後。明日の朝に出発し、ボンへ向かう。


平日のファン・フェストはのんびりムード。直射日光の厳しい座席を避けて、木陰でライバル達の闘いを見守る。

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ワールドカップ・オフィシャル靴下。


すでに大幅値下げが始まっている。


ブラジル・ランジェリー。他にはイタリアのみ。納得。


賑やかに登場した4人組。


日の丸が広場の一角を占拠。


ビールがカラです。またソーセージかよ。


オランダの重鎮?登場。


あのテラスからカーンが準優勝の報告をしたのは4年前。ことあるごとに人々が集まる広場だ。


全身で日本。ただし頭のみがドイツ。帽子がなければ耐えられない暑さ。


再会の記念に1枚。観戦の邪魔にならないようにしゃがんで。


クロアチア戦の不甲斐なさに抗議してエキゾチックなJAPAN文字は逆さ。翌日、メキシコ人に強く強請られて、このマフラーはメキシコユニフォームに交換。日本に持ち帰ることは出来なかった。


日本サポーターの重鎮がホテルにやってきた。

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